現実逃避
「私が茜と似てる?」
「そうだ。」
信じられないような表情の小熊。
まあいきなり○○に似てると言われたらそうなるか・・・
とにかくその理由を証明するためにも、聞かなくちゃいけないことがあった。
「何がお前をそこまで拒絶するほどの傷をつくったんだよ?」
「あなたに教える必要はない」
「いや、あるね」
小熊は怪訝な表情になる。
俺は、もう一度言いたくはねえが言ってやった。
「俺がお前の友達になるからだ。」
小熊は、吐き捨てるような言い方で言い返す。
「私は、あなたみたいなチャラ男が大嫌いなの。」
「別にそれでもいい。」
「は?」
「だって少しずつ互いの事を知っていけば、きっと変わるだろそんなの」
「変わらない。」
「なんでだよ?」
「私が現実を受け入れる気がないから」
俺は、ため息をつき、
「それは、お前が現実を受け入れる勇気がないからそうなだけ。お前は弱い。ただそれを認めたくないからそう言ってるだけ。」
「なっ・・・」
小熊は、むきになって言ってくる。
「私は、弱くない。お前らのように誰かと関わらなくても生きていけー」
「もうやめろよ。」
「え?」
小熊は、きょとんとした表情になる。
俺は、少し心が痛んでいた。
見ていてとても痛々しい。
本人は、平気そうにしてバレてないと思ってるんだろうが、話してると伝わってくる。
彼女は、時折辛そうな顔をしたり、声がちょっとそういうのを思わせる感じになってたり、そういうのから無理してるのがわかってくる。
「もういいんじゃないのか?」
「何がよ?」
「お前、時折俺にいたいとこ突かれると、すごい辛そうな顔するじゃねえか。」
「してない。・・」
「してる。」
「・・・・・」
小熊は俯いて、沈黙する。
俺は、小熊の頭に手を置いていった。
「なあ俺と友達になってくれよ。」
答えはない。
俺は続けて言った。
「俺は、お前みたいな個性のある奴と仲良くなりたい。」
「馬鹿にしてるでしょ?」
小熊は、小さな声でつぶやくように聞いてきた。
俺は、つい笑ってしまった。
「なっ・・・なんで笑うのよ」
「可愛いとこあるじゃねえかと思って」
「・・・・・」
顔を少し紅潮させる小熊。
その姿は、どこか寂しげな感じだった。
「俺はな個性は、ダイヤモンドと同等だと思ってる。人より変わっていることは、悪いことじゃない。むしろ良いことだと思う」
すると小熊は、俺の意見に文句を言ってきた。
「変わり者は、周りから責め立てられる。」
「それはそいつらの見る目がないだけだ」
「でも・・でも・・・」
小熊は、泣き始めた。
俺は、小熊の頭を撫でていった。
「人と同じなんてつまらない。変わり者は、世界を変えるために生まれた救世主なんだぜ?」
これは、俺の本音だった。
小熊にもそれが伝わったんだろうか・・・
涙で溢れている目で、俺を見上げた。
その顔は何かを決意した顔だった。
小熊は、俺を指差すと・・・
「それがホントなのか試してあげる。」
少し動揺したが、
「いいぜ。」
小熊は、すごい緊張した感じになり、おどおどした感じで話し始める。
「あのね・・・。別に私じゃないんだけど、そのね・・・」
おいおい・・・
「お前告白しようとしたんだけど、台詞でてこなくなっちゃったおちゃめさんかよ」
俺がちょっとからかうと、「ふん」といってそっぽを向いて拗ねた。
「もう話さない」
「いやいや、ついな。とにかく話してくれよ。」
頭を下げて、お願いする。
「しょっしょうがないわね・・。ちょっとだけだから。」
「ああ」
小熊は話し始める。
「読書を読むことがすごい好きにになった少女がいました。少女はまだその時、小学4年生でした。その子は、友達に好きになった。本を紹介しました。」
俺は、うんうんと頷く。
小熊は、少し深刻な表情をしていった。
「その本は、夕暮れの空という本でした。」
俺は、驚愕した。
まさか・・・・こいつの小説を始めて好きになったのが・・・・
「でも友達からは理解されず、つまらないと言われました。その友達が他の友達も連れてきました。他の友達にもつまらないといわれ、挙句の果て皆からお前は変わり者だと言われるようになり、2年間にもわたるいじめを受けました。」