表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

俗に言う総集編ってやつ? (バンク少な目)

ああ、ひどい目にあった。

ここは変わらず村長宅。

割り当てられた部屋で、俺は一息吐いていた。

夕食が終わった後。

ブーブー言ってるテプタちゃんを引き剥がして、俺は早々にお暇しようとした。

が、すぐに村長さん達に、日が暮れてから出発するのは危ないと止められる。

どうやら、村から出ようとしてると勘違いされたらしい。

夜になったんで、宿屋にでも行こうと思っただけだと説明したら納得されたが。

だが、続けて衝撃の事実判明。

クレーユ村には宿屋が無いらしい。

というか普通に宿泊施設がある方が珍しい、とはガミディアさん談。

じゃあ、どうするのかというと、村長などの地域の長の家に泊まらせてもらう。

もしくは、村の広場や厩舎を借りて一泊といった感じらしい。

村長からの不審そうな視線を、やはり笑って誤魔化す。

何だか、痛々しくなってきたが気にしない。

ちなみに『ジェレイソン』メンバーは広場にテントを広げ就寝。

ガミディアさんは厩舎で寝袋に包まっていた。

そしてジョアンさんだけが、村長宅の自分の部屋で寝るそうだ。


で、最初は俺も村の広場に泊まると言ったのだが、テントや寝袋等が無いので断念。

厩舎は……確認して早々挫折した。


「ウシ小屋でごめんね」


そう言ってマーサちゃんが案内してくれた厩舎には、ガミディアさん以外に先客が居た。

小屋の中で干草を貪っていたソレは、つぶらな瞳をこちらに向け一声鳴いた。


『ンマァ~』


うん、いろんな意味でちょっと無理だった。

え? あれ牛なの?

どっちかというと某RPGで召喚獣やってそうな風貌なんだけど。

あれの側でイビキかいて寝られるガミディアさんは、やっぱりすごいな。

この世界じゃ普通なんだろうけど、今の所、俺には無理だ。

と言う訳で俺は村長宅の一番奥、その一室に寝床をお借りしていた。

すっかり暗くなった窓の外を見て、やっぱりここは異世界なんだなとつくづく思う。

星の瞬く夜空、その天頂に一際輝く白い月。

そしてその少し下に紅く光る月、それから地平線近くにも銀色に光る月。

夜空には月が3つ、浮いていた。

地球じゃないと改めて思い知らされ、溜息を一つ。そのままベッドで横になる。

目に映る見知らぬ天井、そのシミの数を数えながら、もう一度溜息。

ちなみに、当然の事だがここにテプタちゃんは居ない。

俺について来ようとして、マーサちゃんに捕まっていた。

これからどうやらお風呂らしい。

ちなみに帝都式の豪華な風呂だ、とミゲルさんが鼻息荒く自慢し、また殴られていた。


そうか、風呂があるのかー。

日本人としては入っておきたいが、頼めば入らせてもらえるかな?

でも入浴中にテプタちゃんが乱入してきたら、人生終了しそうなんだよなー。

風呂の魅力には抗いがたいけどなー。

シミを71個まで数えた辺りで、悩みは横に置いておく事にする。

それより、ちょっと状況を整理したい。

気が付いてから今まで、殆ど流されっぱなしだったし。




まず俺は、いつの間にかクレーユ村近くの草原に居た。

しかも、名前を手始めに多くの記憶が無くなっていた。

覚えていた事、思い出した事は自分が日本人で高校生な事、妹がいた事、中二な親友の事。

後は、小説やアニメ、漫画等、一部の偏った知識位だ。

最初は単なる迷子だと思ったけど、化け物と会って考えを改めて。

辛勝した後、水場で会ったマーサちゃんとテプタちゃん。

なんでか分からんが俺に懐いた幼女と、マーサちゃんの3人で村へ移動して。

そこで巨大ロボと探索者達と出会って。

で、その探索者の中に邪神の信徒とか言う危なそうな奴が居た、と。




まとめても訳分からんな、この状況。

なんで異世界に居るのかなんて、考えても分からん。

そもそも記憶が無いから、原因に心当たりがあるかすら思い出せないし。

だから考えるべきは今後の事だ。

記憶喪失で迷子中。

普通は警察や病院に行く様な状況である。

俺だって、ここが地球ならそうした。

が、ここは異世界だ。

病院のような施設があるかは分からないし、あっても記憶喪失を治せるだろうか?

