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21話

ものっそい遅れました。

「……眠い。」


ものっそい眠い。


やはりと言うか当たり前だと言うか。


夏休み3日目を迎えた朝、私は眠くて仕方がなかった。


まぁ、きっかけは自分ではないにしろ寝る時間が遅くなったのは自分の責任であろう。


夏休みなのだからダラダラと寝てしまっていても良いんじゃねーかなーとも思わなくもないんだが、一度生活リズムを崩すと戻すのは大変なのでやめておく。


だから今多少辛くても後のことを考えるならばいつも通り活動するべきだろう。


と、言い訳も終わったところで『箱庭』にログインしている訳である。


他にやること無いのかよ女子高生と言われなくもなさそうだが、他に何かしようにも友人がゲームしてるのだ。


一人で他の事するくらいなら私も一緒にゲームする方が良いだろう。


けしてこのクソ暑いなか外で遊ぶとか正気じゃねーよとかではないよ、うん。



――――――――――



「おはようございます、ナギハさん。」


ログインをするとすぐ隣からアヤが声をかけてくる。


「うん、おはよう。何で私の部屋に居てさらには一緒にベッドで起きた感じを演出しているのか聞いても良いかな?」


あとなんで脱いでんだよ。


「いや違うんですよ、普通に……そう!最初は普通に待っているつもりだったんですよ!ただ部屋に入ってみたらナギハさんの服が変わっていてしかもメイド服になっているじゃないですか!これはもう脱ぐしかないなと。」


いや、脱ぐ必要は無いんじゃないかな。


なんというか、アヤの将来がすごい不安である、それとも最近の中学生ってこんなものなんだろうか。


自分が去年まで中学生(ソレ)だったはずなのだがやはり1年違うとかなり変わってくるんだろうか。


すごいな中学生。


まぁ、それはそれとして。


「アヤ、昨日のメールの件だけど大丈夫なの?」


「んしょっ、えーとですね。あんまり大丈夫じゃないのですよ。」


いそいそと服を着る――メニューから装備を選べば一瞬なのだが何でか目の前で着替えている――アヤは少し疲れたように答える。


昨夜ログアウトした後、私は携帯にメールが着ていることに気づいた。


先ほどの話の流れからわかる様に差出人はアヤなのだが。


内容は端的に言えば『助けてほしい。』であった。


ここで疑問に思われる方もいるかと思う。


何故ゲーム内ですぐ連絡を取らなかったか、と。


その答えはこのゲームには現在他のプレイヤーと連絡をとる手段が殆ど無いためだ。


他のゲームのようにチャットや通話が有ればすぐにでも連絡が取れるのだが、この『箱庭』にはゲーム外とゲーム内に掲示板がある位である。


ぶっちゃけすげー不便であり、その他にも運営に切れたいところは多々あるが。


それはさておき。


「そんで?メールの件だけど助けてって何をさ?」


助けるにしても何をだろうか、レベル上げとか素材集めなら全然良いんだが。


「実はですね、昨日ナギハさんと分かれた後パーティの勧誘を受けまして。」


「うん。」


「それが、少ししつこいというか面倒くさいといいますか、もうパーティを組んでる人がいるから要らないって言っても話を聞かないって言いますか通じないといいますか。その人(ナギハさん)が忙しい時もあるだろうからその時でもいいんだって。」


