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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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傷とコーヒー

作者: 土佐牛乳
掲載日:2025/12/28

「傷」


 彼には傷がある。

 私はわかっている。


「ああ、ゆっくりさわってくれ」


 二人は、風呂のなかにいた。

 私は思う。

 この人を守れるのならば……


「いたい?」


 彼がゆっくりと笑う。


「ああ、いたい」


 どうすればいいのかわからない。


「ごめん、爪先が当たったのかも」


 彼がうなずく。

 これから、彼の背中を医療で治さなければならない。

 私は、これまでの医療を、魔法のように思っている。

 彼にとどくのかわからない。

 でも、この声が、この知恵が、この指先が、あなたのためになるのなら。


「ぐっ、ごめんな、こんなになってしまって」


 彼のひげが見える。

 意外なミステイクなところまで。


「痛い。ぐあ、ここまで」


 その傷から血が出ている。

 私は彼を抱きしめた。

 体はもうすぐでよくなりそうだ。

 それがどれほど私の心に、ゆっくりと、チョコレートのように癒やしてくれるのは。


「ありがとう、ミーティア・カールバル」


「はい、オース・アーティア」


 二人は顔を近づけ合う。

 私は、医療でこの人を助けられる。

 そのことが私にとって、良い世界だなって思えるの。


 彼は、兵士であった。

 私は衛生兵。

 最近、兵士としての女性の進出が激しい。

 それは新たなる世界の始まりとして、うれしいものだ。


 彼は遠くで敬礼をしている。

 二等兵として、この基地を出て行く。

 それがどんなに悲しいことか彼はわからないかもしれない。

 でも治癒をしたことは、私はうれしい。

 彼の力になったことが、私が治療について勉学をしていたことが、本当によかった。


「ありがとうございました、ミーティア・カルバール衛生兵」


 敬礼をこちらにもする。

 彼は眼をとがらせている。

 もうあのときみたいだ。

 ふたりでお風呂に入ったときみたいな。

 こちらも敬礼をする。


 あのときは大胆だったな。

 私のことをここまで慕ってくれたのは、彼ぐらいだ。

 まるでわんこを拾ったときのような世話をした。

 彼の傷が永遠になくなりますように。

 私は願いを込める。

 それがどんな意味をしているのか。

 それはわからない。

 でも彼がまたあの笑顔をするのならば、私は風になりたい。

 古い曲のカセットが先輩の、音楽再生をする機器から聞こえる。

 そうなのだ。

 私は彼の風になりたい。


 ようやく、ベトナム戦争が終わった。

 私は、ゆっくりと自国が正しいとコメントを新聞社に送る。

 それはどんなことを意味しているかなんて私には分かる。


 それからコーヒーを飲んだ。

 そしてそのコーヒーにある、住所に手紙を送る。

 なんとなく、おいしかったから感想を送るのだ。

「こんにちわ、今日初めて飲んでみました。あなたの家のコーヒーはかなり私の舌に合います。私は兵士をしています。衛生兵です。いずれ戦地から帰ってきた先輩たちにも送りたいです。よろしくお願いします」

 普通の話だ。

 でも、ブラジルならば、ここはゆっくりとしておこう。

 なんだか、彼のことを思い出す。

 オース……

 今何しているんだろう。


 それから、隣の家の畑をもらった。

 私は耕して、国からのお金で暮らしていた。

 今は寒い、天候は晴れ、私は世界が広がっているかのように思えてくる。

 一つ息を吐く。

 ブレスは白色をしていた。

 体は衛生兵をしていたときよりも、大きくなった。

 なぜ戦争をしたんだろうかという、発想もなんだか大きくなる。

 モヤモヤ考えていると、ここの山道の奥側からクルマの音が聞こえてきた。


「ん?」


 ライトをここまで照らしている。

 誰だろう。

 軍の呼び出しかな。

 私は、耕すのを止めた。


「ミーティア!!」


「オース!!」


 二人は再会した。


「どうしていたの?」


「君かい?この手紙?」


 二人は抱き合う。

 今度は私から、ひたいをゆっくりとつけた。

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