(13)火の冒険者
それから三日後、俺とアルマはルーチェリアへ向かう馬車に乗り込んだ。北国の夏は、春の終わりを思わせるような肌寒さがある。柔らかな風が馬車の帆を揺らし、心地よい音を奏でていた。
車輪が軋むリズムに合わせて揺れる馬車の中で、俺の頭には一つの言葉が何度も浮かんでは消えていた。
「この技術は、お前たちの国の研究だ。」
ダスクが吐き捨てたあの言葉が、胸の奥に深く刺さったままだ。アイツは鉱石と腕を融合させていた。そしてヴァルドの野郎は全身が赤黒い異形と化していた。そんなものを生み出す技術が、本当に俺たちの国から生まれたのか?――王妃が率いる王立魔法研究所が、いったい何を企んでいるのか?
もし、あいつらの言葉がただのハッタリや嘘ではなく、真実を語っていたなら――。
俺は拳を握り締める。たとえそれが真実だろうが、偉そうに上に立ってる奴らに好き勝手させるつもりはない。王妃だろうが、王族だろうが、俺は全力で殴り飛ばしに行く。
俺は王家に連なる七大貴族、その三男、ライナス・アーデントだ。けれど、貴族という肩書だけで威張り散らすような生き方は俺には似合わない。曲がったことが大嫌いだし、目上の人間に媚びへつらうなんて、まっぴらご免だ。
最初から何もかもを持っているだけで、その上に安住するような奴ら――そんな生き方にだけはなりたくなかった。だから俺は、拳ひとつを頼りに冒険者の道を選んだんだ。不確かな明日を自分の力で切り開き、手に入れたものだけが本物だ。それが、俺の信念だ。
馬車は北国の静寂を切り裂きながら進んでいく。窓の外には、遠ざかる山々の景色が広がっている。その風景に、ほんの少し寂しさを感じながらも、それ以上に次に向かう世界への期待が胸を熱くさせた。
さぁ、次の冒険はどんなものだ?
そう考えるだけで、何もかもが楽しみで仕方がない。
隣のアルマは窓辺に座り、ぼんやりと遠くを見ている。彼女の金髪が風に揺れ、柔らかい光を反射して、どこか穏やかな空気を纏っていた。馬車の中で、そんな彼女の横顔を眺めながら、俺は次の物語に思いを馳せていた。
──
終章、『地を平定せしもの』。これで幕引きだ。いや、『魔術学院の七鉱石』、その物語全部が、これでおしまいってわけだ。どうだ?俺の初めての冒険。ワクワクしただろ?…え?つまんなかった?そりゃまぁ、初めての冒険だからな。これが一番面白いなんて、最初から期待する方が間違いだぜ。
でもな、ここで俺の物語が終わるわけじゃねえ。火の冒険者、ライナス・アーデントの名前は、これからもどっかで耳にするだろうよ。
その時は、また付き合ってくれるか?俺の次の冒険が、どんな結末を迎えるのか──それを最後まで見届けてくれたら嬉しいぜ。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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