16話
「やっぱりこの騒ぎはナギハさんのせいでしたか。」
爆発と悲鳴をBGMにしつつアヤを発見する事に成功した私は何故か開口一番に酷い言われようだ。
何がやっぱりなのかサッパリわからないのだけど。
「いやいや、人をトラブルメーカーみたいに言わないでくれない!?」
「じゃあ聞きますけど、スペースの入り口から私の所に来るまでに他のプレイヤーさんに何かしませんでした?」
「いや、何も…しいて言うなら目が合った人に会釈した位で何もしていないわよ。」
「因みにどんな風にです?」
どうって言われてもなぁ…こうとしか言えないよなぁ、と思いながら他のプレイヤーにして見せた様にアヤにも見せてみる。
「成る程、わかりました。」
後半はさておきどうやらわかってくれた様である。
やはり人間対話は大事であると証明された瞬間だ。そう、私が一人で頷いていると。
「やっぱりナギハさんが原因ですね。責任を取って私と結婚しましょう。」
何の責任を取らなければいけないのか全くわからないけど。
とりあえず、対話が全く役に立たないことが証明されたよ畜生。
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まぁ私が原因かどうかやら結婚やらは置いておくとして、ここに来た目的であるアイテム作成はどうなったのかと言うイベントの消化を私は優先したい。
後ろの騒ぎに関わったりアヤの奇行に反応するのが面倒な訳ではない、怠いだけだ。
何処からか一緒じゃねーかとか聞こえてきそうな感じだが気にし無い方向で行く、マサに癒されたとは言え私のメンタルはまだまだ厳しいままなのだ。
「そんなことより、どうなったの調合やらは。なんかできた?」
「あ、はい。一応初期段階の調合、調薬等は成功しました。」
「おお、そりゃ良かった。」
「はいです、ただ次の段階に進むには素材、レベル、ステータス、マスタリーと全く足りて無い感じです。」
まぁそりゃそうだよね。逆に二日目でそんなに進んでしまうプレイヤーが居たらチートか頭おかしいか疑うわ。どんだけ廃人なんだよ。
「初日にゴブリンを狩ってるナギハさんが言っても全然説得力が無いです。」
私はバッと顔を背けたのだがその際に背後の惨状が見えてしまい慌ててジト目で此方を見つめてくるアヤに視線を戻すことになった。
「あぁ、そうだこれどうぞ。」
そう言いながらアヤはインベントリからアイテムを取り出して渡してきた。
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【初級ポーション】
初心者用ポーションとも言われる回復薬。
回復量、品質ともにたいした事は無いが無いよりはましである。
【初級解毒ポーション】
簡単な毒を治癒することができる解毒薬。
軽い毒しか回復できないが無いよりはましである。
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「初めて作成したので効果はしょぼいですけどどうぞです。あ、お金は要らないですよ?」
私がインベントリからお金を取り出したところでアヤにとめられる。
「いいの?私今懐暖かいから普通に出せるけど。」
初心者ゾーンとはいえかなりの数を一方的に虐殺、もとい狩ったのでいい感じに黒字なのだ。
ついでにホームもあるので少しの間目立つのを我慢すれば宿代も掛からないとか素敵。
「大丈夫です、実はTPが切れててまだ作成していないだけで材料自体はまだありますから。それに非常に言いづらいのですがナギハさんに護衛の報酬として渡せそうなものがこれくらいしかないのですよ。」
「なるほどね、じゃあ遠慮無く戴くわね。」
私は了承してインベントリにポーションをしまっていく。
「ありがとうございます。正直報酬は少しの間待ってもらうか相談しようかと……はっ!」
「うわっ、どしたの!?」
アヤが突然叫んだと思ったら固まったので何事かと思っていると。
「やらかしました!渡せるものが無いことにして『金が無いなら仕方が無い、身体で払ってもらおうか。』をナギハさんから引き出すチャンスを自分からふいにしましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「言うかそんなこと!」
「あ、話が変わるんですけど。ものは相談なんですがナギハさん。ポーション作成の際に主原料として水や液体が使われているんですけどそこにさらに追加で液体を足すと効果が上がるらしいんですよ。」
「本当に話が変わるわね!悪いけど特に材料になりそうなもの持ってないわよ?」
だいたいにして持ってる素材なんてアヤと変わらないだろうし。
「いえ、ナギハさんの『体液』ならそれはそれは良い材料や触媒になると思うんですけど?」
「は?」
この子は何を言ってるんだろうか。固まる私を前にアヤは饒舌に話を続ける。
「具体的にはそうですね、唾液、血液、涙とか良さそうですね? 後は……。」
さっきの流れからと言うよりも今までの流れで、これ以上アヤに喋らせてはいけない!と私の中の何かが訴えているが少し遅かった。
「そう!汗やおしっこ、それに愛液とかもっぶべっ!」
ぶっちゃけもう最後まで言ってしまっていたので意味が無さそうだったけれどとりあえずしばいておく。
それにしてもこんなペースでやらかしていたらマサに癒された私の正気度はいつまでもつのだろうか。
と言うか『箱庭』に正気度が実装されたら私はまともにプレイできるのだろうか?
不安で仕方が無い。
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さておき、昨日今日と引き続き言っていることなのだが。
騒いでいたら人目につくのだ、もの凄く目立つのだ。
私の記憶が確かならば少し前にマナに目立たないようにおとなしくして居るようにいわれた気がするけど気のせいだろう。
そう言った後マナ本人のせいで騒ぎになったしな。
「そこの貴女達!」
此方をキッと見つめながら近づいてくる女性プレイヤーが一人。
個人的にはギルド職員さんが注意に来てくれることを期待していたのだが世の中上手く行かないものだ。
職員さんなら謝ればいいがプレイヤーはそうも行かないってか本当に面倒くさい。
まぁ、コレだけ生産失敗で凄惨な状況になっても誰も来ないのだからギルド的には普通のことなのだろう。
地味に怖いなギルド。
「あのーナギハさん?」
「ん、何?アヤ。」
私がギルドぱねぇと結論を出しているとアヤが復活していた。
「いえ、そこでビシッと立ち止まって私達を見つめている女性プレイヤーさんをスルーしてますが良いのかなと。」
あぁ、私の横でビシッと立ち止まって私達を見つめている女性プレイヤーさんをスルーしている事か。
「いや、反応しなかったら無かったことにならないかなぁって思ってたところなんだけど。」
「ならないですよ。」
ですよね。
「それで、そこでビシッと立ち止まって私達を見つめている女性プレイヤーさん何か私達に用事でも?」
「ですです、そこでビシッと立ち止まって私達を見つめている女性プレイヤーさん何かあるなら聞きますよ?」
諦めて私達を見つめている女性プレイヤーさんと話をすることにした。二人で仲良くビシッと女性プレイヤーさんへ視線を向ける。
「貴女達仲いいですわねっ!」
それほどでもないよ。




