友の想いを背負って
「小熊彩夏www!!」
俺は大声でその名を叫び、2年5組の前の方のドアを開けた。
すると2年5組はざわつき始めると同時に、「停学になった人だ」や「仲間を殴った暴力魔」などの哀れみの言葉も聞こえてきた。
でも今俺は、そんな事を気にしてられるほどの余裕はない。
俺がやらなきゃいけないのはー・・・・
俺は、硬直する。
クラスメイトの中を、真っ白い感じの霊的な空気を纏った少女がこちらに来るのを・・・
それが小熊彩夏だというのに気づくのに、3秒ほどの時間を要した。
そして俺の目の前まで来ると、こちらに死人のような目つきを俺に向けてきた。
その目は、あまりにも不気味で、生気を感じられない。
恐怖で後ずさりしてしまう。
何かに取り付かれたかのような、重々しい声で言った。
「あなたも友達のように精神崩壊したいんですか?」
俺はこの発言を聞いて、ぶちギレた。
「お前何しやがったんだ!!?」
「あまりにも、私のオーラとかそういう類のものが聞かないものだから、小説の事を例にして責めたら、それが効いたみたいで、不登校になってくれました。」
何の感情もこもってないような顔でそういわれ、俺の怒りは加速する一方だ。
胸倉を掴み怒鳴っていった。
「お前は、何が何でもゆるさねえぞ。裏庭で決着をつけてやる」
「いちいち、キレててバカバカしいです」
裏庭の大きなテーブルにて、俺と小熊は、久しぶりに向かい合う。
改めて向かい合うと、すごい霊的な空気を感じる。
でも山田との約束を果たすためにも、ここで負けられない。
「小熊、お前は俺の友達にする」
俺は、はっきりと言った。
動揺した感じの小熊。
俺はその一瞬を見逃さずに言う。
「そのために俺はお前に声をかけようと思って声をかけたんだ」
「それで?」
「お前の心の壁を俺がぶち破る」
小熊は、嘲笑する。
皮肉混じりに言った。
「そんなの無理です。私は、現実なんてものに希望を抱いてません」
「そんなのありえない。」
「ありえるんです。世界は、私のような人と関わらなくても生きていける人間を作り出したんですよ」
「それは、お前が人を恐れているからだろ。」
「っ・・・」
小熊は、図星という感じで黙る。
「俺には、お前と少し似た奴がいる。」
「天ぱのやつでしょ・・」
「そうだ。」
「どこが似てるって言うのよ?」
そう聞かれ、俺は頭の中で、何とかまとめていった。
「それは、心の傷だ。」
「・・・・っ」
小熊は、驚愕した顔になる。
それを見て、山田の言っていたことが正しいことが分かる。
「人間は、一定以上追い込まれると、それを拒絶しようとする。お前の場合は、人だがな・・」
小熊は、焦ったような表情をして怒鳴った。
「うるさい!!余計な事をべらべらと喋るな。私には、そんなのどうでもいい!!」
今まで見せたことないほど必死な表情だった。
俺は、それを見て思い出す。
「夕暮れの空にこんな話がある。隆弘の事を自分だけが理解できると思ってた茜は、隆弘の事をだんだん理解できなくなって、もう話すどころか会うことすら拒む程に追い込まれていく。」
「それが何なのよ」
「今のお前にそっくりじゃないか?」
「結局理解しあえたんだから、私とは違うわ」
「いやいや今俺が行った部分のときの茜にお前はそっくりだ。」