第4章 森山克子の少子化対策構想
我が国の少子化が問題視されてから30年間が経過したがその間子育て支援など色々な対策が講じられて来たが未だに少子化に歯止めがかからない。そんな中、衆議院議員森山克子は民民党党首に上り詰め総選挙を戦い抜き女性としては初めての内閣総理大臣に就任、以前から持っていた少子化対策の法制化を実現する。
第1章から第10章までは森山克子が新少子化対策の法制化を実現するまでの過程が綴られており第11章からは新少子化対策法施行後のドラマが展開する。ご期待あれ。
話は全てフィクションです。なので登場人物は全て架空の人です。
「あなた方、いま夫婦二人で普通に人並みに生活して行けるには月々手取りがお幾らあれば良いかしら?」森山は一同に尋ねた。すると先程発言した溝口が、「僕だったら最低40万円は欲しいな」と言った。すると年配の議員酒田真之介が「住宅ローンの残高がどれくらいかとか賃貸し住宅に住んでいるとか個々に事情が違うと思いますが、私も月々手取りが40万円あれば何とかやり繰りは出来ると思います。贅沢はできないけどね」とフォローした。数年前までは30万円程度で良かったが、2023年頃からインフレの兆候が現れて物価が上昇、現在では当時より3割程度プラスしなければならないのだ。
一同概ね同じ意見だったので森山は、
「ではベースはこうしましょう。ご自分で子供を産むか、他人の子供を養子にするかどちらでも構いませんが、ゼロ歳から一歳位までの赤ちゃんを中学卒業まで育てる事を条件にしてお子さん1人育てた女性は将来68歳を過ぎましたら年金で手取り月々9万円、ご夫婦合わせて17万円。2人育てた女性は年金で手取り月々22万円、ご夫婦合わせて30万円。3人育てた女性は手取り月々32万円、ご夫婦合わせて40万円。頑張って4人育てた女性は将来68歳を過ぎましたら年金で手取り月々40万円、ご夫婦合わせて48万円。5人以上育てた方は月々48万円、ご夫婦合わせて56万円が国から支給される。つまりお子さんを中学卒業まで3人育てた女性にはご夫婦合わせた年金で月々手取り40万円の収入が保証される制度です。ただね、産んだ子供を保育園に預けて自分は仕事をするなんて事は子育てを他人に任せてしまってますのでアウトです。つまり育てた人数には数えません。国は公立の幼稚園から高等学校までを授業料無償化にしてお昼は給食も無償、これは現在の制度と殆ど変わりません。なので結婚していればご主人の月収で何とかやり繰りできます。今は子供にお金を掛けすぎていますが、粗末な衣食住でも母親の愛情があれば子供はちゃんと育ちます。子育て中は子育てに支障のない軽い内職程度は許されますが、子育てをいい加減にして仕事で稼ぐなんて事をするとアウトです。つまり子育てした事にはなりません。昔から【三つ子の魂百まで】と言います通り子供は三歳までは性格が形成される大切な時期です。そんな子供の成育にとって大切な時期に保育園に預けて他人に子育てを委ねるなんて事は許されません。では子育て中全然収入無しでは困りますよね。そこで国として子育て後の女性が社会に出た際時代遅れにならないようにオンラインでビジネス的スキルアップ教育を行います。現在の放送大学の機能を拡張して同じ内容をテレビでも受講出来るようにしたいの。この教育の受講者には国は月々3万円の補助をします。期毎にオンラインでテストを行い合格後ステップアップして全て受講を完了された方には修了証書を発行して子育て後企業が採用する場合有利な資格と位置付けします」
「あのう、今のお話ですと男性の年金は月額8万円って事ですか?」と男性議員の橋本が質問した。
森山は「いいご質問ね。現行の年金制度と大きく変わる所は今まで男性中心だった年金を女性中心に大きく変更します。つまり子育てして、子育て中家事労働で苦労された女性にご苦労に見合った見返りを差し上げる考え方ですわね。将来ご夫婦でゆとりある暮らしをしたい男性の方々は女性の子育てに協力して奥様を大切にして離婚されないように努力なさる事ね。でもね、色々な事情で女性も男性も独り身で過ごされる方々もおられるわね。また子供を育てられなかったり1人しか育てられなかったご夫婦もいらっしゃると思います。そう言う方々で現役時代に蓄財できなかった方々には現行の生活保護制度や低所得者支援制度が適用される事になりますわね。それから、今申し上げた具体的な金額はあくまで現在の物価水準を想定してます。なので将来物価が上下した場合は当然調整する制度も必要です」
「5人以上育てると夫婦合わせて月々56万円と言う案ですが、6人、7人育てても5人育てた場合と変わらないって事ですか?」と別の議員須藤が質問した。
「そうよ。5人以上は何人育てても同じにしたいの。その意味はね、子育て人数に比例してどんどん年金額を増やすと子育てでお金を稼ぐみたいな錯覚を持たれて本来の少子化対策の狙いを逸脱する危険が生まれる可能性があるからだわ」
森山は少し間を開けて、「以上の話で大体の構想はご理解頂けたかしら? でもね、まだ話は1/3位だわね。残りの2/3は財源をどうするか、お若い女性たちが子育てと家事に専念するため労働力の不足をどうカバーするかって話です」
「あのう・・・、看護師さんや幼稚園、小学校の教師をなさっている若い女性の方々の例外措置なんて考えられませんか?」と辻議員が恐る恐る尋ねた。
森山は、「世の中には公務的なお仕事で手薄になると大勢の方々に不便を強いてしまうようなお仕事は沢山あるわね。ですから看護師や教師だけ特例を作ると他の大切な業務に携わっている方々はどうするのか次々と議論が持ち上がります。私はね、どんなお仕事をされていようが子育て中の女性はお仕事に関係なく子供が大きくなるまでは全員子育てと家事に専念して頂きたいの。その方が平等だと思うの」と答えた。