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第5章 新しい少子化対策の財源

我が国の少子化が問題視されてから30年間が経過したがその間子育て支援など色々な対策が講じられて来たが未だに少子化に歯止めがかからない。そんな中、衆議院議員森山克子は民民党党首に上り詰め総選挙を戦い抜き女性としては初めての内閣総理大臣に就任、以前から持っていた少子化対策の法制化を実現する。

第1章から第10章までは森山克子が新少子化対策の法制化を実現するまでの過程が綴られており第11章からは新少子化対策法施行後のドラマが展開する。ご期待あれ。


話は全てフィクションです。なので登場人物は全て架空の人です。

「ざっくり言って、現役で働く方々の人数が年々増加の傾向に転じれば将来財源の心配は少なくなります。でも新しい制度を世の中に定着させるためには反対者に口実を与えないためにも財源の裏付けをきっちりさせておく必要があります。先ず基本的な考え方は、人口が減少傾向にある現在では論理が崩壊寸前の状態ですが、現役世代が稼いで高齢者を支える事です。現在公的年金の財源は、1 保険料収入 2 国庫負担金 3 積立金の三つで賄われています。また給付に注目すると現在は3階建て、つまり国民年金、厚生年金、企業年金となっています。更に将来受けられる年金額は現役世代に稼いだ年収を積算して決まるような仕組みになっています。私はね、子育ての貢献度で年金額が決まるような構想をお話しました。そうすると現在の積み立て的な考え方を廃止して新たに財源を確保する仕組みに変更する必要があると思います。また現行の制度では勤め人には良いのですが、多数の自営業に携わる方々には良い制度ではありません。加えまして、私の考え方ですと沢山稼いでいる方々から不公平感が出て不満の元になりかねません。けれども国家の将来として考えれば若い世代の人口減少に歯止めを掛けねばなりませんし、子育てに苦労された全ての女性が将来老後に安心して暮らして行ける世の中を作らなければなりませんから全ての国民が納得して下さるように制度を設計しなければなりません。大変難しい問題ですが、どうぞ皆様と知恵を出し合って出来るだけ多くの方々が納得できるような仕組みを作り上げたいと思います」ここまで話して森山は一息ついた。


「私はね、現役世代が高齢者の生活を支える考え方は今のままで良いと思うの。けれどもね、今の保険とか積み立てとかの考え方ですと、国全体でと言うよりも自分の老後を自分で稼いだお金で支えるような気持ちが残るように思います。現役世代に沢山稼いで積み上げた方が年金が多くなり、また良く稼いでいる企業の企業年金が多いほど受け取る年金額が多くなる仕組みですと育てた子供の人数なんて関係ないですから、男性も女性も多くの方々は現役世代にできるだけ稼いで、少子化で将来年金を受け取れるか不安も手伝って子育てよりも現在の仕事で稼いでご自分の将来のために貯蓄や財テクに走る結果になります。なので子供が生まれて一年も経たぬうちに子供を保育園に預けて仕事に精を出す傾向が強まります。現在の年金制度が勤続年数や過去に稼いだお金の積算値が支給金額に影響する仕組みですから一概に悪いとは言えませんが制度を変えれば考え方も変わると思うのよ」


