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ハカマとマクラ

「―――さて、言い訳を聞こうか!」

7月19日午後19時30分。そう言って、正座する俺の目の前に、仁王立ちしているのは、我が妹、語部まくらである。

まあ、何があったかと言えば、二人暮らしの内、飯を作れるのは俺だけであるために俺は毎日の食事当番を命ぜられているわけなのだが、その俺はイオに熱中していたため、彼女の今晩の飯はコンビニ弁当になり果てたというわけである。彼女は結構、味にはうるさいのである。

俺は必死に、与えられた弁明の機会を活かそうと弁明を試みる。

「いや、あれなんですよ。お前もイオに熱中して飯なんて食わないだろうなとか思っちゃったわけですよ俺は。俺の、お前を最大限に慮った結果なわけなんですよ妹さま!」

決して忘れていたわけではない。

「嘘。」

「・・・な、なぜ分かる!?」

「その反応。」

「・・・ッ!?」

クソッ!この妹、カマ掛けてきやがった!?

「この愚兄!あたしが頑張って家事してる間に、ゲームで遊ぶとは何事か!」

「悪かったよ・・・・・。」

潔く罪を認めるとしよう。

確かにこれは俺が悪い。

「よし!明日から気を付けるように!」

「イェスマム!」

「ところで兄ちゃん。」

「何だ?我が愛しき妹よ。」

「何か兄ちゃんがイオ内で、シキさんを口説いてたとか、100匹の魔物相手にボコボコにしたとか聞いたんだけど、ほんと?」

ちょっ、オーラだすな怖い!怖い!

「落ち着け我が妹よ。そんな話しどこで聞いたんだ?尾ひれが付きすぎていて、最早俺の話かわからねぇぞ?」

「掲示板。」

妹にメディアリテラシーを身につけさせなければならないようだった。

「いいか、我が妹よ、シキとは確かに会ったが、あれは向こうが自分の店を売り込んできただけだし、100匹程度の魔物を相手にはしたけれど、80匹くらい倒した時に攻撃食らって死んじゃったんだよ。おーけー?」

「お、おーけーおーけー」

「分かったならいい。」

「あれ?いつの間にか形成が逆転しているような?」

「気のせいだ愚妹よ!」

「あ、愚妹って言ったな!?愚妹って言いやがったなぁ!?」

そう言いながら殴りかかってきた妹と、取っ組み合いの喧嘩をすること十分。

彼女は気が済んだのか、話題をふってきた。ウチでは喧嘩など、じゃれあいと同等なのである。

「ところで兄ちゃん、何で魔物100匹なんて、相手にすることになったの?」

「俺のスキルのせいだ。」

「スキル?」

「ああ。【災禍の中心コーリング・ディザスター】っつってな?一定時間、同じ場所、座標にいると、周りに体力二倍のモンスターがPOPするんだそうだ。で、それで何か100匹ほどPOPしやがってなぁ・・・・。」

「いや、待て。意味がわからないし、そもそも何でそんなスキルとったの?」

「色々あってなぁ。説明するのめんどくさいからしないけど。」

「ちょ・・・・そこ勿体ぶるのかよ!?」

「あんまし人のステータスについて問いただすなよ。マナー違反だぞ?」

「あたしと兄ちゃんの間に、モラルもマナーもあるのか!?」

「まあ、最低限のもの以外はないな。」

「じゃあ・・・」

「だが断る。」

「ムキー!兄ちゃんのケチ!」

「はははははははははは」

いけないいけない。妹と楽しくあそんでしまった。俺は大人なのに。

「そんなこと言ってる時点で、兄ちゃんもまだまだ子供だよ。」

「地の文を読むんじゃねぇ。」

「ていうか兄ちゃん。」

「無視かよ。」

「明日一緒に狩りしない?」

「いいけど、俺のプレイはパーティプレイには向かないぜ?」

「いいの。それだったら、あたしだって、STR極だし、耐久紙だし。」

「そう言えばお前、STR極なのに、どうやって金属製の剣なんて持ってんだ?俺持てないんだけど。」

お前とは違って、女の子からも。

「さあ?」

「さあって・・・。」

「ま、そこがSTRとINTの差なんじゃねぇの?あ、もしかしたら、武器はATKが関係してんのかもな。」

「雑だなぁ。まあ、俺は検証するつもりも無いから、問題ないんだけれど。」

・・・そう言えば。

「俺がお前と狩りしようとすると、俺の【災禍の中心】のせいで、死ぬんじゃねぇか?大丈夫か?」

「問題ないでしょ!あたしのPTメンバーだって、ヤワじゃあない!」

「って待て。お前んとこのPTまで来るのか!?」

「ん?悪い?」

「悪いとは言わないが、迷惑かかりすぎだろ!?」

「大丈夫!大丈夫!」

そう、彼女は満面の笑を浮かべる。

そんな笑い方されちゃあ、反論できねぇじゃねぇか。

「分かった。俺は知らねぇぞ?」

「やった!大好き兄ちゃん!早速皆に連絡してくる!」

「応。」

そう言って、自分の部屋にダッシュしていく妹を、僕は見送るのだった。さてさて。飯飯。

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