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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第四章 魔王領アルヘイム編
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85:喧嘩が合法の町



 王都三日目、宿の部屋にて。

 グレンが何かとんでもない事しようとしてるので、クレナに急ぎで城に行ってみる様訴えた。


「ああ、それならもう済ませた」


「えぇ! いつの間に!?」


 が、どうやらもう行ってたらしい。


「グレンが面倒起こしそうだったからな。昨日マリンと門まで行って取り継ぎまでお願いしてみたよ。ま、あの様子じゃ期待できないな」


 まさに門前払いと言った所か。


「紹介状も何もなく会おうなど無理があるからな。せめて魔王政府との繋がりができるか、俺達の名が直接魔王に届けばいいんだが」


「そうとなりゃ、話は早いな」


「グレン!?」


 と、狭い窓から入ってくるグレン。

 いや、普通に入ってよ。


「この町の派閥争いが激化してるらしい。今が好機だ。警察組織は魔王政府直轄だろ? だったら町で目立てば貴族階級の耳には入るんじゃないか?」


 グレンはそう壁に背を預けて続く。


「いや、届く。この町を占めたとなれば確実に政府は動く。名が轟けばいいんだろ? 情報を流すのは得意だぜ?」


 彼は腕を組んで確認する様クレナを見た。


「ああ、現状人脈も何も無い以上は、な」


「え? え? く、クレナってばこの町占めるのに賛成?」


 僕は戸惑いを隠せずそう訊いた。


「ま、来たからには楽しまないとな。最近体が動かせなくて溜まってた所だ」


 クレナはそう言って薄く笑った。

 え、クレナってばちょっと戦闘狂入ってる……?









「放浪組の奴らは一部の地区を自分の島だと謳い、頼んでもない守護を売りに無理矢理ニコニコスタンプを押させているのです。そんなのは善行とは言わない。そもそも政府が機能してるのに自警団気取りなど時代遅れです!」


 ゴウルの説明を聞きながら僕らは街を歩いていた。

 帯剣した状態での喧嘩は本来禁止な様で、今は三人共得物は宿に置いて来ていた。

 相棒が居ないのは正直心許無いな。


「にしても、本当に問題は起こらないんですか? 堂々と喧嘩しちゃって」


 僕は不安からゴウルへと問う。


「確かに、あの条例は本来一対一の決闘を想定した物で集団での争いを表立って認めてはいないでしょうが……まぁ、そこは匙加減でしょう。故に代表となる者が戦闘の意を示した場合、自動的に連なる者も意を示した事になるのが暗黙の了解となっています」


 え? って事はそれ居るだけで巻き込まれない?


「で? 喧嘩するのは良いが先ずどこ潰すんだ?」


「いえ、一先ずは放浪組の幹部と話し合いの予定がありますので、今は指定された場所に向かっています。我らとて話し合いで済むならそれ良いのです」


 グレンの言葉にゴウルは答えた。


「た、大変だー!」


 と、何処からともなく牛頭族ゴズのグループの一人が焦った様子でやって来た。


「ゴウルさ……の兄貴! 歓楽街の方で放浪組と衝突寸前らしい! すぐに牛頭族ゴズの代表を寄越せって……!」


「な、何!?」


 その言葉にゴウルも驚愕する。


「行ってこい。こっちはどうにかするよ」


「はい!」


 グレンの言葉に走り去っていく二人。

 見送って僕ら三人は聞いていた道を進んでいると、それを阻む様にぞろぞろと出てくる集団があった。


「ククッ、同盟組のやつらが愚直で不用心なのは頭領が変わっても同じらしいなぁ」


 そう言うのは山羊の様な面と角を持った大男であった。

 恐らく混血だ。魔族は他種族の血が混ざりやすいらしく、はっきりとした種が決まらない場合もあるらしい。

 他にも多様な種族が集まっている。人間の姿に似ているが赤茶色の肌に若干唇からはみ出した牙。額には小さな角が左右に生えている。小鬼族ゴブリンが上位の種族に成った姿、中鬼族ボブ・ゴブリンだろう。