「そこで私は現在の3階建ての考え方を改めてシンプルに1階建てにしたいと思います。仕事で現役の方々は厚生年金保険料を納めるのでなくて企業も個人も稼ぎに応じて収入に対する一定比率の金額を第二法人税と第二所得税として国庫に支払う形です。第一法人税と第一所得税は現在の法人税と所得税そのものです。従って年金の財源は目的税の第二法人税と第二所得税から得られた金額をベースにした国庫負担金一本となります。我が国では寄付と言う行為は日常的には少ないですが、第二法人税と第二所得税は強制的に寄付させられるような感じになります。第二法人税は従来健康保険、雇用保険など企業が負担していた費用をベースに算定される必要がありますから、算定基準の中に従業員数に比例する計算式も加えないといけませんね。負担する費用は利益の有無にかかわらず課税されなければなりません。この費用は今も約50%は企業が負担していますから特に問題はないと思いますわ。自営事業主は従業員ではありませんが専従者と一緒にご自分の費用を新たに納税する必要があります。これは働く人全てが平等に社会保障を受けられるようにするための措置ですから該当する皆様のご理解は得られると思います。私はね、社会保障は国民全体でなるべく差別が生まれないようにしたいのよ。今は大企業にお勤めだった方々と自営業を続けてこられた方々とでは受けられる年金に大きな差があるでしょ? これをなくすには自営業主にも応分のご負担をお願いしなくちゃね。今まで第二所得税も現在の所得税と同様の累進税率、つまり現在は課税される所得金額に応じて5%から45%の7段階の比率で課税されますが第二所得税の場合、比率は改めて設定する必要がありますが、累進の考え方は同じです。それから医療費ですが、今は3割負担、2割負担、1割負担など差がありますが、私は原則全て3割負担にしたいのよ。高齢の年金受給者も新制度が適用される方々からは3割負担としたいのよ。平均手取りで40万円頂けるなら現役世代と同じ負担をして頂かなきゃね。ただし、年金受給者は第二所得税は免税だわね。それから低所得で所得税や地方税が免税になっている方々は医療費は例外的に1割負担にしたいの。無償はダメよ。無償だと必要のない診療を受けちゃう人が出てくる可能性がありますから」


 森山は更に話を続けた。森山の話を聴いているワーキンググループのメンバー10人の衆参議員たちは話の内容を理解しようと頭の中がフル回転している様子だ。


「皆様は現在消費税がどのように使われているか使途をご存じよね。表向きは社会保障に充てると言いますが不透明な部分もありしばしば消費税廃止論が出ます。我が党でも以前消費税撤廃などを党の政策として掲げた事もありますが増大する社会保障費用をどうやってカバーしていくの? と言う問題に明確な答えを持っていなかったために国民の大多数の皆様の支持を得られませんでしたわね。私はね、今回第二法人税と第二所得税の新設により従来の消費税を全廃して社会保障の財源を一本化してスッキリさせて不透明な部分も一掃したいのよ。このテーマは今回の少子化対策の財源を考える上でとても大切ですし、第二法人税と第二所得税は稼ぎに比例した金額が徴収されますから消費税よりも低所得者の負担が軽くなり高所得者の負担が重くなりますので一部の企業経営者や富裕層の方々を除いて多くの国民の皆様の賛同が得られると思うのよ」


「私が厚生年金保険料、健康保険料や雇用保険料などを第二所得税として課税方式に変更したい本当の気持ちはね、実は皆様の意識改革に狙いがあるのよ。皆様はじめ世間では消費税を1%引き上げると言うと大反対の渦が巻き上がって大騒ぎになるでしょ? では健康保険料が【今月から1%増額になります】と通知を受け取ったら大騒ぎになりますか? ならないでしょ? そこが問題なの。現在厚生年金保険料や健康保険料は必要な費用が増えるとドンドン増額するのに殆ど騒ぎになりません。でもね、これが第二所得税の形で税金の形になりますと、わずかの増税でも皆様の納得を頂くために相当の説明が必要になります。つまり、使い方に厳しいチェックが入ります。この意識の改革がとても大切だと思っているのよ」


