10話
『箱庭』からログアウトし、夕飯の準備を手伝おうとリビングへ向かうと両親の姿は無く代わりに置き手紙があった。
なになに?『お父さんとちょっと出掛けてきます。ごはんは適当に食べてね 母』か。
夫婦仲が良いのは娘としても言うことはないのだが、とりあえず目先の問題は晩御飯をどうするかである。
一人分だけ作ると言うのもなかなか面倒なのだが諦めてキッチンに向かう。
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さて、白飯はある、みそ汁も作れそう、んー他に何があればいいかな?
とりあえず冷蔵庫を確認することに。
ホウレン草、モヤシ、豚バラが出てきた。
今日は諦めてこれでどうにかするとして明日は買い物に行かなければならなそうである。
さておき料理を始めよう。
ゴマ、砂糖、みりん、しょうゆ、だしもある。
よし、ホウレン草は胡麻和えにしよう。
ゴマを調味料と一緒に適度にすりつぶしつつホウレン草をさっと茹でる。
茹でたらすぐに冷水にとったあと食べやすい大きさに切っていく。
ホウレン草の水気を絞って無くしたらすりつぶしておいたゴマと絡めて完成っと。
次にもやしを洗ってザルでかるく水を切ったあと皿に敷く。
その上に豚バラを並べ、ラップをしてレンジで7分ほどもやしの水分で蒸す。
蒸し終わったら軽くポン酢でも掛けて完成だ。
一人だしこんなもので良いだろう。
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食べ終わるくらいにマサから電話がきた。
『弟に誘われてるから一緒にやってやりたいんだけどさ、ナギハもどう?』
「んー…やめとくかな。弟君私の事苦手みたいだし。」
マサの弟君には何度か会ったことはあるけどまともに会話したことが無い。
嫌われている感じでは無い気がするんだけど、何故だか私を見るとフリーズするんだよね。
『アレはナギハの事苦手とか嫌ってる訳じゃないから気にすんなって。』
「それはなんとなくわかるんだけどさ、あのギクシャクした感じで狩りには行けないでしょ?」
マサは『それもそうか。』と納得したようだ。
また今度一緒に行くのを約束して通話を切った。
さてソロになったのだがどうしようかな。
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まぁソロではあるがログインしないという選択肢は投げ捨てたので普通にログインする。
ログアウトしたときのままのギルドの簡易個室から出て受付に鍵を返しに行く。
何か作業中らしく受付についても職員さんが私に気づく様子が無いので声を掛けることにする。
「退室しましたので確認をお願いします。」
「はいはいちょっと待ってねー…よし終わった。お待たせし……すみませんお待たせしましたっ!」
なんか私の顔を見た瞬間に対応といか雰囲気ががらりと変わった気がしたのだが何なんだろうか?
気にはなったが時間が勿体無いので考えないでおく。
「えーと…退室の確認お願いします。はい、鍵返しますね。」
「はいっ確かに確認しました!ご利用ありがとうございます!」
お、おう。ちょっと受付の人の勢いに負けそうになりながら私はギルドを後にした。
本当になんなんだよ。
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ギルドを出てから気づいたのだが特にやることも無いので依頼でも見ればよかった。
しかしいまさら戻るのもなんだか格好悪いし。
「あ、あのっすみません。」
そんな風にぼーっとしてたら誰かに声を掛けられた。
声の方を向くと、そこには小柄なエルフの女の子がこちらを見ていた。
「んーと、私で合ってるかな?」
少しかがんで相手の目線に合わせる、その際に私の顔より少し下を見ながら『うわぁ、おっきい。』と言った気がするが気のせいだ。
きっと身長だろう、そんなに高くないけど。
「はい、お姉さんであってます。私は『アヤ』っていいます。」
「私は『ナギハ』よ。それで何か私に用かな?」
えっとですね…と、ゆっくりではあるがアヤちゃんが私に話しかけてきた理由を話してくれた。
アヤちゃんのクラスは【錬金術師】だという。
錬金術師は【調合】や【錬金術】を使う生産職だ。
ただ、その調合や錬金術を使用するためには当たり前のことだが素材が必要であり、素材を手に入れるには買うか自分でフィールドに取りに行くしかないのだ。
しかし開始直後でお金が無いので買い取りは難しく、エルフで錬金術師だと火力が低くて防御も薄いために一人で採取に行くのも厳しい。
ならパーティで行けばいいと思うだろうけど友人ならともかく、野良パーティで寄生にしかならなそうな人間を進んでパーティに入れる人は居ないのだ。
それで強そうで暇そうにしてる人に声を掛けていたらしい。
「ふーん、採取の護衛ね。」
「やっぱり難しいですよね、すみま『いいよ?』せ…え?。」
私はニッコリ笑って言った。
「いいよ、行こっか採取。よろしくねアヤ。」
この後の予定が決まった。




