23話
「まぁ、こんなもんだろ。重くないかエルフの嬢ちゃん?」
「はいです、走ったりするのも問題ないと思います」
いたたまれない空気の中待つこと数分。
親方が奥から引っ張り出してきた装備をアヤが試着をしているのだが……
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ネコミミパーカー
防+8 TEC+2
探求者のスパッツ
防+5 TEC+2
クラフターブーツ
防+4 TEC+1 VIT+1
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エルフにネコミミをぶつける辺りに何かおかしいんじゃねーか金床のチョイスは、とも思わんでもないのだが。
そんな事よりも『探求者のスパッツ』である。
一体全体ナニを探求するというのか疑問が尽きない。
装備者が探求するのか装備者のスパッツの奥を探求するのか気になって仕方が無い。
説明を読むとデカデカと『男女兼用』とだけ書かれている辺りがさらに訳がわからないところに拍車がかかっている。
確かに男の子でも穿けなくはないとは思うが成人男性もスパッツ穿けるって事だろう。
ナニとは言わないがもの凄く目立つのではなかろうか。
いったい何処を目指しているのだろうかこのゲーム。
そして『クラフターブーツ』なのだが、何故か――いやそれが普通なのだが――至極マトモなデザインで足先が金属で保護されている安全靴になっており逆に浮いている。
ココまできたら最後までボケろよ、何かすっきりしないじゃないか。
「ナギハさんナギハさん!」
「ん、何?」
アヤが少し興奮して話しかけてきたので一人脳内会議を中断することにする。
「どうでしょうか?」
その場でクルリと回るアヤ。
パーカーはお知りを隠す位のゆったりとした作りになっており、後ろには鍵型の尻尾もついている。その大きなサイズからか手が少し隠れて自然と甘え袖になり、さらには下に穿いているであろうスパッツがほぼ見えず何やら『はいていない』様にも見えてしまっている。
パーカーからスラリとのびた足はその白さが眩しく、無骨なデザインの安全靴がアヤの可憐さを際だたたせることになっていた。
「うん、似合ってる。可愛いよアヤ」
私が思ったことをそのまま伝えると頬を赤らめて「えへへ」と笑うアヤはとても可愛らしく、年相応な少女に見える。
いつもこうなら良いんだけどね。
さて、アヤの防御面の心配がなくなったところで新たな心配事が浮上してきた。
すげー可愛らしいんだけどさ、初期装備のときに比べてすげー目立つな新装備。
どうするよ。
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とりあえず、アヤが目立つ――自分が目立つのは全力で知らんぷりをするが――のはまた別の機会に考えるとして。
そういえば自分も欲しいものがあった事に気づき、丁度良いので親方にたずねる事にした。
「親方さん、さっき『杖』があるって話してたけど、『杖』以外にも『魔法の発動体』って扱ってる?」
「あぁあるぜ?杖以外なら『腕輪』『指輪』ちょっと珍しいのなら『ナイフ』ってのもあるが、まぁナイフは高ーなぁ」
おー、結構色々有るんだねぇ……。
あ、『発動体』について説明すると、この『箱庭』の世界には他のファンタジーゲームの様に魔法がもちろんある。
あるのだが、他のゲームでよくあるような『何も無くても呪文を唱えれば魔法が発動する』と言う訳ではなく。
剣のスキルを発動するのには『剣』が必要なように魔法を使うには『杖』といった対応した『発動体』が基本的に必要になってくるのだ。
「ちなみに御幾らくらいで?」
「あー……そうだな『腕輪』で2000『指輪』で5000『ナイフ』なら30000ってところだな」
うお、結構いい値段するんだな……。
というか、『腕輪』ですらここで買った私の装備とどっこいどっこいどころか高いんですけど。
「あぁ、そりゃあれだ、杖に比べたら他のは『加工』に手間がかかってるからな。それに杖とかと違って『腕輪』とかは両手が空くから他にものを持ってても魔法が出せる、『指輪』ならさらに重量が軽いからその分たけぇんだよ。なんだやっぱり買うのか?」
「うん、私がね。」
「はぁ?」
親方さんが嬢ちゃん剣士だろとまったく隠す気も無く表情に出すが、いいからいいからと持ってきてもらうことにする。
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ナギハ
LV:20
次のレベルまであと3002(5026/8028)
HP :180/(140+10)+30
TP :61/(46+10)+5
STR:20/(16+2)+2
TEC:24/(20+2)+2
VIT:21/(16+2)+3
AGI:26/(22+2)+2
LUC:12/10+2
残り0BP
HPボーナス 【 3/10】(20%)
TPボーナス 【 1/10】(10%)
STRボーナス【 3/10】(15%・物理攻撃時ダメージ上昇)
TECボーナス【 1/10】(10%)
VITボーナス【 3/10】(20%・物理ダメージ軽減)
AGIボーナス【 2/10】(10%・回避時に【無敵・微】)
剣マスタリー 【 2/10】(剣装備可・剣での攻撃時にダメージ上昇・連続攻撃時にダメージ微上昇)
盾マスタリー 【 3/10】(盾装備可・盾で防御時ダメージ軽減率UP・のけぞり軽減・盾殴り時にスタン効果付与)
白魔マスタリー【 1/10】(杖装備可・白魔術の習得、使用が可能に)
黒魔マスタリー【 1/10】(杖装備可・黒魔術の習得、使用が可能に)
経験ボーナス 【 4/10】(経験値取得量増加:20%)(仲間にも適応・取得経験減少軽減)
索敵 【 1/ 1】(範囲や精度は自身のレベルとTECに依存)
ヒール 【 1/ 1】(性能は自身のレベルとTECに依存)
闇弾 【 1/ 1】(性能は自身のレベルとTECに依存)
スキル
索敵(TP3)
発動条件を満たしていないため使用不可
ヒール(TP5)
闇弾(TP4)
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ステータスがのきなみ上がってるいるのはクラスアップの特典だ。
HP・TPが10、各種ステータスは2ずつアップとはありがたい。
ついでにBPも5貰えたので、VITボーナスに2、経験ボーナスに1、白魔と黒魔のスキルであるヒールと闇弾を取得した。
VITボーナスは追加で物理ダメージ軽減がつきさらに物理から堅く、経験ボーナスは『減少軽減』がついた。
この『減少軽減』だが、『箱庭』ではレベルが上がるにつれ弱い敵からもらえる経験値が下がっていき、最終的には手に入れることができなくなる。
これは低レベルの狩場を高レベルプレイヤーが占拠しない様にするためであるのと同時に、|弱いもの虐めして楽しい?《とっとと先に進め》という運営からのありがたーい処置である。
まぁ、現実的にも同じ敵ばかり倒したところで経験が積まれるはずが無いので正しいことではあるのだが。
とにかく、この『減少軽減』はその取得経験値が下がるのを緩和することができるのだ。
うむ、素晴らしい。
さて、ここまでは良いんだけど……。
問題は白魔と黒魔のスキルであるヒールと闇弾であり、そのスキル欄の一文の『発動条件を満たしていないため使用不可』コレである。
いやーまさかスキルを取ったけど武器がないとスキルを使えないとは、クラスアップもしてるっていうのにこのにわかっぷりである。
まぁ、とりあえず剣と盾を装備する関係上私は杖を持つことが無理なので先ほど親方に杖以外には無いのか?と聞いたのである。
「とりあえず予算的に買えそうなら『指輪』で最悪でも『腕輪』が欲しいところだなぁ……」
アヤの装備の払いがまずある関係上なんとも頼りないところだが、はてさてどうなることやら。




