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11話

今回はナギハ視点ではありません。

私の名前は(アヤ)


たまたまお父さんがPCやゲームを扱うお店の店長だったので品薄の『箱庭』を手に入れることができました。


私は喜び勇んで『箱庭』をインストールし、前衛で並み居る敵をバッタバッタとなぎ倒していく自分を想像しながらサービス開始を今か今かと楽しみにしていました。


そう、当日になって分かった『仕様変更』があるまでは。



□□□□□□□□□□□□□□□



まさか、種族決定に現実の身体的特徴が関係するようになっているとは。


私の身長は一般的な女子の平均に比べると少々…いや少しばかり小さい。


そのせいか選択できる種族の中でまともそうなのが【エルフ】しかなかった、なんですか他の【座敷童子】に【ハーフリング】って。


いじめですか?身長がそんなに大事なんですか?背の順で並んだときに人の背中を見ることがほとんど無い私に対しての当て付けですか!


カムバック!私の前衛種族!…すみません、少し取り乱してしまいしました。


ただまぁ、背が小さいのはもうリアルで慣れてしまったので別にそこまで気にしてはいません、ええ気にしてませんとも。


それにエルフでも中距離以上からの攻撃で戦闘に貢献できますから!


と…そう思っていた時期が私にもありました。


何故でしょうか、私の目の前に並ぶ選択できるクラスは何度見ても【薬師】【錬金術師】【農家】といった生産系しかありません。


エルフ的な感じの【狩人】、【魔術師】、【精霊使い】とかそういうのは何処に消えたのでしょう?


それに【農家】ってRPGの職業として何か間違っていないでしょうか?鍬や鎌で戦うんでしょうか、謎です。


私は仕方なく老人から【錬金術師】の祝福を貰いました。



□□□□□□□□□□□□□□□



当初の予定とはガッツリと変わってしまいましたが生産職と言うものも良いもののはずです。


私が作成するアイテムで強化されたパーティが難敵をガンガン攻略していく!とかとても熱いです。


まぁ、仲間が居ればなんですが。


エルフで生産職をしているプレイヤーがまったく居ないわけではありませんが、だいたいそういったプレイヤーはβの時からのパーティだったりフレンドと一緒に攻略をしています。


サービス開始初日にぽっと出てきたような生産職と攻略に行くような物好きな廃人様はいないのです。


あ、一部の男性プレイヤーからは熱烈なアピールはありましたがお断りしました。


ロリエルフキターじゃねーですよ、流石に身の危険を感じたので逃げました。


そんな訳でサービス開始と同時にログインしたのに絶賛ぼっちです。



□□□□□□□□□□□□□□□



夕飯を食べて改めてログインした私はやっぱりぼっちです。


むしろ悪化してる気がします。


パーティーに入れてもらおうにも広場に居るのは自称最前線プレイヤー様ばかりです。


最前線プレイヤーがなんで広場に居るのか謎すぎますし何で女の人にしか声を掛けていないのでしょうか、いったい何を攻略するつもりなのでしょう?


