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おかしな聖女は冷血王子に拾われて溺愛されます  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第22話 おかしな散策


 グランツに導かれて王都の中央へ向かう。

 中心街近くの大通りが交差する角に来た。

 グランツが角に面した大きな店を指さしながら言う。


「こちらがアリア様のお店の候補地になります」


「いやいや、大きすぎるから!」


 四階建ての石造りの店。

 大きな一枚板をあちこちに使用した内装は豪華でかつ重厚。

 敷地面積も広く、一階部分だけで庶民の家が何軒も建ちそう。

 今は宝石店となっているけど、間取りは広く取られていて宝石が並んだショーケースには店員が一人ずつ付いている。


 わたしはこのお店でお菓子屋を運営するのにどれぐらいの人が必要かを考えた。

 カウンターにお菓子を並べた店としても、一日回すのに十人は必要。休みを交代で取るとしたら、三十人は必要。


 もしこれで、喫茶店のようなイートイン形式も併設するとしたら、五十人とか百人とか?

 その人たちに払う人件費を考えたら……わたしはだんだん頭が痛くなってきた。

 そりゃ材料費は必要ないけども。



「どれだけ稼がないといけないのよ……店が大きすぎて無理だから」


「そうですか……ここならアリア様にふさわしいお店になると思ったのですが……」


 いたずらが見つかった子犬のように、顔を伏せてシュンとするグランツ。幻影の耳と尻尾が見えるぐらいに。

 

「てか、お店をしてみたかったというのは確かにあるけど。一番の理由はお金を稼いで両親を呼ぶためだったから。もうお金はあるみたいだし」


「そうですね。国相手のお菓子屋さんですね」


「……他の国にも売ったほうがいいのかな? 困ってそうだし」


「さすがアリア様。お優しき心はあまねく世界を照らします」


「大変そうだけどね。グランツにやってもらったほうがいいのかも?」


「そうですね……へたすると利用されて終わるかも知れません。いっそのことアリア様の存在を隠して、我が国が造ったとして販売してやったほうがよいでしょう」


「じゃあ、お願いね」


 グランツは町中だというのに、片膝をついて胸に手を当ててうやうやしく頭を下げた。


「承りました。この私めが命をかけて成し遂げましょう」


「命かけすぎ」


 わたしが笑うと、グランツも顔を上げて笑った。白い歯がキラリと光った。



 その後は、店のことは保留となり、また街を散策した。

 お茶をしたり、魔道具屋を見たり。肩が触れるぐらいに寄り添って一つの商品を見たりした。


 また、街を歩いているとき屋台を見つけた。

 パン生地を細長くして、輪を描くように結んでから、固めて焼き上げたパン。大粒の塩が振られていて、透明な粒子がきらきらしている。


「あ! ひょっとしてこれがプレッツェル? 外がカリッとして中がもちもちの」


「そうですよ、アリア様」


「ん~。聞いたけど出せなかったんだよね、これ。お菓子じゃないからかな?」


「シュタールヴァルトではスナック菓子として食べられていますよ。庶民はエールのつまみにもしてます」


「そうなんだ。挑戦してみたいな」


「買いますか?」


「一個だけ欲しいかも」


「わかりました」



 一個100ゴート。グランツが銀貨一枚払っていた。

 屋台から離れ、石畳の道を歩きながら食べてみる。


 細くなってるところはカリカリで、太いところは中がもちっとしている。

 塩味が利いていておいしい。

 ――それに、確かに予想してたのとは違う味と食感だ。


 もくもくと頬張って食べながら、わたしは右手のひらを上に向けた。

 心の中でプレッツェルと念じる。

 ぽこっと手のひらサイズのプレッツェルが出た。


「出た――はい、グランツ」


 隣を歩くグランツに、出したてのプレッツェルを渡した。

 並びの良い白い歯で一口かじると、彼は口角を上げて笑った。


「まったく同じ味でおいしいです。アリア様の手にかかったら、すべてのお菓子屋は廃業しますね」


「そんなことしない――でも本当にお菓子屋さんをやるとなったら、その辺は考えないとまずいよね」


「アリア様のお店。想像するだけで素敵です。毎日通います。人々も全員、毎日通えばいいのです」


「そんなひどいことできないってば」


 さっきのお店に人々がぎゅうぎゅう詰めになってるところを想像した。

 思わず笑ってしまう。

 グランツも赤い目を細めて、ふふっと優しい声で笑った。


 彼を見上げればお互い見つめ合ってさらに笑う。

 抑えようとしても笑いが込み上げてくるから仕方ない。


 ふと、不思議に思う。

 お菓子をかじりながら二人並んで街を歩いているだけなのに。

 それでも心が弾んで、ちょっとのことでお互い笑顔になる。

 なんだかとても楽しい時間だった。


 

 その後はプレッツェルを食べ終えて、またお店に入った。高価なアクセサリーの店。

 食べながら店には入れないので。


 わたし以上にグランツが真剣にネックレスやティアラなどを見ていく。

 夜会で着るドレスに合う飾りがなかったと言うことで、グランツが装飾品をいくつか注文していた。城に届けてもらうらしい。


 用事が済んだら、また街を散策。市場を見たり、露店をひかしたり。

 グランツとの街歩きは楽しい。


 思えば男性と一緒に街を歩くなんて初めてだった。

 心がずっと温かい。


 この気持ちがなんて名前なのか、まだわからないけれど、ずっと続けばいいなとわたしは思った。


「あまねく」の使い方、合ってますか?

次話は明日更新。

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