19話
「朝はどうも失礼致しました、ナギハさん。」
「あれれ、ナギにゃんったらキリサキさんといつの間に……って今まさに朝って言ってたか!相変わらず手が早いねナギにゃんは。」
女たらしめっ!っと意味のわからない事をマナに言われる。
「マナ、流石に初対面の人の前で誤解を生みそうな発言はやめて。」
抗議の意味を込めてジロリとマナを睨むと。
「む、ごめん。ナギにゃんは女の子だけじゃなくちゃんと男の子もたらしこんでるから心配しなくてもいいよ?」
「なんで、さも私がたらしこんでる性別に対して抗議をしてる流れになってんの!?てか逆に心配になったわ!!」
相変わらず良い笑顔で恐ろしい事を言い出す友人である。
頭でも軽く叩いてやろうかと思っているとマナがくるりと他のプレイヤー達に振り向き。
「とまぁ、これがナギにゃんだよ!」
どうやら今までの一連の流れは私を紹介していたつもりらしい。
「いやいやマナ、今ので何がわかるの『『『なるほど。』』』なんでだよ!」
一体全体何が分かったのか気になるが聞いたところで火傷する未来しか見えないんだけどどうすりゃいいのか。
考えてみたが良い答えが出るわけも無く、代わりとばかりにため息が漏れただけだった。
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「で、話を戻して良いかな。」
そんな誰かの一言から真面目なお話になる。
とりあえず挨拶をしつつキリサキさんと顔見知りであることを説明をしていく。
ついでとばかりに私連れてっても面倒になるだけだよ?というか私が面倒くさいので行きたく無いです、はい。
と全力でアピールしておくことも忘れない。
「という訳で行かないわよ、マナ。」
どうせ壁役に使われる未来しか見えないし。
「えぇー壁役に欲しかったのになぁ……てかさ、ナギにゃん今何レベルなの?」
「あぁ、それなんだけどさ丁度聞きたかったんだよ。」
やっぱり壁かよと思いはしたが今はそんなことより自分のステータスにおこっている事を聞くことにしよう。
「経験値の欄がおかしいんだけどさ……これどうすればいいの?」
ステータスを表示させマナに見せる。
「どれどれ。」
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ナギハ
LV:20
次のレベルまであとXXX(5026/XXX)
HP :140+28
TP :46+4
STR:16+2
TEC:20+2
VIT:16+1
AGI:22+2
LUC:10
残り0BP
HPボーナス 【 3/10】(20%)
TPボーナス 【 1/10】(10%)
STRボーナス【 3/10】(15%・物理攻撃時ダメージ上昇)
TECボーナス【 1/10】(10%)
VITボーナス【 1/10】(10%)
AGIボーナス【 2/10】(10%・回避時に【無敵・微】)
剣マスタリー 【 2/10】(剣装備可・剣での攻撃時にダメージ上昇・連続攻撃時にダメージ微上昇)
盾マスタリー 【 3/10】(盾装備可・盾で防御時ダメージ軽減率UP・のけぞり軽減・盾殴り時にスタン効果付与)
白魔マスタリー【 1/10】(杖装備可・白魔術の習得、使用が可能に)
黒魔マスタリー【 1/10】(杖装備可・黒魔術の習得、使用が可能に)
経験ボーナス 【 3/10】(経験値取得量増加:15%)(仲間にも適応)
索敵 【 1/ 1】(範囲や精度は自身のレベルとTECに依存)
スキル:索敵(TP3)
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最初こそニコニコとしていたマナだったがウインドウを見始めてから段々と真顔になっていく。
「ナギにゃん。」
「何?やっぱ何かまずいのこれ。」
もの凄くまじめな顔のマナに少し怖いものを感じながら先を促すと。
「何というか……丁度いい事に目の前だしとっととギルドのカウンター行って!なんで2日目で既に一次職カンストしてんのさ!」
「あぁこれカンストだったんだ……良かったバグじゃなくて。」