全然関係ないですけど『箱庭』ではR-15レベルであれば普通に性的なこともできます。相手の同意があればそれ以上もできるとかできないとか。



さておき。



いっそ追加販売までまって学校の友人達が買うのを待って一緒にプレイしたほうが色々とマシなんじゃないでしょうか。


ひそかに考えていた友人が参加するときに先輩プレイヤーとして頼られる計画はダメになりますが諦めた方がいいのかもしれません。


あと一回だけ声を掛けたらそうしますかね、そう思っていた時。


私の前に自分の理想の姿をした女性が現れました。



□□□□□□□□□□□□□□□



ファンタジー世界特有の装備をさも当然のように着こなす姿に最初私はNPCだと思いました。


背はスラリと高くそれでいて女性として主張するべき凹凸がはっきりしている。


腰に佩いたレイピア、左腕に装備された薔薇の意匠が施された盾、物語のお姫様のようなドレスそのどれもが彼女のために作られたかのよう。


そう、ゲーム開始前に私が思い描いていた姿がそこにあったのです。


そこまで確認した時点で気づけば私はその女性に声を掛けていた。


「あ、あのっすみません。」


「んーと、私で合ってるかな?」


その女性は屈んで私と目線を合わせてくれました、その際に大きな胸が目の前で揺れてつい。


「うわぁ、おっきい。」


と、つい言ってしまったが気づかれていないようです。


「はい、お姉さんであってます。私は『アヤ』っていいます。」


「私は『ナギハ』よ。それで何か私に用かな?」



□□□□□□□□□□□□□□□



大変です、まさかの勧誘成功です。


ナギハさんが『いいよ、行こっか採取。よろしくねアヤ。』とニッコリ笑いながら言ったときは同じ女のはずなのにクラリときてしまいました。


卑怯くさいですあの笑顔、こちらを見ていた他のプレイヤーが何人か顔を赤くして固まっていました。


そんな広域魔法レベルのものが私に近距離で放たれたのです。


惚れるかと思いました、危ないです。興奮してまだ胸がドキドキとうるさいです。


ドキドキしているのがばれてやいないかチラリとナギハさんを見るとナギハさんは首を少し傾げながら『どうかした?』と聞いてきました。


貴女のせいでどうかしそうなんですよ。


「いえ、なんでもないです。採取終わりました。」


私は努めて何事も無いかのように装い採取が終わった事を告げた。


今、私とナギハさんはニノマエの東に有る草原で採取をしながらゆっくりと探索しています。


東の草原には初期の調合や錬金術の素材が豊富にあり、生産プレイヤーとしてはいの一番に訪れるべき場所なのですが。


出現するモンスターがどれも初期レベルの生産プレイヤーには辛くて大変なのです。


素早く動き刃になっている歯で切りつけて来る【出刃ネズミ】、鋭い角の一撃が怖い【角ウサギ】、それに常に群で襲ってくる【大群ウルフ】が出てきます。


初心者用フィールドの筈なのに最初っから殺しに来ています、いじめです。


ぼっち生産プレイヤーには辛い仕様です。


「いやー(こっち)は平和だわ。」


隣を歩いているナギハさんが何か言っていますが確かにこの人なら平和なのでしょう。


聞けばナギハさん、昼の内に既に南のゴブリン討伐をしているという凄い人でした。


広場に居た最前線プレイヤーさん(笑)と違い本当の最前線プレイヤーさんです。ぱないです。


そのせいなのか。


「ナギハさんっ!あっちから出刃ネズミが!」


「うん。」


ザシュッ


「今度はツノウサギが!」


「了解。」


ドスッ


「ナギハさ…。」


ザシュッザシュッザシュッ…


「ん?」


採取中に向かって来る敵が片っ端から光になっていきます。気づけばレベルも上がっています。


「いえ、なんでもないです。」


「そう?」


「ただ、護衛頼んどいてあれなんですけど。こんなに楽で良いのかなって気はします。」


そうナギハさんに聞くと。


「んー、良いんじゃない?生産職の戦場ってのは私みたいな戦闘職と違って装備やアイテム作成でしょ?モンスターとの戦闘は戦闘職にまかせて生産職は生産っていう戦場で頑張れば良いんじゃない?それに初心者フィールドの癖に採取ポイントの近くにアクティブの敵が絶対に配置されるようになってるみたいだし、純粋な生産職じゃ無理でしょこんなの。」


ナギハさんはさらに続けて。


「アヤはまだ納得できず悩んでいるみたいだけど、攻略が進めば店売りのアイテムでは追いつかなくなる時が間違いなく来るだろうし、その時になって生産職が育ってないもしくは居ないで困るのは戦闘職のプレイヤー達よ?装備やアイテムがなければ戦闘職も生産職も関係なく戦いにならない訳だし。だからまぁ、今は仕方ないって無理矢理納得しときなさいな。」


最後に『あ、もちろん護衛の分は働いてもらうわよ?』と悪戯っぽく笑いながら付け足してだ。


「は、はい…あ、採取終わりました。ナギハさんのおかげでたくさん集まりました。月も出てますしもう町に帰りましょうか。」


暗くなっていてくれて助かった。どう考えても今私の顔は真っ赤だろう。


どうやら私は本気でナギハさんを好きになりそう…いや。


「了解、『暗いから』気をつけて帰りましょうか。」


「はい。」


好きになってしまったらしい。

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