「うーん、確かに言い分としては間違っていないかなぁ……私だっていつも暇なわけではないし。」


「三日連続でログインするのは暇じゃないんですか?ナギハさん昨日ソロだったみたいですし。」


「暇だったわ、うん。」


超暇。


一緒にやろうって言っていた友人と最初に遊んで以来遊んでないくらい――もう一人は顔見せ位だし――すげー暇だったわ。


おかしいなー、今日の予定も無い。


軽くぼっちコースに片足突っ込んでないかコレ。


「ですから私的に他の方とパーティをわざわざ組む意味が無いといいますか……ナギハさーん聞いてます?そんな遠い目しないでください。」


あぁ、うんごめんごめん少し友人とは何かなって考えていた。



――――――――――



その後少しして落ち着いてから話を進める。


「ならまぁ、今日はパーティ組んでアヤの近くにいればいいかねぇ。」


さすがに一緒に行動していればわかってもらえるでしょうし、それでも相手がしつこいようなら私が対応ができるしね。


「だからまぁ、安心しなさいな。」


「はい。」


さて、アヤの手前自信満々に言ってはみたものの。


初日に私もパーティ勧誘を受けまくって困っていたんだがどうにかなるじゃろか。


「よしどうするかも決まったことだし、とりあえず今日何するか考えましょ?」


「はいです。」


とはいえ、現状やれることなどレベル上げ位しかなさそうなのだがどうしたものか。


「あ、そうだアヤ昨日南で色々採取してきたんだけど私使わないし要る?」


そういえばインベントリに素材アイテムがうなるほど有ったのを思い出した。


生産技能を取得していない私には換金アイテムである討伐証明となんら変わらないものでしかなくぶっちゃけ邪魔でしかない。


というわけで必要としている人にあげたほうが生産的だろう素材的な意味で。


「それはありがたいですけど……私が出せるもの無いですよ?」


「あーいいよいいよぶっちゃけ私が持っててもしゃーないんだから。はいはいインベントリ開いて開いて。」


「むぅ、わかりました後払いでお願いします。」


良いといってるのにこの子はまったく。


「はいはい了解、その話は今度しましょ? とりあえず一気に渡すわよ?」


アヤがコクリとうなずいたのを確認して私はインベントリを操作する。


「まず、色々なキノコが200くらいと薬草の類が300くらいでしょ、それになんかよくわからない果実が大量で……。」


「……へ? 200? 300? すみません、ちょっと待ってください。」


「あ、そうそうゴブリンのドロップとかも有るけど要る?レアも含めて結構有るみたいだけれど。」


この【ゴブリン】ってアイテムとかなんだろね3個しかないし……もしかして凄いレア?


「あぁ、それは極低確率ドロップの召喚獣習得用のアイテム……ぢゃなくて! 待てって言ってるのですよ!てかどんだけ採って、狩ってきてるんですか!」


「んーと、たしか昨日換金した時は討伐証明で3桁行ってた……かな?」


「ソロで狩る量じゃないですよ!」


「いやー途中から面白くなってきちゃって、やっぱ多い?」


「多すぎるのです! てか、ストップ! スターップなのです! 私はこんなに持てないのですよ!」


ありゃ、そうなの……私はまだ持てそうだけどな。


実際コレプラス討伐証明も入っていたのだからまだ多少なりとも余裕があるのはずなのだ。


「低レベルの生産職舐めんなですよ!STRとVITなんざ最低限しかないのですよ! 持てる訳ねーのですよ!」


「え、インベントリの容量ってステ依存だったの?初耳なんだけど。」


「かなり重要な事なのに今知ったですか!」


うん、今知ったですよ。


重要なことかぁ……そうかな、いやまぁそう言われればそうなんだろうけど。


今の今までまったく問題無かったんだし瑣末なことだろう。


私は呆れているアヤを華麗にスルーしながらアヤに入らない――他意は無い――分をどうしたものか考えることにした。



――――――――――



さて、アヤに入らなかった素材は何のことは無く、ホームに有った倉庫にぶち込むことによって解決した。


さすがに倉庫というだけ有ってプレイヤーが所持できる量よりもはるかに多く収納できるようで安心だ。


やはりマイホーム(専用)は性能が違うのだろうか。


拡張すればまだまだ入るようになるとのことだったが当面はまぁ問題ないだろう。


そもそもからして3日目――厳密に言えば二日目時点での荷物だが――で倉庫の容量を心配するのがおかしいのだろうから。


「倉庫が無かったらどうなることかと思ったですよ……本当になんでこんなに持ってきてるんですかね。暇なんで……いや、暇なんでしたね。ごめんなさいです。」


謝らないでくれないですかね……悲しくなるから。


良いじゃんか、コレだけあればしばらく困らないだろうし。


良かれと思って採ってきたのに呆れられるとは。


今日は朝からなんだかテンションが駄々下がり気味なスタートになりそうである。

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