8話
「ラスト!」
ドギャっとマナのパンチがゴブリンの鼻面に突き刺さり悲鳴を上げることもできぬまま最後のゴブリンが光になって消え。
【ヒィィィヤッホォォォォォウ!】
とゴブリンの代わりのように、レベルアップの叫び声が頭に響く、やっぱうるさいわこれ。
戦闘開始直後は厳しいものになると思われたが。
私がゴブリンから何を喰らっても1ダメージだった事と、2体倒したあたりで。
【ヒィィィヤッホォォォォォウ!】
とレベルアップの叫びが響き二人ともレベルが上がりHPが全回復したのだ。
犠牲を出しながらも頑張って私のHPを削っていたゴブリン側からしたらなんという悪夢だろうか。
全回復+ステータス強化時にどうやらマナがSTRが強化されたらしく。
さっきよりも楽にゴブリンをさばくことができた。
ゴブリンはそれでも諦めずに向かってきたのだが。
また被害を出しながらも頑張ってHPを削る→【ヒィィィヤッホォォォォォウ!】のコンボの前には無力だった。
南無。
それにしてもだ。
「なんか私にヘイト向き過ぎじゃなかった?タンカーとしてはあってるんだろうけど…。」
そう、何故かゴブリンが私ばかり狙ってきた、そのため避けるの早々に諦めてノーガードでの乱闘のようになった。
おかげでマナがフリーで動けたってのは大きいけどね。
私がマナにそう問いかけると。
「あー…うん、ソウダネ。」
なんかマナのテンションがガッツリ低かった。
「マナ、気分悪いの?なんかテンション低いけど。」
私が心配して声を掛けるとマナは。
「あんだけ揺れるの見せつけられたらね…テンションも下がるわい。」
「は?揺れる?」
何の話だ。
「気づかない程に普通の事だと言うのか勝ち組め!」
えぇい落ち着け!ちゃんと説明してよ!
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マナが『落ち着くために必要!だから胸貸して!』と言ってきたため、私が了承したところ。
マナが私に抱き付いて胸に顔面を密着させつつ胸を揉んでくる、おかしい、胸を貸すってこういうことだっけ…なんか違くね?。
ただ本当に落ち着いたらしい。
私の胸マジ便利。
私はまったく落ち着かないけどね。
さておき。
マナ曰く、ゴブリンは私の胸や尻を見て興奮していたらしく、そのおかげでマナはフリーだったとか。
『理不尽だよ、コレが性能の差ってやつなのかな。』
と言いながら自分と私の胸を揉み比べるのをやめなさい。
それに、ゴブリンにモテても全く嬉しくない。
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さて、レベルも上がりポイントも手に入ったのだが。
また囲まれるのもまずいので(経験値的には良いが疲れたのだ。)私達は町に戻ることにし二人でテクテク歩いていた。
一応歩きながらでもステータスを見たりボーナスを弄ったりはできるため
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ナギハ
LV:8
次のレベルまであと1312(488/1800)
HP :42→82/69+13
TP :21→29/29
STR:9→10
TEC:4→9
VIT:5→9+1
AGI:6→12+1
LUC:6→8
残り2BP
HPボーナス 【 3/10】(20%)
VITボーナス【 1/10】(10%)
AGIボーナス【 1/10】(10%)
剣マスタリー 【 1/10】(剣装備可・剣での攻撃時にダメージ上昇)
経験ボーナス 【 2/10】(経験値取得量増加:10%)(仲間にも適応)
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6レベルも上がり
ポイントも【6BP】手に入っていたので。
【HPボーナス】に2BP、【経験ボーナス】に1BP、新たに【VITボーナス】に1BP振り分ける。
BPは全部振ってしまっても良かったのだが。トリックスターのことを考えると町に戻って装備なり何なりそろえてからのほうがいい気がするので残しておいた。
それにしても。
「一気にレベル上がったわね。」
「普通ありえないレベリングだったからね。でも間違いなく遅れは取り戻したはずだよ。」
初日でゴブリンに挑む物好きはそう居ないだろうからねー。とにこやかに語る。
でしょうね。私もできれば普通がよかった。
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ニノマエの町に着いた私.
