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深夜になっても誰も帰ってこないんで、
とりあえず散歩に出ることにしました。
正直迷ってるけど、仕方ない。
アイツん家に行ってみようか。
ちょっとだけ付き合って、
ちょっとだけ裏切られて、
ちょっとだけケンカして、
ちょっとだけ殺されて。
まぁ実際は不可抗力なんだろうけど。
まさか殴られたはずみで
二階の窓から落っこちるとは。
背中がフワっと浮いて
時間が一瞬、真っ白になって、
体中の血が凍りついたような感覚。
ヤバイトメテタスケテナントカドスッ(以下略)。
で、人知れぬ山ン中に捨てられて。
あ、思い出したら
色々腹がたってきた。
あえて恨みの一言をアイツの耳元に囁いて、
そのまま消えるってのもアリなのかな。
それはそれで幽霊らしくていい気もします。
うらめしや~
とか。
このうらみはらさでおくべきか~
とか。
……ダメだ。
一言でアイツを震え上がらせる自信が全然無い。
まぁ顔だけ見てあきらめることにしよう。
人殺しの顔を間近で見る機会なんてそう無いし。
せいぜいおびえた顔を笑いとばしてやろう。
余命もあまり無いんだ、
くだんないことに時間をかけたくありません。
顔を見るなりカッとなって叫んだりしないか、
どちらかといえばそれだけが心配です。
しかし現実は存外シンプルと言うか
ある意味残酷と言うか…
アイツの家には何人もの報道陣がおしよせていて
たまに野次馬がくだらない怒号をあげたりして
警察官が忙しそうに現場をシャットアウトしていて
アイツ…………
捕まったのかよ!!
私はあきれ、
おもいっきり情けなくなり、
幽霊のクセに全力で脱力してしまいました。
なんだかなー。