第3章 今までの少子化対策
我が国の少子化が問題視されてから30年間が経過したがその間子育て支援など色々な対策が講じられて来たが未だに少子化に歯止めがかからない。そんな中、衆議院議員森山克子は民民党党首に上り詰め総選挙を戦い抜き女性としては初めての内閣総理大臣に就任、以前から持っていた少子化対策の法制化を実現する。
第1章から第10章までは森山克子が新少子化対策の法制化を実現するまでの過程が綴られており第11章からは新少子化対策法施行後のドラマが展開する。ご期待あれ。
話は全てフィクションです。なので登場人物は全て架空の人です。
会議室を見学してから数日後、森山とワーキンググループのメンバー一同は沢田が勤める警備会社の会議室を借りて第1回の会議を始めた。
「今日お集まり頂いた皆様にはこれからお話しします私の少子化対策の構想を具体化して出来るだけ早い機会に法案を成立させて対策を実行に移す準備をお願いしたいと思います。既にお願いしています通り、検討段階で情報が外部に漏れますと世の中が騒がしくなって騒ぎを抑えるために相当のエネルギーを費やし場合によってはこの作業を中止せざるを得ない状況が予想されます。ですからくれぐれもこの部屋の中の話は外部に漏れないよう皆様細心の注意を払って下さいな。逆に構想がまとまり法案提出の準備が整いました段階になりましたら、テレビ、ラジオなどのメディアは勿論の事SNSや演説会などあらゆる手段を駆使して迅速に構想を世の中に広める戦術で行きたいと思います。それから今から話します内容はメモを取るほど複雑じゃありませんから皆様の頭の中にそっとしまって下さりメモを取らないようにお願いします」
「この中に3名女性が、あっ、私を含めて4名女性がいますが男性の方々は女性に遠慮せず作業を進めて下さいな」森山は一息つくと、続けて話し始めた。
「皆様、エンゼルプラン、新エンゼルプランはご存じよね。エンゼルプランが策定されたのは1994年ですから今から35年位前になります。法律として少子化社会対策基本法が制定されたのが2003年ですからもう27年、大体30年前になります。でもね、その後子供が増えましたか? 減る一方で増えていませんよね。ここにいらっしゃる女性の方々、この法律の内容を概ねご存じだと思いますが、この法律の内容を読んで見て、何が何でも子供を産みたい、子供が欲しいと思いますか?」
メンバーの女性議員は3人共首を横に振った。
「そう、我が国で少子化対策が具体的に検討され始めてから30年以上になりますが、その間まったく前に進んでいないのは子供を産み育てる女性に対してインセンティブがないからなのよ。インセンティブの意味は皆さんお分かりよね。インセンティブとは人が行動を起こしたいと思う動機や励みの事で世間の会社などでは行動に見合った報酬が必要とされているわね。大勢の方々が知恵を絞って練り上げた法律で確かに子育てについては昔に比べて随分環境が良くなっているわね。でもね、大多数の女性がどうしても子供を育てよう、子供が欲しいと思うのはせいぜい一人か二人の子供、それ以上の人数の子供を苦労して育てる方は少ないわね。それが現実です。つまり子供を産み、苦労して育てても女性にはそれに見合った報酬と言いますか対価が得られない現実があるからなのよ」
その時、女性議員の一人、野沢登美子が口を挟んだ。「私まだ34歳なんです。なのでエンゼルスプランが策定された年はまだこの世の中に存在していませんでしたわ」すると「僕はまだ小学生だったな」と男性議員の山田孝吉が口を挟み一同が笑い出した。「こんな永い間我々と言うか先輩の国会議員の方々は何をしてたんだろうな?」と若手の議員溝口誠がつぶやいた。
一同静まったのを見て森山は話を続けた。
「私はね、女性が子供を少なくとも三人以上育てたら老後安心して豊かな暮らしができる事が確約されるような世の中の仕組みが出来ましたら頑張って最低三人は育てようと思うのよ。たとえ経済的に苦しくても子育てに20年間位頑張れば年老いてからは絶対的に安心して暮らして行ける事が確約されたらね、頑張ろうと本気に考える方は相当いらっしゃると思うの。これが子供を産み育てる女性に対するインセンティブよ。どうしたらそんな事が実現出来るのか、それがこれから皆様に考えて頂くテーマです。少子化対策の話を持ち出すと、直ぐに財源をどこから持って来るんだと言う議論になりますわね。子供の数がどんどん少なくなると予想される世の中じゃそんな議論が出るのは当たり前です。なので将来財源の心配がない世の中の仕組みを考える事が一番大切なのよ」
ここに述べられた抜粋した文では今後どうなっていくのか表されていないが、第11章以降新少子対策法にまつわる色々なドラマが展開する。11章以降をお楽しみに。