プロローグ:回顧録
白い四方形の部屋に椅子とその傍の丸テーブルが一つ。
一辺五メートル程度のその部屋には光差す窓の他に扉があるのみで飾りっ気は無い。
そんな部屋の椅子に一人座る少女が居た。
艶やかな青髪を顎の位置より下がる程度で揃え、肌は絹の様に白く滑らか。
祭服の見た目と着物の特徴を合わせた様な服装をし、それは白を基調とて所々少女と同じ髪色や瞳の色彩の刺繍が入っていた。
清麗さ漂うその居住まいの少女の視線は手元の本へと落とされていた。
以下、その少女の開く一面の内容を記述したものである。
『紅の魔王。
彼の魔王軍の幹部であり、軍の中枢を担う懐刀的立ち位置であったとされる。
かつては『鮮血』や『鮮血の覇王』などの名で呼ばれ恐れられた大将軍であった。
その二つ名の由来は彼の者の種族とある戦いから来ているとされる。
彼の者の種族は吸血鬼であった。巨人族、竜人族に並ぶ、繁栄せし単一種族に於ける最も強い三種とされ、俗に三種族とも呼ばれるそれらの一つである。
まさに魔族の代表とも言える様な種族であった。
その者に『鮮血』の名が付いたとされるある戦い。『献血の宴』や『鮮血なる晩餐会(4080年)』などの名で呼ばれる魔王軍(旧氷の魔王軍)対人類軍(マリア教団による聖騎士団及びその傘下の旧パルテノン騎士団。各国の軍勢及び義勇兵)の戦いであった。
彼の者は只管に血飛沫を上げる戦場にて一人でその役を熟し、吸血鬼としての本文を全うするかの様に地を血で染めた。
氷の時代とされる年数は正確には聖暦4044年3月から聖歴4160年4月の116年間である。
聖歴4044年3月21日、パルゼノン王国(旧氷の魔王により統治されし地)からリーゼア王国への宣戦布告を開戦とし、後聖歴4123年5月の『ペルシヘンの戦い』を最後に終戦したとされている。
その後聖歴4160年4月1日、マリア教団212代教皇による解放宣言により、氷の時代は終わりとされている。
聖歴4116年8月13日、CCC(第一天界中央情報局)より正式に氷の魔王を九代目に認定。
また、冥府部設立に関する法の』
少女は本を閉じた。