警察みたいな組織も、地球にあるだろう自宅まで、迷子の俺を帰せるかは疑問だ。


そもそもの問題として、俺をこの地に呼んだ奴の目的が分からない。

下手に名乗り出て勇者やら魔王やら生贄やらをさせられる、という小説があった気がする。

勇者や魔王なんて面倒だし、生贄なんて論外だ。

とりあえず、勇者や魔王にならずに帰れれば、それが一番なんだけど。

記憶の事はその後でもいい、んだろうか?

外傷とか精神ショックとか医学的な理由で、失ったんならいい。

魔術的な理由で奪われたとかだと、医者では治せないだろう。

関わり合いになりたくないけど、召喚者を探すしかないのかな?

目立たないようにしつつ、相手より先に情報を入手、やばそうなら逃げる。

我ながら、完璧で分かりやすい方針だ。

情報を入手する方法とか、逃げてどうするのかは聞かないで欲しい。今から考える。

後この方針、相手が人間ならともかく、神様とかだったらお手上げな気もする。

もし神の仕業とかだったら、今この瞬間も何処かから見守っておられるんだろう、ヘラヘラ笑いながら。

そう考えると何だか空しくなってきたので、頭を振って思考を変える。



神と言えば、邪神の信徒の方はどうしましょうかね。

『ジェレイソン』と『銀の陽光』、2つのチーム――探索者クランだっけ?

彼等は魔風狼の討伐依頼を受けて、ここに来たそうだ。

村長が言うには、ほんの数十日前、行商人が近辺をうろつく魔風狼と草原狼の群れを見たらしい。

で、行商人達と情報を整理した結果、少なくとも2つ以上の群れが付近に居ると判断。

更にこの近くの街道で、旅人が姿を消す等の事件があったとの噂も広まり、

怯えた行商人達が村へ来なくなってしまった。

食料の蓄えはあるが、行商が来ないと日用品等の面で困る。

そのうえ国軍が動くには情報が少なすぎる、という理由から村長が探索者のギルドへ依頼。

今日の昼、2つの探索者クランがここへ訪れた。

これって、何か問題が起こるんじゃないのと思うんだが、

ガミディアさん曰く、こういうのは獲物を早く狩った者勝ちだそうだ。

それに一定以上のクランが依頼に殺到しない程度には、ギルドが調整するという。


さて、そんな余談は置いておいて。

自称『ジェレイソン』のメンバーは、本当に魔風狼を狩りに来たんだろうか?

ちょっと疑いすぎ?

あんな所属や職業を見せられて、疑わないほどおめでたくはなれそうも無い。

魔風狼の出現が関係あるかはわからない。

だが、それに乗じて何かをしに来たのかもしれない。

羽振り良さそうだしね、この村。

ただ、あるとしてもお金や食料だけな気がしないでもない。

邪神の信徒さんが来る理由とかあるの?

職業上の付き合い? 邪神様へ献金とか?

あるいは単に、食わなきゃ生きてけないよって事だろうか?

ともかく、誰かに危険を伝えておいたほうがいいかな。

いや、その前に『紅蓮疾駆』と『喰らう腕の従僕』について聞いておこうか?



ああ、難しい事考えすぎて眠くなってきた。

もういいや、明日、考えよ。

ノック音が聞こえる。

無視無視、俺はもう寝るの。

コンコンコン。

しつこいな、誰だよ。

面倒くさいけど、出るしかないかな、人の家だし。

それに、マーサちゃんが来たのかもしれない。

テプタちゃんなら……ノックしないだろう。

眠る体勢に入っていた体と頭を無理矢理起こし、扉へ向かう。

はいはい、今行きますよと。

自室のドアを開けると、そこにはチンピラ風の男が一人立っていた。


えっと、誰?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