 魔物と同じ様に魔族も上位の種族に成る『進化』をするらしい。

 レミリアなど天使達は瞳や髪が変わる程度だったが、魔族のそれは派手な様だ。

 他にも馬の頭をした馬頭族メズ。さらに深い緑の鱗に覆われ、蜥蜴の様な見た目をした者も居る。きっと蜥蜴族リザードマンだ。

 十人近い数の魔族達が僕らを囲っていた。


「おいおい、こりゃぁ……嵌められたらしい」


 大凡友好的でない登場の仕方にグレンがそうボヤく。


「今こそ我らの軍門に下がるなら」


「『アルヘインに誓って』」


 山羊面の男の言葉を遮ってグレンが言う。


「チッ。立場を分かっていない様だな。『誓い』だ」


 くして安易に火蓋は切られた。

 山羊面の男の言葉を合図に一斉に魔族達が動き出す。


「うえぇ!? ちょちょちょっ! ぶっ!?」


 急速に動き出した状況について行けず、僕は目の前まで来た蜥蜴族リザードマンの男の拳をまともに受けた。

 頬に走る衝撃。


「く、くそッ! やったなぁっ!?」


 僕は逆上して蜥蜴族リザードマンの鳩尾目掛けて拳を振り上げた。

 ──くぅ、痛い……!

 硬い鱗に打ち付けて手が痛くなったが、蜥蜴族リザードマンも多少は怯んだ様だ。

 僕は両手を構えて警戒する。


 実戦は少ないけど、クレナに鍛えられてる分がある。

 山脈の旅で据わった所もあるし、喧嘩程度躊躇も容赦もしない。

 そう思った矢先、後ろから飛び蹴りでもされた様に衝撃が走って僕は転ぶ。

 た、多勢に無勢過ぎる!


