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「俺が勇者一行に?嫌です」(連載版)  作者: 東稔 雨紗霧


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2/4

勇者サイド

✻✻✻


 物心付いた時から自分は特別なのだと知っていた。

 剣を振れば一振りで木が倒れ、弓を射れば百発百中、一目見ればどんな魔法も覚えられたし、体術も槍術も少し齧ればあっと言う間に師範に勝てた。

 村のみんなに好かれたし、僕もみんなが好きだった。

 何不自由なく、過不足の無い満ち足りた僕の世界はある日終わりを告げる。

 村を魔物の群れが襲ったのだ。

 僕も弓を放ち、剣を振り、槍で突き、魔法で戦ったけれども多勢に無勢で村の人達はどんどん魔物達に殺されてしまい、僕もあと少しで死んでしまう所で神殿から派遣された聖騎士達に助けられた。

 魔王と勇者についての神託が下り、それを受けて勇者の保護の為にこの村に来たのだと言う彼らは「もっと早く着けば君の村の人達を助けられたのに、遅くなってすまない」と誤ってきた。

 村のみんなが死んで悲しかったけれど、神託の話を聞いた僕は「ああ、だからか」と納得した。

 僕が自分の事を特別だとずっと思っていたのは、僕が勇者で選ばれた人間だからだったのだ。

 それを自覚して周囲の人間を俯瞰して見る様になると、僕はある事に気が付いた。

 どんな人でもみんな僕の事を好きになるし僕のやる事為す事をどんな事であろうと好意的に取るのだ。

 聖騎士の人達に連れられて王都の神殿に来てから関わる人達が増えて行き、誰も彼もが僕に好意の目を向ける。

 僕が勇者だからだと思ったけれども、まだ僕が勇者だと知らない王都の人達でも接する人みんなが僕に優しくしてくれる。

 誰からも嫌われる事なくみんなから好かれる人間は居ないと幼い頃に死んだおばあちゃんは言っていた。

 実際に村の人には仲が悪い人達も居たから、この村は小さな集落でみんな子供の頃からの顔見知りだから僕の事を好いてくれているのだと思っていた。

 でも、王都に来てから違うと分かった。

 どんな事をしても、みんな無条件に僕の事を好きになる(・・・・・・・・・・・・・・・・)。

 意味も無く物を壊したり、無理難題を言ってみても笑顔で受け入れられ、何の罪も無い動物を殺しても好意的に受け取られた。

 街に出て屋台を壊しても金品を強請ってもみんな笑顔で許してくれるし譲ってくれる。

 何をしてもどうやっても覆らない。

 きっと人を殺しても許されるだろう。

 僕が特別だから。

 僕は周囲の人間が恐ろしくなった。

 でも、僕がどう思っても時は進み、勇者お披露目の日がやってくる。

 広場に特設された会場で集まった民衆の為に手を振って視線を配るとみんながみんなキラキラとした目で僕を見つめている。

 誰も彼もが揃いも揃って同じ顔をしているのはまるで、大量の人形に見つめられているみたいに不気味で吐き気がした。

 救いを求めて無意識に視線を動かしたその先に、みんなが同じ表情をしている中で一人だけ違う顔をしている男が居た。


 何か驚いた様なポカンとした顔はこの場でするにはあまりにも異質で、それだけで強く僕の目を惹いた。

 僕が一点に視線をやっているから彼の周りの人達が口々に自分と目が合っていると叫び、その声に納得した表情の彼が周りに合わせて僕へ向かって手を振る。

 何もかもが他と違う彼から目を逸らせず、無意識に彼へと向かって足を踏み出していた。

 世界は僕の意思を尊重するから彼との間にいた邪魔な人達はみんな自分から避けて彼への道を作ってくれる。

 困惑しながら周りに合わせて横へ動く彼に笑いそうになる。

 僕は君に用があるのに、こんなに目を合わせているのにまだ僕が自分に用がある事が分からないんだ。

 彼の前で歩みを止め、ジッと薄茶色の目を見つめる。

 他の人達なら僕がこうしてジッと見つめているだけで恍惚とした表情になり僕の事を好きになるのに彼は何故自分を見つめているんだとばかりに困惑した表情をするだけでそこに僕への好意は欠片も感じられない。

 それが本当に信じられなくて、嬉しくて笑顔を浮かべたら彼の周りの人間が倒れたりしたけれども、彼は微塵も揺らがなかった。

 僕を救ってくれるのは彼しか居ない、そう確信した僕は言った。


 「僕と仲間になってくれ!」



✻✻✻


 今までの人生で向けられた事の無い、暗く諦念した強い拒絶が彼の目に浮かび、僕の勧誘は素気無く断られた。

 拒否されるとは思っていなかった僕は他と違う所が気になったのに他の人と同じ様に僕の要望を受け入れて貰えると思っていた自分の矛盾に気付き、恥じた。

 僕のお願いを彼が断わった事で周りは騒ぎになり、お披露目は中止になってお城に戻る事になったから彼とはそこでお別れになってしまった。

 でも、彼とはその内に会えるだろう。

 本人が拒絶した所で周りの人達が僕の希望を叶えてくれる事は分かっている。

 どうして彼が他の人間と違うのか、それが知れたら良いなと僕は城に向かって揺れる馬車の中で笑みを溢した。


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