語部袴のキャラメイク。
きちんと予約していた俺たちは、直様目的の物を手に入れて、帰って来たのだった。昼飯?そんなもの帰り道に済ませた!
俺と脳筋愚妹は、直様それぞれの部屋に飛び込み、自身のHDDにソフトのディスクを流行る気持ちを抑えきれずに取りこぼしながらも挿入し、USB端子を、自身の首元のAR機器、「VAR・ルーラー」に接続し、ベッドに寝転び、一言。
「―――リンク。」
瞬間、俺の意識は、体はふわりを浮かび、現実を抜け、虚空を通り過ぎ、無数のアイコンが浮かぶ、仮想の自身の部屋へと移る。
俺は降り立つと同時に、見慣れたマイルームに浮かぶ、一つのアイコンを、指先で押すようにする。すると、起動確認画面が表示され、直様それの『YES』を押す。
するとまたしても俺の体は、ふわりと浮かび、虚空を抜け、真っ白い壁も床もない空間へと降り立つ。
それを見計らったように、というか見計らっているのだろうが、小さな女性のような妖精が、僕の目の前に現れ、くるくると飛び回りながら、表情豊かにアナウンスを垂れ流す。
「こんにちは!この度は『IIO』をお買い上げいただき、ありがとうございます!」
『IIO』とはこのゲームの略称である。
「私は、ゲームを通してあなたの案内をさせていただく、あなた専属のサポートフェアリー『AI』にございまーす!」
と、彼女はハキハキと元気にしゃべり立てる。彼女の発言から、そうやら他の人は他のデザインで他の名前のサポートフェアリーあるようだった。
「また、私はあなたがたゲーム内に於ける行動の監視員も兼ねますので、ご了承ください。」
なるほど。ゲームマスターも兼ねるわけか。そしてそれと共に《YES》《NO》というウィンドウが表示される。勿論《YES》
「では、あなたの分身となるキャラクターを、ご自由にカスタマイズして下さい!また、何か質問があれば、いつでもどうぞ!」
目の前に四角形にウィンドウが表示され、そこには俺自身の容姿が写っていた。念願の、キャラメイクである。
まあ、特に素体から変えるつもりもないが、あまりにもそのままだと、リアル割れの恐れがあるため、目の色だけは、紫に変えておく。
黒髪紫目とは、随分と典型的だなぁおい。と思いつつも、やはり男の子の心はいつまでだって中二なのか、結構気に入ってしまう。
名前は適当に『HAKAMA』とする。
そして振り分けられたSP12Pは、全てINTにつぎ込む。フフフ。俺もあまりあの愚妹のことは言えないのかも知れない。しかし、うしろでバカスカ高火力魔法を打てる砲台って、結構楽しそうだと言う俺の心情も、僅かばかりにでも理解して頂きたい。
例えAGIやらSTRやらが0だろうが、VRである以上、全く動けなくなる訳ではない。そして俺は砲台だ。砲台であれば、ほかの方々のようにピョンピョン跳ね回る必要はないわけだ。PvPをする予定もないしな。
あくまで0というのは、この世界に於いて、庇護も加護もないというだけなのだ。しかし逆説的に、それは自由だと言えるのではなかろうか?自由最高!決して「ものはいいよう」とかではない!
そしてもらえる初期武器も、杖を選択。しかし、INTに極で振ったんだし、火力に困ることもないだろうし、この選択は、案外間違ってはいないと思う。火力さえあれば、不遇にはならない!
そしてなん
だかんだでキャラメイクを終えると、妖精の導きが、俺に与えられた。なんて少し中二臭く、俺はキメ顔でそう考えた。
まあ、つまりは、
「それでは!IIOの世界にようこそ!これから頑張って行きましょう!」
と、妖精さんの声と共に、俺の体はまたしても虚空を抜けた。