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そうだ、水場行こう

後半、別視点が入ります

あー、何だか本当にゲームじみてきたな。

煙と共に消滅した犬もどきの死体。

その代わりだとでも言う様に、死体があった場所に二つの物が落ちている。

1つは俺の身長くらいある灰色っぽい毛皮。

その表面は、黄色がかった粘液に包まれている。

もう1つは親指サイズの黒い石。表面には紅い血管の様な筋が浮いて光っている。

どう考えてもドロップアイテムだよな、これ。

モンスターとかステータスが出た挙句にこれである。

これが、最新式VRゲームだとか言われても驚かない。

説明も武器防具もなしで、フィールドに投げ出す糞ゲーだけどな。

こんぼうとか50Gでいいから渡すべきだろ。

まあ、そもそもゲームでこんな痛みを感じさせはしないだろうけど。

とりあえずアイテムを鑑定しておこう。


ええっと、鑑定……あれ?

ステータス表示が出ない。

それならばと子分犬を鑑定してみるが、何も出ない。

うーん、色々試してみるか。


「鑑定、情報表示、ステータスオープン、敵の情報、

 観察、観測、情報開示、見抜く……」


駄目だ出ない。

いや、待てよ。あの時何て言ったっけ?


「説明」


そう呟いた瞬間に子分犬のステータスが表示された。

説明かよ、わかりにくいよ。

まあともかく、子分犬の情報を確認する。

種族名はインハルヌ。種別は動物となっている。

そしてステータスは犬もどきより1~2ランク位低い。

ちなみに危険度はD~F。

うーん、魔物と動物の違いって何だ?

死体が残るか否か? アイテムドロップするのが魔物?

疑問は置いておいて今度はアイテムを鑑定、もとい説明してもらう。


『風狼の毛皮 現在価値10アス銅貨』

『魔焔石 現在価値2セス金貨』

『インハルヌの死骸 現在総価値7賎銅貨』


高! 魔焔石、高っ!

この世界のお金なんて知らんけど、金貨2枚?のアイテムは価値があるだろう。

とりあえずドロップアイテム2つはキープだな。

子分犬、インハルヌの死体は多すぎるから放置で。

賎銅貨がどんなもんか分からないけど、賎って付いてるから価値低そうだし。

うわぁ……毛皮がヌメッとしてて、すごく気持ち悪い。

まあ、それを言ったら俺も血と粘液まみれなんだが。

ああ風呂に入りたい。せめて汚れを落としたい。

決めた、方針変更だ。人より先に水場を探そう。


そうと決まれば早速出発、の前に大事な事を忘れていた。

自分に向けて説明と念じる。

自分のステータスチェックはRPGの基本だしね。

さあ、俺ってどれほどの強さなの?


……表示されませんでした。

自分のステータスは無理なのか。やっぱり微妙に使えない。



================================================================



広い草原を1つの影が駆けていた。

左後脚を引きずりながら四足で走るそれは、インハルヌあるいは草原狼と呼ばれる獣であった。

彼等は通常4~6頭の群れで生活、狩り等をしている。

しかし彼の所属していたグループは、つい先程人間の手によって壊滅させられていた。


本来、彼等草原狼は臆病な獣である。

群れて狩りをするものの、襲うのは自分の数倍も小さな動物。

あるいはそれすらも狩れず、他の獣の食べ残しや死骸を食べて生活している。

そんな彼等が人間を襲った理由。

それは自分達の変異種、インカジヌに群れが乗っ取られたからである。

ある日突如表れたインカジヌ、通称、魔風狼は彼等のリーダーを殺し群れを支配した。

臆病なはずの彼等だが魔風狼がリーダーになったとたん、性格が変わったように攻撃的になる。

魔風狼の持つ固有技能『戦意高揚』による暴走。

彼等は闘争本能をかきたてられると共に判断力を低下させ、人間を襲うに至ったのだ。


しかし、魔風狼の死によって彼は暴走から解放される。

現状を把握した彼は本能に従って逃げ出した。

そして現在、折れた後脚を引きずりながら彼は命からがら逃げ延びていた。

脚の痛みに耐えかね彼は立ち止まる。

人間が追って来ない事を臭いで確認し一息。

空腹と喉の渇きを感じたが、とりあえず休もうとその場に座り込む。



と、不意に彼を覆うように影が差した。

その場から逃げようとして、彼は動けない事に気付く。

正面に現れたのは人影。

先程の人間とは違うと匂いで判断できたが、動けない現状では何の意味も無い。

人影は彼に向かって何かを呟いた後、ゆっくりと手を伸ばす。

白く細い、彼らの物とはまったく違う指が、彼の眉間に突き刺さる。

同時に彼の意識は明滅し闇へと飲み込まれていった。



不意に彼は目覚める。

目の前から人影は消えていたが、その事に興味も恐怖も感じない。

重くなった体を伸ばし全身を振るわせる。

周囲に黄色い粘液が飛び、脇腹から生えた角が空気を切る。

動き出そうとして後脚に違和感。

急激な成長で変形治癒してしまった左後脚に苛立つ。

だが痛みは無く、狩りには問題が無いと判断。

彼は新たな獲物を求めて歩き出す。

自身の固有技能『戦意高揚』に意思を歪められて。

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