マナが早速買い物に行こうとして先立つ物が無いことに気づいた。
『箱庭』ではモンスターがお金を落とすことは無い。
そのためどうするかというと、討伐したモンスターからドロップする『素材』を換金する必要があるのだが。
「何処で売れば良いの?」
「んー、初日だからねぇNPCに売るしかないかな。」
プレイヤーの露天で売るメリットがなさそうだからねー、とマナが言う。
たしかに、初日じゃお金も売るものも無いから商売にならないか。
一応全く無いわけではないのだが。
売ってるものも、『薬草』、『何かの毛皮』、『果実』などの販売ばかりだ。買取に回る側はほとんど居ない。
「居たとしても初心者狙った鮫露店だから気をつけなよ?ナギにゃん食べられちゃうよ。」
失礼な、私はグッピーになんかならんよ。
「いいから早く買い取りしてくれる所にいきましょ?少し休憩もしたいしマサとも連絡取りたいしさ。」
「りょーかいりょーかい。」
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「こっこだよん。」
とマナの案内で大きな建物に入る。なんの建物なんだ。
「ここは生産系の職人が利用する建物、言うなれば【生産ギルド】かな。一般向けに素材の買取もやってるんだよ。」
生産ギルドでは素材の買取や販売、生産施設を借りたり、生産依頼を出したり受けたりと色々出来るらしく生産系プレイヤーは自分の店を持つまでは通い詰めになるほどらしい。
「先に掲示板見よっかゴブリンのドロップの依頼あるかもだし。」
マナに手を引かれ掲示板を見に行くことにした。
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「んーと、南の草原の依頼は…あ、あった。ナギにゃんこっちこっち。」
マナの案内で掲示板の前に行き私達は一緒に掲示板を見る。
ニノマエの町には東西南北の四方に門があり攻略のフィールドが分かれてる。
依頼も難易度もフィールドごとに違い、東西南北の順に難易度が上がるという。
東西の掲示板に人はかなりのがいるのに対し南の掲示板は私達しか見ていない。
「ゴブリン関連は二つあるね。」
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【ゴブリン討伐依頼】
またゴブリンが町の近くに来て悪さをしている。早急に退治をして森に追い返して欲しい。
ゴブリン討伐証明部位買取時に一個につき100エン追加。
『ニノマエ町長』
【ゴブリン素材求む】
ゴブリンが落とす素材を誰でもいいから持ってきてくれ。
報酬は応相談。
西地区『金床』店主
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なるほど、討伐証明をギルドで売って残りをこの『金床』さんで売るのがよさそうかな?
あとさり気なく書いてあったけど『箱庭』内の通貨って【エン】なんだね。
私がなるほど、と頷いていると。
「じゃあ私はマサやんに連絡取るからさ、ナギにゃんは討伐証明あそこのカウンターで売ってきてよ、はいこれ私の分。」
討伐証明部位が入った袋をインベントリから出し、こちらに渡してきた。
了解、と受け取り私はカウンターに向かった。
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買取のカウンターに向かうとすぐ職員のお姉さんが笑顔で対応してくれた。
「ようこそ、こちらは買い取りです、素材の持ち込みでしょうか?」
「あ、証明部位なんですけど。確認お願いできますか?」
「はい、ではこちらにお願いします。」
お姉さんが出してくれたトレーに私はゴブリンの証明部位である【小鬼の長耳】をインベントリから出す。
ちなみにマナもやっていたようにインベントリから素材や証明部位を出す時には袋に入って出てくるのだ、不思議。
まぁ、ゴブリンの耳を直接触らなくて済むからありがたいからいいか。
買取の内容は。
【小鬼の長耳】が12個。
通常50エンに依頼で100エン追加されて1800エンだった。
私はお姉さんからお金が入った袋を受け取り『ありがと。』、と礼言ってカウンターを後にした。
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マナのところに戻ると白髪の男性と雑談しているようだった。
誰だろ?
「マナ、換金してきたよ。はいこれマナの分…それでこちらの方は?」
私は半分の900エンをマナに渡しこの人は誰なのか聞くことにする。
「おっ、ありがとナギにゃん。この人は『あるびの』さん、βの時にパーティ組んだりお世話になった人だよ。あるびのさん、コレが前に言ってたナギにゃんだよ、巨乳が!」
「やめなさい。」
「痛ぁっ!」
マナがコレって言いながら私の胸を掴んできたので頭を叩いてやめさせる。私は胸じゃないぞ。
「マナの友人のナギハです。よろしく。」
「あぁ、あるびのですこちらこそよろしく。βの時にマナさんが優しい友人達が居ると言ってまして、確かに聞いてた通りでビックリです。」
なるほど、その優しい友人とやらは今まさにその友人の頭をどついた訳なんだが今の流れでどの辺が聞いた通りなのか私がビックリだよ。
すると二人同時に。
「「デカくてエロイって。」」
よし、お前達そこ座れ。