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しないよね
あなたなんか嫌い。さわらないで。
香織は突っ伏して泣き叫んだ。
夫は何度か香織に触れて、拒絶され、そして出ていった。
死ぬつもりだった。
元々夫を初めて肯定してくれたのが香織だった。
香織に愛されなければ、生きている価値がない。
意味もない。
ダムにでも身を投げようと、夫は知らない町を彷徨っていた。
伯父と伯母が、車で夫を探しに行った。
香織は祖父に電話した。そうすると、親に相談しろと困ったように言われた。
親に?
こちらの状況を知らないで、自分たちのことで頭がいっぱいのあの人たちに?
無理よ。話が通じないの。
頼りにはならないわ。
香織は、母親に頼られていた。
頼もしい香織を、母は育てた。
しっかりしてるふりをしている。友達にはそう言われる。
家は散らかって、ご飯はカップラーメンかコンビニだった香織。
新婚の頃、仕事中にレシピを印刷してご飯を作っていた香織。
夫の頭に離婚が過った。ただそれだけで、香織はパニックに陥った。それはもう十分な条件だった。