美味
ロマネ・コンティのコルク栓を抜きラッパ飲みする。
「美味い、やっぱりロマネ・コンティは最高だなぁ。
オイ、ネーチャンあんたも飲めよ。
どうせ彼奴等に食われるんだ、冥土の土産に最高のワインを飲んどけよ」
此処は景観の良い山の上に建つレストランの地下にある、ワインセラー。
美味い料理と、目玉と言って良い世界最高峰のワインの数々が売りのレストラン。
雇い主とその家族がレストランの食事と美味なワインを楽しんでいるのを見ながら、レストランのトイレを借りた運転手の私。
トイレから出てきた私の目に飛び込んで来たのは、レストランの外の駐車場に止められている、私の仕事場といえる高級外車を含む多数の高級車が運転手諸共押し潰されているのと、その高級車を押し潰している巨大なUFO。
それに店内で料理やワインを楽しんでいた雇い主を含む客たちを次々と捕らえ捕らえた人の腕を齧っている、人間より大きな蛇と虫が合体したような化け物共。
ウェイターやウェイトレスなど店の者たちは厨房に逃げ、厨房にいた料理人たちとフライパンなどで化け物に抵抗していた。
私は厨房に逃げ損なったウェイトレスの女の子と一緒に、トイレの近くにあったワインセラーの扉を開け中に逃げ込んだ。
ワインセラーの鍵を掛け扉の内側にワインセラー内の戸棚などでバリケードを築き、中に立て籠もっている。
鍵を掛けバリケードを築いたとはいえ奴等、化け物に見つかるのは時間の問題。
だからしがない雇われ運転手の身では飲むことが出来ない、ロマネ・コンティやシャルツホーフベルガー • リースリング • トロッケンベーレンアウスレーゼなどのワインを冥土の土産にと飲んでいる。
ワインセラーに一緒に逃げ込んだ女の子は、ロマネ・コンティの瓶を差し出す私に首を振りながら返事した。
「わ、私、アルバイトで働いている高校生なので、飲めません」
「別に無理して飲めとは言わんよ、ただあの化け物共に見つかったら食われるんだろうから、最後に飲もうって言ってるだけだから」
そう女の子に言った時、ワインセラーの扉が店内側から押し開けられる。
そして、あの化け物共がワインセラーに入って来た。
最初にワインセラーに入って来た化け物に私は捕らえられ、続いて入って来た2体目の化け物が泣き叫ぶウェイトレスの女の子を捕らえる。
だが、私を捕らえた化け物が2体目の化け物に何ごとか話しかけると、2体目の化け物は返事を返しながらウェイトレスの女の子を放り出した。
「ヤメトケ、ソイツハノンデナイミタイダ、ダカラ、クサミガトレテナイシニクガカタイマンマダロウカラナ」
「ソウダナ、ビミナニクガタクサンテニハイッタカラ、ギンガパトロールノヤツラガクルマエニサッサトコノホシカラオサラバシテ、アジトデヤキニクパーティーヲハジメヨウ」