「ふんっ!」


 と、クレナが今しがた僕を蹴っただろう、中鬼族ボブ・ゴブリンの男を殴って気絶させる。

 クレナに注意が向いてる隙に僕は起き上がって加勢した。


「おい! 足は禁止じゃなかったのかよ!?」


「ハッハッ! 負け犬に口無しだ!」


 憤るグレンに嗤う山羊面の男。

 グレンの相手はそいつらしかった。

 僕は数人に囲まれて耐えるだけでも手一杯だ。


「くっ。意外とタフな奴だ」


 そう誰かがボヤく。僕に注意が向いてる間に余裕を作ったクレナが時折り加勢して一人、二人と気絶させていく。

 次第に余裕ができてまともに拳を振るえる様になった。

 クレナの教え通り顎を狙う。

 いつしか僕を相手取るのは馬頭族メズの男一人となった。互いに荒い息、汗を散らして殴り合う。

 そういや馬は人以外で汗をかく数少ない動物だったっけと思っていた頃、グレンの突き出した拳が顎に入って馬頭族メズの男は気絶した。

 周囲には倒れ伏す魔族達。惨状のできあがりである。


「たかが喧嘩に闘気を使うとは……俺もまだまだだ」


 と、余裕そうに立つクレナが呟く。


「何だ? お前意外と動けんじゃねーか」


「ま、まぁ。僕の体は僕だけの物じゃないって思ってるから」


 グレンに言われて僕は応えた。

 あんまり怪我するとじーと碧眼で見られちゃうからな。


「な、何なんだお前らは! 人族じゃないのか!? それもその姿は成体にもなっていない筈! 成長も遅いお前ら人間がこんな……!」


 と、翻った山羊面の男がそう喚く。


「なっ!」


 ちょうどゴウルも戻って来て驚愕していた。


「情報がデマだと気付いて慌てて戻ってみれば、こんな」


 そう愕然と呟いていた。

 なんか、気苦労が絶えない様で同情してしまう。


「今に見ているが良い。どれだけ束になろうが、俺たちのボスには誰も敵わねぇ」


 そう山羊面の男は忌々しげに言っていた。


「な、なんだ貴様らは! ほら、散れ!散れ! 神聖な教会の前で抗争などしおって野蛮人共が!」


 と、その時、喧嘩のあった目の前の教会の様な建物から出てそう叫ぶ人物が居た。

 祭服越しにも伝わる体格の良さ。初老と言った具合に刻まれた顔の皺。髪は短髪の白色で瞳は赤色である。

 叱咤する口からは人のそれより一際大きな犬歯が見えた。


「なんだあのジジィ」


「シズン教司祭です。実質的灯火組頭領と見ていいでしょう」


 グレンにゴウルが説明した。


「ん? 人族?」


 と、その様子に僕ら三人にそれぞれ目を向ける司祭。


「ほう」


 そして僕に視線を止めると、上から下まで品定めするかの様な目を向けた。

 なんか嫌な視線。


「貴様らの抗争が激化してる様だな。くだらんスタンプ集めに躍起になりよって」


「何だと?」


「事実だろうに。本当に善行を積みたいなら寄付か入信でもしてきたらどうだ?」


 そう司祭とゴウルはやり取りしていた。

 まぁ、確かに一番褒められるべきは寄付をした本人だろうな。

 結構チグハグな政策だな。あ、だから文書で済ませてるのか。


「今回の事は不問にしといてやる。さっさと散れ」


 そう言って司祭は背を向けた。

 実際目の前でこんな喧嘩されちゃいい迷惑だろうな。

 当たりは悪いがその態度も当然の様に思えた。









「さっきの奴は本当にあれで司祭なのか? 結構な殺気だったぞ」


 喧嘩のあった場も離れて歩いてる中、グレンがそう言う。


「それに、僅かだが染み付いた血の匂いを感じたな」


 と、それに続くクレナ。


「シズン教の司祭は殆どが屍喰族グールですからな。格安での葬儀と墓地の提供の代わりに遺体の肉を喰らうのです。これが所謂『食葬しょくそう』。我らだって思う所があるのです。人族の方々には中々受け入れ難い文化でしょうな」


 それにゴウルは説明した。

 本能と文明社会の折り合いを付けているのか。

 って言うか骸喰いってマジか。リシアから聞いてはいたが、なかなか衝撃だな。


「灯火組は元々シズン教の自警団だったのですが、いつかしか布教活動を肩代わりする見返りとして資金援助を受けるグレーな関係へとなったのです。更に孤児院を併設するシンズ教会にはニコニコスタンプを押す権利が与えらますが、それの全てを灯火組に流すのです」


 と、序でとばかりに灯火組についても説明するゴウル。


「そして資金援助を受けた灯火組はその金を寄付し、ニコニコスタンプを押す権利を得てそれを仲間内で回すのです。それだけ見れば寄付をしてる以上良い行いなのですが、寄付によりお金が集まるのは孤児院を運営するシズン教となります。更には寄付金控除の併用と資金援助の寄付を繰り返し、宛ら永久機関の様にお金とスタンプが回り続けているのです」


「永久機関は存在しない。別の金の流れがある筈だ」


「それが布教活動で得たお金なんじゃない?」


「いえ、シズン教自体に無理な献金活動はしていない筈です」


 グレンの言葉に考えを言ってみたが、ゴウルに否定される。


「ま、証拠なんか残しちゃいないだろうな。やるなら現行逮捕だ」


 や、やるならって……灯火組も失脚させるつもりか?


「灯火組は言わばシズン教の汚れ役。最悪殺しも辞さないという噂もある集団です」


「えぇ!? もう喧嘩とかじゃないじゃん!」


 ゴウルの言葉に驚愕する。

 教団傘下のマフィアとかタチ悪過ぎ!


「本当に入信でもしてきたらどうだ? 尻尾が掴めるかもしれん」


「いえ、今申し上げた様にポイントの集め方自体はルールの穴を突いた不正とは言えぬ様な物ですので。それに、正直入信したくない理由は他にあります。シズン教に入信した者は死後、その身を教団に捧げる事となるのです」


「え、えっと……つまり?」


 大方予想はできたが、否定欲しくて僕は訊いた。


「煮るなり焼くなり、そして喰うなりと言った所ですな」


 うわぁ、マジかよ。

 信者食うとかとんでもない宗教だな。

 いやまぁ、生前の扱いがまともなら全然マシなのか?

