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無近遠見

学校の授業が終わり、今は学校の校門を出るところ。


最近、もう誰も私の邪魔をして来なくなった。


いちいち本のタイトル聞いてきたり、どんな内容なのか教えて欲しいみたいな目障りなことしてくる人がいないと小説にも感情移入できて、スッキリする。


「おい小熊。」



聞いたことない声だった。


声の聞こえた前方を見ると、


天然パーマの弱々しい感じの少年が、校門のど真ん中に仁王立ちしていた。


服装は制服姿でなく、私服姿だった。


一瞬頭に疑問に思ったが、その理由がすぐにわかった。


「停学になった馬鹿二人組みの一人がなんか用?」


私は、人を寄せ付けないオーラをとにかく放出し、感情のこもってない声で聞いた。


向こうは、それに全く動じた様子はなかった。


それどころか・・・


「用はあるさ。友に俺の言った真意を分かってもらわないといけないんでね」


私に刃向かってきた。


こういうのマジでウザイ。


仲間のためにとか、そういうドラマとかの影響か知らないけど、マジでキモ・・・


こいつは、今までの奴より冷たくあしらってやらないとね。


「あなたの友達ってまさかだけどあの銀髪?停学になったみたいね。そんな目障りな話が聞こえてきてね」


軽蔑をこめた目を向け、はき捨てるように言った。


目の前の天パの少年は、手で来い来いというジャスチャーをして、


「こんなところじゃ人の邪魔になる。近くの公園で決着をつけよう。」


妙にかっこつけた言い方とそれに比例するうざいポーズ。


どれもこれもが腹立たしい。


何よりムカつくのが、こいつに私の武器が全然通用してないこと・・・


普通の奴なら、もう気味悪くなって逃げ出してるのに・・・


理解できない。


公園に場所を移し、天パの少年は公園のど真ん中に立つと、


「ここで堂々と勝負させてもらうぜ」


「ああ、そう」


かっこつけてられるのも今のうち、それを馬鹿に分からせてあげる。


公園のど真ん中で、私たちは向かい合う。


天パの少年は、いきなり質問してくる。


「お前はなぜそこまで人を不要だと思うんだ?」


「そんなの関わったところで、何の得もないからよ」


「それは関わったことがあって言ってるのか?」


「覚えてないわ。私にとって他者はゴミ。私の読書の時間を邪魔するエネミーそのもの」


天ぱの少年は、呆れたようにため息をつく。


ちょっと熱血風みたいな感じの演技がかったしぐさで、


「お前は、ホントにそんな風に思っているのか?そんなんで辛くないのかよ?」


私は、すごい真剣な顔でそんな風に言ってくるので、笑いがこみ上げてくる。


そんなのドラマだから成り立つんであって、現実では成り立たない。


それをわからせてあげる。


私は、嫌な笑みを浮かべて言った。


「夕暮れの空のシーンで、こんなシーンがある。変わり者の橋本隆弘は、新井茜という自分にとって大切な人にさえ見捨てられる。理由は簡単、この世は変わり者を嫌う。」


「そうともー」


「最近の厨二ばかりの小説みたいなのを読んでるあなたたちには分からない。小説は、人生を映し出した鏡。それほど小説には、魅力がある。」


そこまで言って、少し間を明けていった。


「それに比べて現実は、小説のように魅力のないいつも同じ景色しかない退屈すぎる物。人間関係もただ気を使うだけ・・。そんなつまらない世界は、私にはいらない。でも小説は、そんな絶望していた私を救うほど、たくさんの夢や努力から何からこの世の全てが詰まったいわば、人生マニュアルなのよ。」


天ぱの少年は、もう黙り込んでいる。


まあそれもそうか・・・


今時の馬鹿は、ラ○べみたいな現実離れしたような、都合のいい物語ばかり読んでるんだから私の言ってることが理解できるわけもないわ。


「あなたの負けよ。さっさとこの場から消えて」


天ぱの少年は、背中を丸くし、がっかりした感じの足取りで、私の前から去っていった。








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