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臨界レコード― Dead Men Tell No Tales  作者: 優未緋


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第12話 研究施設


工業区の夜は冷たい。


昼間は機械音とトラックのエンジン音で溢れているこの区域も、夜になると静かになる。遠くでクレーンがゆっくり動く音と、風に揺れる鉄板の音だけが聞こえる。


久世のガレージのシャッターは半分だけ開いていた。


中では白い蛍光灯が点いている。


作業台の上に広げられているのは、複数のデータパネル。


東亜重工精密。


企業ロゴ。


研究員の顔写真。


凛がその一つを指で拡大する。


「この人」


画面に映る男。


「三週間前に失踪」


黒瀬が腕を組む。


「企業の研究員だろ」



「うん」


もう一枚。


別の顔。


「この人も」


「二週間前」


蒼が静かに言った。


「共通点」



「東亜の研究部門」


久世は椅子に座ったまま煙草に火をつけた。


煙がゆっくり上がる。


「場所は?」


凛が指で地図を開く。


新東京市の外れ。


湾岸区域。


工業地帯の奥。


「ここ」


表示された施設名。


東亜重工精密

義体研究センター。


黒瀬が鼻で笑う。


「研究センターね」


「どう見ても違うだろ」


久世


「企業はそういうものよ」


蒼が画面を見たまま言う。


「警備」



「企業警備」


「あと」


少し拡大。


「義体警備兵」


黒瀬


「面倒だな」


久世は煙を吐いた。


「行くわよ」


凛が笑う。


「やっぱり」


蒼は既に武器を手に取っていた。


ガレージの奥。


ケルベロス三機のセンサーが同時に青く光る。


エニマの声。


「作戦開始」



夜の高速道路をスープラが走る。


エンジン音が低く響く。


ネオンの光がフロントガラスを流れていく。


助手席の黒瀬が言う。


「久しぶりだな」


久世


「何が」


黒瀬


「こういう仕事」


久世は笑わない。


「あなたは楽しそうね」


黒瀬


「まあな」


後部座席。


凛がライフルケースを開いている。


中には巨大なレールガン。


蒼はナイフの刃を確認していた。


エニマ


「目的地まで三分」


車は高速を降りた。


工業地帯。


巨大な倉庫。


クレーン。


鉄骨。


その奥に見える建物。


東亜重工研究施設。


夜でも施設は明るい。


白い照明。


高いフェンス。


警備ドローン。


黒瀬が言う。


「企業は金あるな」


久世


「降りるわよ」



施設の外。


フェンスの影。


久世隊は暗闇に溶けていた。


ケルベロスが静かに前に出る。


四脚の金属脚が地面に触れる。


エニマ


「光学迷彩」


次の瞬間。


ケルベロスの姿が消えた。



「侵入」



「私は屋上」


黒瀬


「正面突破」


久世


「静かにね」


黒瀬


「努力する」


蒼がフェンスを越える。


義体の跳躍。


音はほとんどない。


久世と黒瀬も続く。


施設の敷地。


広い。


研究棟。


倉庫。


サーバー棟。


その時。


エニマ


「警備」


二人。


義体警備兵。


装甲スーツ。


自動小銃。


黒瀬が小さく笑う。


「俺だな」


蒼が動く。


影が滑る。


警備兵の背後。


ナイフ。


 


ザッ


 


一人倒れる。


もう一人が振り向く。


その瞬間。


 


パン


 


久世の銃。


頭部センサーが砕けた。


警備兵が倒れる。


凛の声が通信に入る。


「屋上到着」


レールガンが展開される。


コンデンサが低く唸る。


エニマ


「施設侵入成功」



研究棟の内部。


白い廊下。


機械の音。


蒼が先頭。


黒瀬。


久世。


ドアを開ける。


研究室。


机。


サーバー。


凛の声。


「警備ドローン二機」


久世


「任せる」


屋上。


凛がスコープを覗く。


赤い義眼。


距離。


風速。


計算。


コンデンサが光る。


 


ウィィィィン……


 


トリガー。


 


バシュッ


 


遠くのドローンが爆散した。


研究室。


エニマがサーバーに侵入する。


データが流れる。


ログ。


研究ファイル。


黒瀬


「何かあるか」


エニマ


「見つけた」


画面に表示される文字。


 


Λプロジェクト


 


久世


「……Λ」



「AI」


エニマ


「違う」


少し沈黙。


エニマ


「これは」


「AIじゃない」


黒瀬


「どういう意味だ」


エニマ


「観測ログ」


「都市ネットワーク」


「全部」


「ここに繋がってる」


その時だった。


研究室の奥。


巨大なドア。


サーバールーム。


蒼が言う。


「誰かいる」


黒瀬がショットガンを構える。


ドアを開ける。


中は巨大な空間だった。


サーバーラックが無数に並ぶ。


青い光。


しかし。


人はいない。


ただモニター。


画面。


ログ。


エニマが言う。


「隊長ォ」


「来る」


画面が一瞬乱れる。


ノイズ。


音声。


言葉ではない。


信号。


黒瀬


「何だこれ」


エニマ


「……」


少し間。


「見られてる」


久世


「誰に」


エニマ


「わからない」


モニターのログが流れる。


都市ネットワーク。


ドローン。


信号。


交通。


すべて。


どこかから


観測されている。


 


Λ


 


研究室の空気が重くなる。


久世は画面を見た。


「帰るわよ」



東亜重工精密本社。


最上階。


巨大な窓。


夜の新東京市が広がっている。


東雲迅が立っていた。


背後に部下。


「研究施設侵入」


迅は振り向かない。


「問題ない」


部下


「しかし」



「予定通りだ」


迅は街を見下ろす。


「人間は不完全だ」


「だから」


「管理が必要になる」


モニター。


都市ネットワーク。


そのログの奥。


見えない存在。


 


Λ


 


迅が小さく笑った。


「もうすぐだ」


新東京市の光が、静かに揺れていた。

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