表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

積読検挙のご案内

作者: ESMA

「積読犯の検挙ですか」

パトカー特有の黒、白に赤の回転灯を載せた車が、薄暗く湿った雪がツラツラと降る夜、一台のパトカーと軽バンが2台連なった車列が大通りを走り抜ける。

後ろからは同じ白黒の軽バンが続く。

「ああ、この先の家で前々からマークされていた家の令状がやっと出てな、今日はその家の検挙だ」

「だいたいどれくらいの本が?」

運転していた女性が隣の男に話しかける。

「一部屋丸々だ」

「そんなにですか!?」

「ああ、今夜も長くなるぞ、奥山くん」

助手席の男は窓に顔を向け黙り込んだ。

車内はどこか暗い雰囲気に包まれた。

車列はとっくに赤色灯を消し、ゆっくりと住宅街の道を走る。

そのまま車列は進み、一つの一軒家に着いた。

「ここですか」

令状を持って玄関ベルを鳴らす。

「はいはーい」

中から、初老の気の良さそうなおじさんが、ほろ酔いのまま出てきた。

「あなたが積読されている本を差し押さえに参りました、こちら令状です、それでは失礼致します」

後ろから箱を持った警官がゾロゾロと部屋に入った。

「は?え?」

酔いが一気に覚めたように笑顔から一転、顔が歪んだ。

「大丈夫です、あなたにはなんの前科も付きませんから」

奥山が男の肩に手を回し慰める。

「あの、本を、差し押さえですか?」

「ええ、法律、ですので..........」

男はよろよろとキッチンに行き、水を一口飲んだ。

「そっちの本も差し押さえだ」

警官は容赦なくダンボールに本を敷き詰めていく。

「あの本は、亡き妻と私が長年集めた大切な本なんです、それを差し押さえって..........」

「それは、お気の毒に.......」

奥山は男の背中を優しく支えた。

男はぶつぶつと何かを呟いた後、壁にあったフライパンを奥山の腹部に叩き込んだ。

「かはっ!?」

いきなりの打撃に奥山は倒れるも、なんとか受け身はとった。

「高野さん!!!」

奥山はすぐそこにいるであろう高野に助けを求めた。

「私の、本を、とられて、たまるものかぁ!!!」

いつの間にか男は包丁を持ち、奥山の腹部に刺し込んだ。

「いっ!!!」

男は包丁を抜こうとするも抜けず、フライパンに持ち直した。

「奥山くん!!!」

奥山の声を聞いた高野が飛んできた。

「何をやっている貴様!!!」

高野は腰から警棒を引き抜き伸ばす。

「貴様ら、殺してやる!!」

男がフライパンで振りかぶったところを、警棒で手の甲を叩いた。

「ぎ!」

あまりの痛さに男はフライパンを落とし、一瞬動きが止まった。

高野はその隙を逃さず、そのまま拘束された。

「奥山くん、大丈夫か!?」

「はい、なんとか.......」

奥山はそのまま救急車で運ばれた。


後日


「奥山くん、大丈夫か?」

「ええ、すっかり良くなりました..........」

病室で横になっていた奥山が答えた。

「本当に、あれで良かったのでしょうか?」

「奥山くん、こんな言葉を聞いたことはないか?『国をとるのも人を殺すも誰も本意じゃないけれど』」

「いえ、聞いたことありません.........」

「詰まるところ、我々は誰も本意じゃないんだ」

「しかし........」

「この後に続く言葉は知っているか?」

「.........」

「『トコトンヤレトンヤレナ』だ」

「!?」

「とことんやらなければいけないんだ、私はこの法律を作った政治家がにくい...........」

高橋はそう切り捨て病室を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