ほっと胸を撫で下ろすが、マナが――ついでにほかの面々もだが――納得していないようだった。
「いや、マジで何してたのナギにゃん流石に早すぎるでしょ。」
「何って……南に行って【索敵】使いながら狩りして……。」
淡々と説明していくにつれて段々とマナと他の面々が微妙に引いていくのを感じるが説明を途中でやめるわけにもいかず。
「それで大量のゴブリン倒した後帰り道が分からなくってさぁ、まぁ気にしても仕方が無いし採取でもしながらブラブラしてたんだけどなんか採取するたびに敵がわいてくるんだよね。」
何でかしらないけど採取をすると某ゲームのように「おぉっと!」とばかりに敵がわいて来るものだからものすごい効率の良さで経験値が入るのだ。
「そりゃ敵の沸きは良いけど、そのかわりほぼ確定で先制攻撃食らう仕様になってるからだーれもやらなかったんだよ!」
「あーなるほどね。」
私なら魔法でもない限りダメージ無いからなぁ……。
「あーもう!他にも聞きたいこと有るけどいい!主にナギにゃんのクラスボーナスのカオス具合とか聞きたいけど今度にするから早くカウンターにいけぇ!」
「はいはい、了解。あ、攻略頑張ってねー。」
うがーと唸るマナに背中をグイグイと押されギルドに押し込まれた私は手をヒラヒラとふりつつカウンターに向かうことにする。
背後で「あれが廃人か……可愛いのに残念だ。」とか聞こえた気がしたので後でマナに誰が言ったのか聞いておこう。
誰が廃人だ誰が。
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さて、昨日来たはずなのに何か久々に感じる――具体的に言うと1ヶ月以上に――冒険者ギルドのカウンターに向かう。
「ようこそ、今日はどういった御用でしょうか?」
さてと、マナが言うにはカウンターに行けば良いとのことだったが。
「えーと、聞きたいことがありまして。クラスアップってどうすればいいんですかね。」
「はい、クラスアップですね。1次であればレベルを20まで成長された方を対象に特殊なクエストを受けていただいてそのクエストをクリアすることでクラスアップすることができます。」
なるほど、特殊なクエストか。
「ちなみにクラスごとにクエスト内容や掛かる時間がやっぱり違ったりします?」
「詳しくは話せませんが、一部例外を除きそのクラスに合った内容のクエストが行われます。クエストに掛かる時間ですがそれもクエスト次第としか。」
ふむ、私みたいなのも例外に入るのかな……。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
んー内容がわからないし時間もどれだけ掛かるかやってみないとわからないのか……んーちょっと不安が残るけど。
「あ、じゃあその特殊なクエストってやつをお願いして良いですか?」
「え?」
「え?」
はて、今の会話の流れにおかしい部分があっただろうか。
「えーと……お客様は昨日登録された方ですよね?たしかレベルは8だったかと思われましたが。」
「それ昨日のデータですよね?今日でレベル20になりましたよ。」
確認しますか?と受付の職員さんに聞くと急いで登録情報の更新が行われた。
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あの後登録情報の更新が終わると受付の人が奥の方にすっ飛んでいって奥のほうが騒がしくなった。
やっぱり登録して次の日までにクラスアップまでレベルを上げてるような人は前代未聞だったのかね。
対応が遅れるなかやっとこさ係の人が戻ってきて案内してくれた。
「こちらになります。」
この扉の奥に居る試験管に合格を貰えばクラスアップかぁ。
ガチャリと扉を開けるとそこには。
「あ、いらっしゃ『バタン』」
……なんだ今の?何かおかしいものが見えたような。
いやいや見間違いかもしれない、もう一度扉を開けよう。
「いらっしゃー『バタン』」
おかしい、絶対おかしい。
クラスアップにロウソクや鞭、ましてや三角な木馬は要らないですよね!?




