表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「30歳童貞の俺、女の子を徴収する国家制度の本音が見えるようになったので潰します」  作者: 厚焼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

第5話 天才魔法使い


「さっき逃げたやつを、追いかける」


剣士は、そう言うなり走り出していた。

躊躇がない。

決断と行動が、完全に一致している。

かずしも反射的に後を追った。


「俺も一緒に! 」


返事はない。

ただ速い。

地面を蹴る音が軽い。

距離が開く、そう思った瞬間。

彼女は横に並ぶ気配に気づいた。

振り向く。


「ひえっ!」


「え!? どうかした?」


かずしが普通に並走していた。

息も乱れていない。

少女の目が、わずかに見開かれる。


『……速い』


魔法使いは、本来、前線には立たない。

体力も、機動力も、剣士には劣る。

だが、この男は違う。

肉体強化。

筋繊維一本単位で、魔力を流している。

無駄が、ゼロだった。


「倒しに行くんだよね?」


かずしが言う。

少女は頷く


「巣に戻る。親玉の場所が分かる唯一の機会」


短い説明。

合理的だった。


「力になりたい」


少女は彼を見る。

数秒。

判断。


「……分かった」


拒絶しなかった。

理由は単純だ。

この男は、使える。

本能がそう告げていた。

やがて。

少女が止まる。

ブラックゴブリンが洞窟に入っていく。


「あそこだね、もういく?」


「……っ」


少女の呼吸が乱れていた。

かずしは、すぐに気づいた。


【本質看破:発動】

――対象:少女剣士

【限界】

身体の損傷。

魔力循環の破綻。

それでも、無理に動いていた。


「座って」


「問題な――」


言い終わる前に、

少女の身体が崩れた。

かずしが支える。

触れた瞬間、理解した。

熱い。

異常な熱だった。


【本質看破:発動】

――対象:少女剣士

表示された情報に、かずしは息を呑む。

【呪術干渉:継続中】

【生命力:慢性的減衰】

【原因:不明/外部固定型】


『呪い……?』


ただの疲労ではない。

もっと前からだ。

ずっと身体の奥に、

“異物”が存在している。

魔力の流れに、明らかな淀みがあった。

誰かが意図的に埋め込んだ、

見えない楔。

少女は言う。


「問題ない……慣れてる……」


慣れてる、という言葉が異常だった。

かずしの中で、何かが静かに燃えた。


「……いいから、座って」


「大丈夫だ、こんなの――」


言い終わる前に、崩れ落ちる。

かずしが抱き止めた。

柔らかい。

近い。

顔が、近い。


『うわ、ち、近い……!』


心臓が跳ねる。

髪の匂いがする。

細い。

軽い。


『そんなこと言ってる場合ではない!!』


「ここだと危ない。移動する。ちょっと持ち上げるよ。」


かずしは、理解する。

このままでは、この子は死ぬかもしれない。

かずしは、少女の背に手を当てた。

目を閉じる。

構造を見る。

呪いは、確かに存在していた。

理論上は、排除できる。

ただし、

失敗すれば、少女の魔力回路ごと破壊する。

かずしは、深く息を吸った。

魔物さえいなければ―

俺はできる。


【魔力構造分解:開始】


触れる。

優しく。

壊さないように。

絡まった糸を、一本ずつほどくように。

呪いが抵抗する。

排除されることを拒む。

だが、かずしは押さえ込まなかった。

“理解”した。

構造を読み、

存在を定義し、

そして――消去する。

静かに。

完全に。

やがて、異物が、消えた。

少女の身体から完全に。

少女の呼吸が変わる。

軽くなる。

循環が、正常に戻る。

命が、本来の流れを取り戻す。

少女が、ゆっくりと目を開けた。


「……あれ」


身体が軽い。

今までずっとあった、

見えない重さが消えている。


「……なんで……?」


かずしは、少し疲れた顔で笑った。


「もう、大丈夫だよ」


少女の目が、揺れた。


「私の呪いを……」


「う、うん……多分……全部消せたはず」


少女の目から、涙がこぼれた。


「この呪いとは、一生付き合っていくものだと思っていた……」


かずしは、少し照れたように言った。


「よ、良かったよ」


その夜、二人は野営した。

かずしは魔法で、結界を張り、結界内の温度を調整し、

まるで、コテージのような完璧な寝床を作った。

少女は毛布に包まりながら、かずしを見る。


『この人は……』


命の恩人だ。

かずしは逆に落ち着かなかった。

隣に、女の子がいる。

近い。

静かだ。

意識してしまう。


『寝れない……』


心臓がうるさい。

沈黙の中、少女が口を開いた。


「お兄さん、名前は?」


「え? あ、えっと……かずしです」


「かずしさん……私は、リナ」


「リナさん……」


名前を知っただけなのに、

距離が少し変わった気がした。

その夜、かずしはほとんど眠れなかった。

翌朝。

二人は、洞窟に移動した。


「もうやるんだね」


「やれる時にやる」


『この子は、いったいこれまでどんな』


かずしは、洞窟に進む彼女を見てそう思った。

親玉はすぐに出てきた。

巨大なブラックゴブリン。

圧倒的威圧。

かずしの身体は凍りついた。

怖い。

動けない。

だが、

リナは違った。

もう呪いはない。

本来の力。

一閃。

親玉は、両断された。


「こんな強い奴がいるなんて来てないぞ」


ブラックゴブリンの親玉をあっけなく倒す。

これが調子が戻ったリナ。

リナは振り返る。


「ありがとう」


まっすぐ、かずしを見る。


「私は、魔族を殺すために旅をしている」


かずしは答える。


「俺は……ギルドで魔物を殺して金を稼ぐ必要があって」


ミーナ達の顔が浮かぶ。


「奪われた人たちを、取り戻すために」


リナは頷いた。


「私は、お金はそんなに入りません。

良かったら、一緒に旅しませんか?」


かずしは言った。


「お、俺、実は、魔物がいると怖くて

動けなくなるんだ……」


「はい」


沈黙。


「え? えっと、だから一緒に行っても俺は邪魔になるかもで」


「えっと、今のところは、私が魔物を倒して、かずしさんには

それ以外をサポートしていただけたらと」


「え?? 」


「かずしさん、自己評価低いですか?」」


「だって、俺は期待はずれ……」


「それに、命の恩人なのでお金が必要であれば、

お手伝いしたいです」


「そ、それは嬉しいんだけど」


少しかずしは考えたが答えは決まっていた。


「リナさん、お願いします。」


「はい。こちらこそです。 私のことはリナと読んでください」


「は、はい!」


『女の子を呼び捨てにするなんて初めてだ』


「俺のことも、かずしと読んでください」


「いえ、かずしさんは、かずしさんです」


「ん? 」


『俺って、やっぱおっさん扱い?? 』


「あ、うん。えっと、旅のその前に……家族に、挨拶したい方村によってもいいかな?」


村には、もしかしたら、もう戻れないかもしれない。

両親に、一旦の別れを告げたい。

リナは静かに頷いた。


「一緒に行きましょう」


二人は、村へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