「さて、ここからがとても大切な話です。私はね、現在の社会保険制度をそのまま継続すると私が提案する少子化対策に合わなくなります。その理由をお話ししましょう。先ず皆さんと共有すべき大切なデータですが、皆さん所得税の税収と消費税の税収のどちらが多いかご存じ? 昨年度の所得税の税収は約20兆円です。これに対して消費税の税収は約24兆円です。答えは消費税の方が多いのよ。私が何を言いたいのかお分かり? 消費税は社会保障費用に充てられていると言う事は所得税の税収より多い金額が社会保障に回されているって事ね。大変な金額よ。元サラリーマンだった方はお分かりの通り、消費税とは別にお給料から毎月健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、それに40歳以上になりますと介護保険が差し引かれるでしょ? 年末調整がありますが、月々差し引かれている所得税の金額に比べて保険料の合計額は多いですか、少ないですか? 保険料の方が全然多いでしょ? これを大きな掴み方でお話ししますと、前年度の国の一般会計税収が約70兆円、これに対して社会保障に必要な費用の合計は約140兆円、驚くなかれ税収のおおよそ倍の財源が必要なのです。社会保障費用の中身は、ご存じの通り年金、医療、福祉と子育て支援などです。年金の費用は約60兆円、医療の費用は約45兆円、福祉・子育て支援などの費用は約35兆円です。多い、多いと騒がれている我が国の防衛予算は前年度約10兆円ですから社会保障に必要な財源に比べたら可愛いものよ。社会保険料の総額は現在約80兆円ですが、その内約半分は企業が負担しています。表向きはね。表向きと言うのは企業が負担していると一般に認められていますが、実際には働く人の人件費の一部ですから働いている方々が負担しているって事ね。私はねこの企業負担分を第二法人税の主な内容にしたいと思っています。この事は前にお話ししましたわね。さて、世の中に大勢いらっしゃる個人事業主は厚生年金の代わりに国民年金保険料を払います。 私は、サラリーマン、専業主婦、個人事業主など様々な立場にいらっしゃる全ての女性を対象にして子育てと家事をしっかりなさった方々には老後平等に子育て人数に応じた金額の年金を支給したいのですが、現在の社会保障制度ですと、厚生年金の保険料を支払った方と国民年金の保険料だけを支払った方とでは支給される年金額が大幅に違います。ですから現在の社会保険制度をそのまま継続すると私が提案する少子化対策に合わなくなります」


「例えば個人商店などをなさっている場合奥様はどうしても子育て中店番とかお仕事をせざるを得ないケースがあるのと違いますか? それもダメじゃそう言う方は子育てできませんよね」途中、中谷次郎が質問した。


「私はね、色々なケースが他にもあると思うのよ。なので十分に検討して家事以外に子育て中に許されるお仕事の内容を具体例としてお示しする事はとても大切だと思います。今中谷君がおっしゃった事例は私は【しても良い】方に挙げたいわね」


「話を医療費の支払いに戻しましょう。今は人により負担額が違いますから病院で診療を受けるとき健康保険証を必ず提示しなければなりません。けれども原則全ての方々か3割負担なら健康保険証は要りませんよね。低所得で1割負担の方々だけが割引証明書を提示すれば良いのです。世の中がシンプルでスッキリしますでしょ?」


「現在日本に在住している外国人も3割負担ですか?」

「そうよ。日本に在住していて日本の国籍はなくても第二所得税は納めて頂きますので平等に3割負担です。ただね、日本国内で働いていないで第二所得税を納めていない極く少数の方々や旅行で来日されている方々は10割負担にしないといけません。そうしないと日本じゃ医療費が安いからと海外から病人が大挙押し寄せて来て大変な事になります」


「全員3割負担ですと現在年金生活をなさっている方々から相当強い反対意見が出ると思いますが」

と中谷次郎が質問した。

「はい、現行の年金受給者を1割負担からいきなり3割負担にすると言えばそれは猛反対されますわね。私は現行の年金制度の適用者には今まで通りで良いと思っているのよ。全員が3割負担になるのは新制度の適用者からにしたいの。なので国民全員が新制度に移行するまでの約20年間位は過渡的に新旧両制度が並存する形になります。世の中の仕組みを大改革するのですから20年間位かかっても良いと思っているのよ」


 前に質問した須藤議員がまた質問した。

「第二法人税と第二所得税を節約するために日本で実質的に活動しているのに本社を海外に置いて節税する企業が増えませんか?」


「平成26年に税制が改定されて外国法人に対する課税原則は「総合主義」から「帰属主義」に変わったのをご存じよね。平成26年はえーっと2014年だわね。当時節税のために本社を税率の安い国に移したりするタックスヘイブンが話題になりまして、外国企業や海外に拠点を置く企業、節税のため本社を海外に移してしまう企業に税の網を掛けるために改正されたのよ。なので現在はそれほど大きな問題はないわね」


「今日は皆様お疲れでしょ? 今日はここまででお開きにして明日また続きをお話しましょう」森山はこう締めくくってお開きにした。

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