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どうしてこうなった? 邪教の陰謀編

村長さん宅を出ると、なんでか空気が悪くなっていた。

もちろん、毒ガス散布とかじゃなくて雰囲気的な意味でね。

すわ幼女粘着セクハラを見られたのかと警戒するが、そういう感じではない。

よかった、俺の社会的な首はまだ繋がってるようだ。

足に絡みついた幼女の頭を撫で一安心。

テプタちゃんも、サラサラヘアーを撫でられ嬉しそうだ。


さて、村の広場に人だかりができているんだが。

この雰囲気の原因は、やっぱアレだよね。

興味を引かれて近づくと、ジョアンさんとツッパリヘアーが睨み合っていた。

何してんの、あの人達。

見た感じ、ツッパリとジョアンさんが口喧嘩してるみたいだけど。

てか魔物狩りに来たんじゃないの、君達。

この真昼間に村の真ん中で喧嘩って、人生ドロップアウトしすぎじゃない?


「あ、ナナス君」


名前を呼ばれて目をやると、誰かが人垣の後ろから手招きをしている。

そっと、村人達の間を抜けて近づくと、そこには困った顔のマーサちゃんがいた。

古ぼけた本を小脇に抱えて、ジョアンさん達の方を心配そうにうかがっている。


「何があったの?」


「それが、よくわからないんだけど……」


マーサちゃんによると最初は二人で普通に会話していたらしいが、

それがいつの間にか口論になっていたらしい。

で、間の悪い事にガミディアさんもアウルスさん達も不在の為、誰にも仲裁ができないとか。

何処の子供だよ。


「それで、お願いなんだけど、二人を止めてくれない?」


嫌です、とは言わない。

俺は女の子には割とやさしいのだ。

デート一回で手を打とう。


「後で、村の中を案内してくれるなら」


「え? ……うん、まあ大丈夫だよ?」


割と簡単にオッケーを貰えた。

足に抱きついていた幼女をマーサちゃんに預け、俺は広場の中央に向かう。

野次馬の視線で挙動不審になりそうだ。


「ああ、あんたか。悪いが今は取り込み中だ」


近づいてきた俺にツッパリが目を向ける。

ジョアンさんは無言でこちらを一瞥しただけだった。


「何、喧嘩してるんですか。

 仕事しに来たんじゃないんですか?」


「オレは荷物番で兄貴達が狩りに出てるんだ。

 何もしてない、そいつと一緒にすんじゃねえよ」


「だから、他メンバーの到着待ちだと言ってるだろう!

 メンバーがそろい次第、斥候に出てるリーダーと合流して……」


俺の言葉に、ツッパリは露骨に嫌そうな顔をする。

対するジョアンさんも、憮然とした顔で言い返した。


「ハッ! 仕事に遅れるなんて、碌なメンバーが居ないんだな。

 それに魔風狼討伐なんかに騎士を持ち出すなんて、とんだド素人だぜ」


「違う、遅れているわけではない!

 根拠もなしに、メンバーの名誉を傷つけるな!

 それに、騎士の件はそちらも同じだろう!」


ツッパリの挑発に、ジョアンさんがイラついた様な声をあげる。

今にもツッパリに殴りかかりそうな勢いだ。

ああもう、何だよこのツッパリ、無駄に喧嘩売りやがって。

それにジョアンさんもすぐ、頭に血を上らせて。

俺がぶん殴って黙らせようか?

いやでも、さすがにそれはまずいか?


あ、そうだ。

魔風狼を狩った数で勝負させれば良くない?

ギルドの依頼も消化できるし一石二鳥だろ。

なんて平和的な解決法なんだ。

うん、そうと決まれば。


「この勝負、俺が預かる!」


俺の唐突な宣言に、ツッパリとジョアンさんがポカンと口を開く。

が、すぐにツッパリは何かに気付いたような顔になる。

おお、なかなか理解が早いじゃないか。


「いや、ナナスさん。その言葉は嬉しいが。

 あんたの手を煩わせたら、オレが兄貴に怒られちまう」


兄貴ってクレダリウスの事か?

俺が喧嘩の仲裁をしたからって、あの人怒るかね。


「大丈夫、これは俺が勝手に言い出す事だ。

 あなたは関係ないし、あいつに謝る必要はない」


「本当に大丈夫なんですかい?」


「ああ、俺に任せて。簡単に解決するから……」


「なるほど、そんなに容易そうに見えるか、俺は」


地の底から聞こえそうな声。

見ると、ジョアンさんが不穏な空気を纏っていた。

あれ? なんかさっきより怒ってない?


「えっと、少し冷静になりましょう、うん。

 怒ると勝てるものも勝てなくなりますよ?」


うん、これから二人には魔風狼狩りで競って貰わなきゃいかんのだ。

魔物相手に冷静さを欠いて大怪我、なんてなったらマーサちゃんが悲しむし。

俺の言葉にジョアンさんは笑顔を浮かべる。

すごい引き攣ってるっていうか、目だけが笑ってないけれど。

そして抜かれるジョアンさんのロングソード。

あ、あれ?

ちょっと待って、何か俺に対して攻撃してこようとしてない?


「待ってください、別に俺はあなたの相手をするつもりは」


「俺では相手にならんという事か!」


な、何この人。

戦闘狂か何かなの?


「……まあ待て、ジョアン」


そこに救い主がが現れた!

ナイスタイミングだ、ガミディアさん!

そこのバーサーカーを止めてください!


「邪魔をしないでください、リーダー!」


「少年の言う通りだ、今のお前は冷静さを欠いている」


そうですよね、ガミディアさん!

喧嘩を仲裁しようとしてる、いたいけな少年に襲い掛かるくらい暴走してますよ、彼。


「ですが、ここまで馬鹿にされて黙っている訳には!」


「ああ、わかる。俺だって仲間を馬鹿にされて腹が立っている」


ええ、俺も分かります。

碌なメンバーが居ないなんて言われたら、リーダーとしてムカつきますよね

そう言うとジョアンさんを刺激しそうなんで言わないけど。


「だから、俺が()ろう。

 少年! ジョアンの代わりに俺と決闘だ!」


……ん?


「では決闘の見届け人は、私が」


そう言って人垣の中からミゲルさんが出てくる。


……あれ?


「魔術なし、武器のみ、どちらかが降参するか気絶するまでの一本勝負だ!」



……あっれー?

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