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すれ違い

今日は、体育祭だった。


正直めんどくさいことばっかりで、何にも楽しくなかった。


終わってせいせいするぜ・・・


隆弘は、開放感に包まれていた。


「ねえ。」


声をかけてきたのは、茜だった。


その表情は、怒っていた。


声も若干怒りがこもっている感じだ。


普段怒ることさえまずないのに、表情に出るほどまで怒ってるってことなのか・・・


恐る恐る隆弘は尋ねた。


「どうした?」


「どうしたじゃないわ」


茜は、俺の顔を真剣な顔で覗き込む。


そして、いつもより低いトーンで、


「どうして本気でやらないのよ?」


茜のこの質問を、隆弘は「そんなことか・・・」と軽い感じで受け止める。


「そんなの簡単だよ。頑張ること、ましてや本気になるのはかっこ悪いからさ」


隆弘は、この一言を言ったときに気づく。


それは、茜の顔が真っ赤に染まっていることに・・・


そして暑苦しい感じの空気が漂ってきたのを・・・


でもそれが何なのかわかんなかった。


「それ本気で言ってるの?」


茜はさっきのこもった声で、聞いてくる。


俺は、少し怯みながら答える。


「本気だよ。」


「・・・うして?」


「ん・・・」


「どうしてよ!!」


茜は、俺の胸倉を掴んでいった。


「誰がそんな事言ったの!?」


あまりの普段とのギャップの差に動揺して、ぽろっと答えていた。


「父様と母様だよ」


茜は、涙を目に浮かべて言い放つ。


「そんなのおかしいよ!そんなの間違ってる。」


隆弘は、茜に自分の親の考えを批判されたことが許せなかった。


自分にいろんな大切なことを教えてくれた人を批判されたことへの怒りがこみ上げてくる。


「おかしくない。頑張るのは、貧乏な奴。金持ちは働いたら負けなんだよ」


パチン!!


茜の強烈なビンタが炸裂した。


隆弘は唖然とした。


一体なんで俺は、ビンタされたんだ?


その理由が隆弘にはわからなかった。


なんで?


親に習った事を俺は言っているのに・・・


茜は、目からポロポロ涙を流し、涙声で言った。


「貧乏人だからとか金持ちだからとか差別的な事言うなんて最低だよ・・・。そんなの関係ない。皆一生懸命努力する。出来ないことでも全力を尽くさないで何が残るのよ」


隆弘は茜の言ってる意味が理解できなかった。


なので隆弘は、火に油を注ぐようなことを言ってしまう。


「この世は、貧乏人を金持ちが食らうのが常識じゃないか」


茜は怒り狂う。


「なんでそんなひどい事言えるのよ・・・」


彼女の辛そうな涙を見ていて、隆弘はなんで泣いてるのか分からなかった。


茜はそんな隆弘にこう言った。


「私は悲しいよ。一生懸命やっても出来ない人がいるのに、一生懸命やればできる人がそうやって努力しないで、手抜きするの・・・」


隆弘の心に突き刺さる一言だった。


茜は、つかんでいた胸倉を離し、隆弘から去っていく。


その弱々しく小さな背中を、俺はポカンと眺めることしか出来なかった。


そしてその背中が見えなくなった時思う。


俺は、一体どうすればいいのだろうか・・・・

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