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二日ほど山をさまよったあげく、
ようやく見つけた農道をたどり、
山里にたどり着くことができたのは
三日目の夕方でした。
あいにく鉄道も何も通ってはいない田舎でしたが
(よくもまあこんなところまで
死体を捨てに来たもんだ!)
なんとか家に帰る目処はつきそうです。
さすがにまた野宿でもあるまいし、
そこそこ見栄えのいい家に目星をつけて
こっそりお邪魔させてもらいます。
人の良さそうな壮年夫婦が
テレビを見ながらくつろいでいます。
さすが幽霊。
向こうにこっちの姿は見えないし、
互いに触ることもできません。
ただそこにいるだけ。
何の干渉もしない。できない。
あ、チャンネル変えちゃった。
死神が言ってました。
人の意思が関わるものに触れることはできない…
よくはわからないけど幽霊の法則なんだそうです。
少なくとも、チャンネル選択権はない…。
色々理不尽だなぁ。
まあそういうことなんだから仕方ない。
ニュースで自分の事を取り上げてないか気になり、
チャンネルを求めて家を変えようか迷いましたが、
色々気持ちが疲れちゃったんでしょう。
なんだかどうでもよくなってきたので、
とりあえず使ってなさそうなソファに
横にならせてもらいました。
お母さんごめんなさい。
初めての外泊です。