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おかしな聖女は冷血王子に拾われて溺愛されます  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第29話 決意の飲み会


 お城の大広間。太い柱が天井を支えつつ、壁や天井は豪華な装飾が施されている。

 広間の中央にはきらめくシャンデリアが天井から垂れ下がっていた。

 城の宴会場にふさわしい豪華さだった。


 昼頃から始まった宴会は、夜になっても続いていた。

 楽団がBGMを演奏する中、飲めや歌えやの大騒ぎ。

 ドワーフたちは酒が入ると、皆一様に陽気な態度で振る舞った。十年来の友人のように。

 それに釣られてか、人間の騎士や貴族も笑顔で対応していた。

 

 楽しい宴会になっていた。



 わたしはダンスしたり、あいさつ回りをしたりで忙しかった。

 一応聖女としてお菓子(塩乾パン)を国中に配布していたので、様々な人たちから感謝の言葉を頂いた。


 別の場所ではアインさんがいろいろ語っていたので人の輪ができている。

 アインさんの建国当初の苦労話も面白かった。


 エールのジョッキを飲み干すドワーフたちが豪快な笑顔を浮かべながら笑い声を立てる。


「塩乾パンはエールのつまみにちょうどいいな! がははっ」


「ほどほどにお飲みくださいませ」


 わたしは苦笑しながら彼らの声に応える。

 でも、自分が役立っていたことを改めて知らされて、内心嬉しかった。



 王妃様とも話した。国王の後妻。グランツにとっての継母。

 ティアラとドレスを着こなし、年の割に若く見える素敵な淑女だった。


「アリアさん、ごきげんよう」


「お久しぶりです? 王妃様」


「我が国のために尽力していただいてまことに嬉しく思いますわ」


「いえー、できることをやってるだけですから。こちらこそ、いろいろ面倒を見ていただいて助かっています。ありがとうございます」


「グランツ、さんとも仲良くしていただいているようで、その、よかったですわ」


 グランツのことになると少しおどおどした表情を作った。

 ――ていうか、息子のことを「さん付け」で呼ぶんだ。よそよそしく感じる。

 前妻の子と後妻という壁がまだあるのかもしれない。グランツは実のお母さんを好きだったみたいだし。


 わたしは不敬かと思いつつも、王妃様の手を握って微笑んだ。


「グランツもだいぶ変わってきたかと思います。あとはもう、時間が解決してくれますわ」


「まあ、アリアさん。ありがとうございます」


 王妃様は嬉しそうに微笑んだ。

 わたしも笑顔で答え、お互いうなずき合った。

 心が通じ合ったような気持ちになれた。この国でうまくやっていける知れないと思った。



 ――と。

 広間の遠く、バルコニーに繋がる大きな窓の傍にいるグランツと目が合った。

 グランツはわたしを手招きしてからドアのような窓を開けて外に出て行った。

 わたしは不思議に思いつつ、王妃様にお別れを言ってその場を離れた。 



 それからわたしは宴会場の外にあるバルコニーで出た。

 夜空に月が輝く深夜。吹く風が少し肌寒い。

 背後の宴会場から漏れ聞こえる音に笑い声が絶えない。


 先に出ていたグランツは、バルコニーの柵にもたれて涼んでいた。

 夜風が軽やかに銀髪を揺らしている。


 わたしはお酒に少し酔っていたらしい。少しほわほわした足取りで彼の隣へ向かった。

 同じようにバルコニーの柵にもたれる。火照る頬を撫でるそよ風が心地よかった。


「いい風ね」


「そうですね」


 わたしは彼へ目を向けた。

 遠くを見る彼の横顔が美しい。


「なにか話があるの?」


「ええ、アリア様の両親についてです」


「迎えに行ける? それとも呼び寄せてくれるの?」


「迎えに行ってきます。軍を率いてね」


「えっ! そんなことしたら戦争になるんじゃないの!?」


 驚くわたしを、グランツは赤い瞳に強い光を宿して見てくる。


「アボンダンス王国との交渉がうまくいっておりません」


「交渉?」


「塩乾パンのです。アボンダンスだけが塩乾パンの取引を拒否されました。無料で配るといっても拒否されたのです」


「なんで!? 国民みんな困るんじゃないの!?」


「潜入している部下の報告に寄れば、疫病も流行って大変なことになっているそうです」


「信じられない……」


「アボンダンス王国の言い分は、塩乾パンの製造者を寄越せ、でないと穀物類の取引を停止するといってきています」


「なにそれ。脅迫じゃない」


「うすうす聖女の存在を疑っているのかも知れません」


「そうかもしれないけど……」


「穀物を輸出することで周辺国に対して優位に立っていた国ですので、プライドが許さないのでしょう」


「国民のこと考えてない。このままじゃお父さんとお母さんどころか、村の人や町の人まで……」


「一刻も早く塩乾パンを配る必要があります」


「でも、だからって戦争は……こっそり配るとかダメなの?」


「アリア様の両親にだけならできるでしょうけれども。それはそれで格差を生んでしまって妬まれるかも知れません」


「あぁ……確かに」


 わたしはなんだかしんどくなって、バルコニーの柵に顎をのせるようにもたれた。

 酔いと不安で、頭がぐるぐるする。


「戦争だなんて、グランツのことが心配だわ……」


「ありがとうございます、アリア様。そのお気持ちだけで」


 グランツが腕を回し、わたしの肩を抱き寄せた。

 胸の鼓動が早くなる。

 でも、包み込んでくる体温を頼もしく思いながらも、心の中はモヤモヤが晴れなかった。


風邪wpひいて地獄です。次話を早くします

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