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別の車に乗って、
お父さんとお母さんは警察署を離れました。
一言も口をききません。
疲れでげっそりとしてます。
一緒の席に座るのが恥ずかしくて、
車の屋根に無理やり座り込んで。
もう知ってるんだ。
もう何もかも知っちゃってるんだ。
私は何も言えません。
言わないんじゃなく、本当に何も言えません。
言える気がしません。
ひたすら気まずい思いだけがグルグルしてるのに、
それを共有することも伝えることもできない。
苦しく、辛く、
胸の奥が搾り取られるような気持ちなのに、
とてつもなく理不尽な壁にさえぎられ、
何もすることができない。
本当の親不孝。
馬鹿だ、私は。
馬鹿馬鹿だ、私は。
たとえどんな事情があろうとも、
これはダメだ。
ダメなんだ。
ダメなんだ。
ダメなんだ。
ダメなんだってば!!!
叫びたくなって、
泣き出したくなって、
幽霊って、みんなこんな気持ちになるのかな?
残された人もこんな気持ちなのかな?
ああ、本当に、
本当にもうダメだ。
触れない親に抱きつきながら、
もうどうしようもなく。
ただどうしようもなく。