 そもそもこれは屍喰族グールの人達が彼らなりに文明社会で生きる術を作った結果な訳だし、これを否定する事は差別的な事に繋がるかもしれない。


「でもそれじゃ入信する人なんて居ないんじゃないですか?」


「その身を生きる者の糧とする事で最大の善行、徳を積む事となる。取り分け屍喰族グールにはその様な不思議な力がある。その様な教えを説いています」


「なんじゃそりゃ。都合よ」


「宗教とはそんな物です」


 つい零した言葉にゴウルは応じた。


「そもそも彼らは教団とは名ばかりで信仰の対象すらないのです。食と自然の恵みに感謝する、言わば友愛団体です」


 なるほど。

 まぁ、何となくの全容は掴めたんじゃなかろうか。









 その日、宿の部屋にて。

 じーーー、と僕を見つめる碧眼があった。


「え、えっと……どうも」


 僕は堪らずその双眸を持つリリスへと、畏まった態度で応じた。

 と、リリスの半目も幾らか緩和する。


「ま、対応はした様なので良しとします」


「は、はい」


 どうやら許された様だ。


「何やら派手な事をしてる様ですね。私達抜きで」


「い、いや。女の子に殴り合いの喧嘩なんてさせられないよ」


「ふむ。まぁ、私も痛いのは嫌ですが」


 ちくりと刺す様な言葉に言い繕うと、リリスは一つ頷いてみせ。


「正直、素手のアズサくらいなら勝てる気がします」


「うっ」


 続いた言葉に唸った。


「で、でもダメだからね!? 今結構街危ないみたいだから、夜とか出歩いちゃダメだよ!?」


「常に夜なのですが」


「じゃあずっとダメ!」


「鬼ですか」


 リリスがまた半目になっちゃった。









 王都4日目。

 どうやら同盟組と放浪組の激突があった事は街でも噂になってる様だった。

 小競り合いは前からあったらしいが、昨日のは割と正面切っての喧嘩だった。

 少々街全体が緊張状態にあるらしい。

 まぁ、グレンが売名の為に煽ってるのもありそうだが。


「今日は歓楽街を見回りましょう」


「やっぱ歓楽街は抗争が激しいのか?」


「ええ。娼館などの風営法に則る店は納税率が高く、その分ニコニコスタンプを押す権利が与えられています。必然的に歓楽街は激戦区となっているのです」


「なるほどな」


 ゴウルの説明にグレンが納得する。

 その後クレナ、グレン、ゴウルの四人で歓楽街へと向かいながら放浪組の詳しい話を聞いた。


 放浪組の首領は狼男族ライカンスロープの男で、腕っ節一つでずっと頭領の座に居続けているらしい。

 それも噂では上位の存在に成った個体であると。

 単純に自力が違いすぎて一対一タイマンなど論外。戦う事があれば少なくとも、組全体の二割はく必要があると言われている程の様だ。


 と、説明を聞いていた時、こちらにやって来る中鬼族ボブ・ゴブリンの集団があった。

 先頭に立つ男は僕らを一瞥した後、グレンに視線を止めて。


「おう。あんたが牛頭族ゴズ豚頭族オークの所を纏め」


「『アルヘインに誓って』」


「グレンさん!」


 言葉半ばで誓いを立てたグレンにゴウルが叫ぶ。


「その方も同盟を組んでる方々です。……なんかデジャヴ」


 説明してゴウルはぼそりと呟いていた。

 このままグレンに振り回されてちゃ、喧嘩の前に過労でぶっ倒れそうだ。


「お、おう。威勢がいいです、ね。よろしくお願いします」


 最初の尊大な態度は何処へやら、中鬼族ボブ・ゴブリンの男はグレンへ握手を求めた。


「何だ。仲間なら初めからそう言えよ。あんたらも俺の軍門に降るって事でいいんだな?」


「え? い、いやぁ、あ……はい」


 手を握られると共にグレンに丸め込まれると言うか、押し込まれると言った感じで頷く中鬼族ボブ・ゴブリンの男。

