やはりハカマは”バカ”であった。
虚空を抜けた先は、ヨーロッパだった。
石畳が敷かれ、広場らしきこの場所の中心には、噴水があり、そこに人が多く集まっていた。既にある程度攻略されているのか、βテストから大して変わってもいないのか、パーティの募集をかける声も多い。
ふっ。ぼっち共め。と、少し優越感に浸りつつ、俺は待ち合わせ場所である、教会前へと、向かうのだった。
教会前で、あいつらは問題なく見つけることが出来た。俺が杖を持っていることを指摘されるが、あれは嘘だ。と誤魔化した。
というわけで、早速MMOらしく、狩りへ向かうことと相成った。
このゲームは、『Infernos』などとという名は付いているものの、そんないきなり地獄に放り込まれる訳ではない。このゲームに於いて、地獄とは、ダンジョンのことを指すのだ。
ちなみに魔物たちはそこから漏れ出た者達という設定である。
従って、俺たちが最初に向かうのは、森だ。大体RPGの最初のステージは平原と、相場は決まっているのだ。このゲームも例に漏れず、最初のステージは平原なのである。しかし、その最初のステージたる平原には、既に大量のプレイヤーが跋扈してしまっている。従って、俺たちは森でレベル上げをすることになった。
木が群生する森では、魔法が些か使いづらくなってしまうのだけれど、まあ、そこは我が妹、『MAKURA』が、STR極なんてアホをやらかしたらしいので、火力の問題は一切ないだろう。それよりも問題は、相槌だ。こっちでは『HAMMA』という名前らしいが、こいつが妹のフォローをしてやらねばならぬわけで。ご愁傷様です。
現実の俺の役割を全て請け負うことになってしまったハンマさんには、深く頭を下げることとした。心の中で。
そして場所は変わって森の中。先ほど、ここに来る過程で、平原(後ほど聞いたがヒラケ平原というらしい。)を通ることになったのだが。確かにあそこでの狩りは無理があるように感じた。人口密度が、適度に賑わったゲーセンである。これもIIOの人気の弊害だろうか。しかし、過去何作かのVRMMOをプレイしてきた俺ではあるが、IIOの世界の描写は、一線を画すモノがあった。なんだろうね。これ。空気の匂いとでも言えばいいんだろうか。俺の語彙の少なさのあまりに、なんとも言えないのだけれど、他のVRMMOだと、なんというか、立っていて空虚な感じだったのである。しかし今は、現実となんら変わらない。さすがに運営自信が、『異世界』と銘打つのも頷けた。こういう細かいところにも感動できるのだから、このゲームはやはり素晴らしいと言わざるを得ない。もう、ゲームバランスが悪かったなんてオチがあったとしても、僕がこのゲームをやめることはないだろう。
というわけで、待ちに待ったモンスター戦である。そいつは猪だった。普通に大きくした猪。恐らくまだ序盤だから、モンスターも現実に近いものなのだろう。地獄のものというには、少しデザインが優しいように思える。で、待ちに待ったモンスター戦ではあるが、案外呆気なかった。ウチの妹は、斬れば一撃。相槌、もといハンマはPSが高いのか、ハメ殺し。俺は魔法で一撃と。なかなかに手応えの無いものだった。もしかして、極振りというのは、なかなかに優秀なのかもしれなかった。
勿論レベルは1→3に上がってしまう。スキルポイントを6ポイントもらうが、それも全てINTに振り込む。
しかし、やはり一戦だけでは、このゲームの特徴たる『スキル贈与』は、行われなかった。
このゲームの特徴として、ある程度戦闘を行うと、プレイヤーの戦闘スタイルを、システムがある程度認識して、その人に適したスキルを、贈与してくれるというものだ。
βだと皆Lv.3に至るまでには、既にスキルを贈与されるらしいが、やはり俺らは少しおかしいらしかった。
「やっぱスキルもらえないねー。」
「だなぁ。まあ、一戦だけだったからなぁ。」
「いや、一戦ていうより、一撃だろ・・・。STR極っていう、まくらちゃんならともかく、お前は何なんだよ。魔法って、そんなに優秀になったのか?」
「いや、俺、INT極だし。」
「はぁ!?」
そういってから、ハンマは自分の手のひらを、額に押し当てた。あちゃーとでも、言わんばかりに。そして言う。
「―――MP、見てみろよ。」
「は?」
わけが分からなかったが、とりあえず言われるままに、視界の左上に浮かぶ、HPバーの真下に、目を向ける。その灰色に囲まれた、青色をした棒は、確かにそこにあった。
「は!?」
しかし俺は、思わず声を上げた。
その棒は、短かった。自身の思っていたものと対して、とても短かったのである。
つまりは、MPが、マナポイントが、その残量が、半分を、切っていたのである。因みに、さっき使った魔法、火属性魔法の最初の魔法『ファイラ』』で2P消費しただけである。従って、
「初期MPが、3Pだと・・・・!?」
そう、初期MPが、3Pしか、なかったのである。
「お前、これからどうやって戦う気だ?」