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おかしな聖女は冷血王子に拾われて溺愛されます  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第21話 王都 de デート


 たどたどしい社交界デビューを果たした次の日。


 わたしは朝から塩乾パンの仕事に精を出していた。

 ――昨日の出来事を思い返すたびに、恥ずかしさと嬉しさで顔が真っ赤になるので、それを忘れるためにひたすら仕事に打ち込んでいた。



 ――と。

 そろそろ昼食かな? 午前の仕事は終わりかな? と思っていたら、グランツがジャケットをなびかせながらやってきた。

 落ち着いた白シャツの上にチャコールグレーのジャケットを羽織っている。濃い赤色のパンツが足の長さを引き立てていた。全体の色遣いが、銀髪と赤い目に似合っている。

 装飾は少ないので一見庶民の服のように思えるが、見る人が見ればその仕立ての良さに舌を巻いたはず。


 真上から降る日差しに、銀髪と白い肌を輝かせながら、並びの良い白い歯も光らせて言う。


「アリア様、これから一緒に出掛けませんか?」


「急にどうして?」


「仕事がようやく片付いたので、王都を案内したかったのです」


 そう言えば、王都に来てからほぼお城にしかいなかった。

 白狼のイチローたちは、王国騎士団の錬兵場に行って毎日訓練をしているらしいけど。


 ――確かに、初めて訪れた外国シュタールバルトを見て回りたい!

 わたしはすぐに頷いた。


「うん、いいよ。グランツ」


「ありがとうございます、アリア様。では早速行きましょう」


 グランツは胸に手を当てて恭しくお辞儀すると、わたしの手を取って歩き出した。

 釣られてわたしも歩き出す。

 お互いの指を絡ませる手のつなぎ方に、胸の鼓動を高鳴らせながら。



 昼のさなかの王都。

 堅牢な街並みに人々があふれていた。

 みんな昼休みになったらしく、屋台や食堂は昼食を取る人たちでごった返していた。


 そんな街中を、わたしとグランツは石畳に足音を響かせて歩いていく。

 帽子を被っているだけだけど、道を行き交う人々に素性がバレた様子はなかった。



 それからグランツに案内されて、大通りから一本外れた裏通りにある、ちょっと高級そうなレストランに入った。

 内装は白壁に、木目の出た柱や床がお洒落に感じる。

 テーブルには真っ白なテーブルクロスが掛けられ、上には花が生けた花瓶が載っていた。

 

 予約してあったのか、店内からは少し離れた窓際の半個室っぽいところに案内された。

 テーブルの上の花瓶には薔薇と黒百合が生けられている。鮮やかな見た目と、可憐な香りが美しい。

 グランツがエプロンを付けつつ、微笑んで言う。


「ここの肉料理は王都でも評判なんですよ。期待してくださいね」


「期待してるわ」


 わたしも見よう見まねでエプロンを付けた。

 店員が木の板に鉄の板を乗せたお皿を持ってくる。

 鉄板は熱せられていて、上に乗った肉がジュージューと音を立てている。


 ――ステーキだ!