 だが僕は見逃さなかった。中鬼族ボブ・ゴブリンの男が渋った時グレンの手が力んだのを。


「おお。同盟組三つの主戦力が一人の元に降るとは。これで実質的同盟組首領です。グレンさん」


 ゴウルは気づいていない様で、素直に受け取っていた。


「だがゴウル殿、喜ぶのは早い。昨日の衝突もあってか、続々と放浪組の奴らが歓楽街に集まってると聞く」


「ほう。であれば丁度いい。ちまちま潰すのは性に合わなかった所だ」


 と、中鬼族ボブ・ゴブリンの男の言葉にグレンはそう言っていた。









 それから更に10日経っての、王都14日目。


 グレンは10日の間に他の同盟組系列の弱小グループを纏め上げ、今はそれらを共らって歓楽街へと赴いていた。

 更に主戦力である牛頭族ゴズ豚頭族オーク中鬼族ボブ・ゴブリンのグループも後ろに付いてきている。

 総勢百人はくだらない大所帯である。


「いや、でも、たかが話し合いでしょう? ほら、首領が正式にグレンと決まった訳だからそれの……何かあるんじゃない?」


 僕は先頭を行くグレンへとそう言った。

 放浪組首領からの呼び出しがあったのだが、グレンは態々大群引き連れて向かっていた。


「ふん。向こうはそうは思っちゃいないみたいだぞ?」


 言いながら角を曲がり、グレンは顎で前を指した。

 僕はその光景に目を見開く。

 繁華街の中央通り。そのど真ん中を陣取ってこちらを向く集団があったのだ。

 その数はこちらの倍近い。

 僕らもそれに向かい合う形で近づいて行く。

 集団には多種多様な魔族が居た。

 集団の中央先頭に立つのは獣の様な姿をした男だ。

 灰色の毛並み、口角を上げて覗いた並ぶ牙。腕を組んで仁王立ちしている。

 恐らくは狼男族ライカンスロープ

 奴が首領だろう。


「おうおう。先日はよろしくやってくれたみたいじゃないか。愚直なお前らがまさか騙し討ちの様な真似してくれるとは。だがいまいち頭が足りなかったらしいな」


 と、その男が大仰に言った。

 その距離十メートルと言った所か。


「はぁ? 騙し討ちはそっちだろ?」


「ほざけ」


 グレンの言葉を一蹴する男。


「貴様が同盟組を纏めた若造か」


 そうグレンを鋭い眼孔で見る。


「お前らは勘違いしてる。今までのは俺にとって遊びか運動の様なものだ。やろうと思えば俺一人でお前ら同盟組を潰す事だってできる」


「あっそ。『アルヘインに誓って』」


「ちょー!?」


 早速おっ始めようとするグレンを慌てて遮る。

 恐る恐る男の方を窺うと、事も無げにグレンを見返していた。


「今更一人捻ってもつまらん。この際組全体の権限を持って誓いを立てようではないか。首領が決まった今ならできよう?」


 なっ、組全体!?

 つまりは完全なる前面交戦。

 これを機に一網打尽にするつもりだ。


「いいだろう」


「いや、よくなくね!?」


 同じく事も無げに頷くグレンへ声を荒げた。


「端っからここに集まってるのはその覚悟がある奴らだろう」


 そう後ろを振り返るグレン。

 視線の先には目の前を睥睨する魔族達。グレンの言葉に軽く頷く者も居た。

 ここ十日のグレンの影響で脳筋に拍車が掛かってるのかもしれない。


「それに、売名にはもってこいだな」


 と、今度は僕に聞こえるくらいの声でそう言った。

 ま、まぁ、確かにそれが目標な訳だが。


「組の代表として、全権を賭けて誓おう」


 そうグレンは宣言し、両者手の平を向かい合わせて言った。


「「『アルヘインに誓って』」」



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