 香ばしいニンニクとソースの匂いが立ち上り、熱せられた脂が跳ねる。

 ――確かにエプロンしてないと服が汚れそうだった。


 テーブルに置かれたバスケットには十種類以上のパンも入っている。



 グランツが言う。


「この店はパンのおかわり自由だから、たくさん食べてください」


「それはすごいっ」


 わたしはナイフとフォークを使ってステーキ肉を切ると頬張った。

 肉は柔らかくって、舌で押しつぶすだけでも溶けるほどだった。肉汁が口の中に溢れる。

 パンを一口ちぎっては頬張ると、口の中が幸せになる。


 しばらく無言で肉とパンを食べた。付け合わせの野菜もしっかり食べつつ。


 木の実を練り込んだパンや、バターが多くてふわっとしてるパン。

 皮はパリッと固いけど、中はもっちりと粘り気があるパン。

 小麦や大麦、黒麦など、いろんな粉をつかったパンなど。


 こんなにたくさんの種類のパンで食事したことはなく、それだけでも目が賑やかになった。

 しばらく夢中で食べた後、はっとしてグランツを見る。

 少しはしたなかったかもしれない。



 わたしは取り繕うように笑う。


「とてもおいしいわ、グランツ」


「ステーキのソースをパンに付けて食べてもおいしいですよ――こんな感じで」


 グランツが長い指先に千切ったパンを持ち、ステーキ皿を拭うようにしてソースを付ける。

 そして優雅に口へと運ぶ。

 ――マナー違反な気がしたけど、わたしも真似して食べてみる。

 肉汁とソースを吸ったパンが口の中に広がった。


「おいしい~」


「それはよかったです」


 グランツは微笑み、またマナー以外の食べ方をしていく。

 マナーに慣れていないわたしに合わせてくれてるのかなと少し嬉しかった。

 食後のケーキもおいしかった。栗がいっぱい入っていた。



 ランチのあとは街を散策。

 鉄器や銅器のほか、銀器やアクセサリーの店が多かった。

 ショウウインドーを冷やかしつつ、時々店に入ってみる。


 鍋やフライパンが所狭しと並ぶ小さな店。

 わたしは鉄製の深い鍋を手に取る。


「わ~、見た目より軽い。使い勝手良さそう」


「アリア様は宝石よりも鍋が気になるのですか」


「ううん、お母さんが欲しがるだろうなと思って……何度も直して直して使ってたはずだから」


 わたしの言葉に、グランツが苦しげに顔をしかめる。


「申し訳ありません、アリア様。ご両親への接触や保護はまだできておりません」


「忙しかったものね」


「それだけではなく、へたに動くと重要性を察知した相手国が人質にしかねないので、慎重に動いております」


「ああ……それもそうか。あのジャン王子って人は、何するかわからない人だものね……うわ、たかっ」


 持っていた鍋の値段を見て、わたしは思わず棚に戻した。予想の三倍はしていた。



 グランツが、あっと声を上げる。


「言ってくだされば国が支払いますよ」


「いやいや、そこまでされると悪いし。良い暮らしさせて貰ってるだけでもありがたいのに」


「何をおっしゃるのですか。一国の食料を支えたのですよ。まだ金額が確定していませんが、少なくとも聖金貨で十枚以上は確実です」


「聖金貨?」


 知らないお金を言われて、思わず聞き返していた。

 グランツが深くうなずきながら説明してくれる。


「一枚で大金貨の500倍、金貨の1万倍の価値がある金貨です。国や大商人ぐらいしか見ないでしょうね。国家間や国相手の大取引に使うものですから」


「えっ!? そんなにお金貰えるの!? わたし密かに大金持ち!?」


「現時点で小国の年間予算ぐらいは所持されてますよ」


「じゃ……じゃあ、買っちゃおうかな……?」


 戻した鉄鍋におそるおそる手を伸ばした。

 グランツが口に手を当てて、ふふっと笑う。


「どうかアリア様はそのままでいてくださいね」


「どういう意味よ、それ」


 わたしは頬を膨らませて睨んだけれども、グランツは笑って取り合わなかった。

 その後、鍋を持ち歩くのは大変だからと、グランツが店の人にお城へ届けるように指示していた。



 店を出てまた通りを見渡す。普段通りのように人々が行き交う。


「王子様なのに、護衛がいないんだね」 


「わからないように守ってますよ」


 言われてみれば、遠くの街角に鎧を着た騎士がちらほらといた。近くには私服だけど腰に剣を下げた人がいる。

 でも、もふもふがいない。

 

「あれ? 狼は?」


 いつもは誰か一匹が傍にいてくれるのに。


 グランツが無言で顎を逸らして顔を上に向けた。華奢な首にある喉仏が目立つ。

 わたしもつられて目を向けると、四階建ての建物の、三角屋根の上に白い巨体がいた。

 一番大きなイチローだろうか。司令官のような鋭い目で、街を見下ろしている。


「屋根を踏み抜かないかな……」


「危機感知は得意でしょう」


「なるほど」


「さあ、次の目的地です。ぜひ見ていただきたいものがあるんです」


「なんだろ?」


 少し期待して心が弾む。

 自然と手をつないだ。柔らかな体温が、絡まる指から伝わってくる。

 暖かさが心を一層弾ませた。


 その後、グランツに導かれて王都の中央へ向かった。


お金の設定を書いていませんでしたが、

1ゴート約1円です。

        20ゴート 銅貨一枚    二十円

       100ゴート 銀貨一枚     百円

      2000ゴート 大銀貨一枚   二千円

     10000ゴート 金貨一枚    一万円

    200000ゴート 大金貨一枚  二十万円

   1000000ゴート 魔銀貨一枚   百万円

  20000000ゴート 大魔銀貨一枚 二千万円

 100000000ゴート 聖金貨一枚   一億円

2000000000ゴート 大聖金貨一枚 二十億円


魔銀貨の材料はミスリル

聖金貨の材料はオリハルコン


ミスリルは黒魔法の効果が乗った魔道具の材料となる。

オリハルコンは魔法だけでなく神聖魔法の効果が乗った魔道具の材料になる。

暗殺に怯える王侯貴族が欲しがる【毒消】や【即死抵抗】などのアクセサリーはオリハルコン製。

だから高額。とくにオリハルコンは高額。

逆に普通の金と銀は魔法が乗らないので価値が低い。


次話は明日更新。

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