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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第三章 竜凱山脈編
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57:新たな仲間



 リシアと別れ、適当な人に御者の技術を学んだ後。

 日も沈み灯りが道を照らし始めた頃に。


「部屋二つ空いてますか?」


 僕はとある宿にて受付のお婆ちゃんへと言った。


「二人部屋と一人部屋が一つずつ空いてるよ。それでいいかい?」


「えっと、それで」


 代金を支払って鍵を二つ受け取る。


「アズサ、今夜は一緒の部屋がいいです」


「ふえ? い、いいけど……どうかした?」


 と、リリスに言われて疑問のまま問う。


「いえ、特には」


 そういつもの無表情ではぐらかしたリリス。

 何故か代わりの様にマリンが視線を泳がせていた。

 そんな二人を連れて二階へ上がり、部屋の前で止まる。


「ご、ごゆっくり〜」


「あ、うん。おやすみ、マリン」


「おやすみなさい」


 下手な会釈をして、マリンはそそくさと離れていった。

 持っていた鍵で解錠し、リリスに続いて部屋へと入る。

 窓から微かな街の灯り差す部屋の中をリリスが進む。

 奥へと進むリリスを眺めながら後ろ手に扉を閉めた。


 さて、理由もなく呼び出した訳ではないんだろうけど。

 と、リリスが奥側のベットの奥に腰掛け、ぽんぽんと隣を叩くと視線を寄越した。


「失礼」


 僕は人一人分開けて隣に座った。


「アズサ。最近どうですか?」


 と、リリスがそんな象徴的な事を問う。


「どうって……普通だよ?」


 僕は向けられた碧眼を見返して応じた。


「きっと、普通ではありませんし。その場合は少し、寂しいです」


 と、視線を下げるリリス。


「アズサは無闇に人を傷つけたり、脅したりしない人だと思ってたんですが……違かったという事ですか?」


 そう若干の上目で問う。

 心当たりのあるそれに僕は少し気が落ちた。


「ご、ごめん」


「別に謝って欲しい訳ではありません。ただ、一度話さなければと、そう思っただけで」


 視線を合わせられずに謝った僕に、リリスは変わらない様子で言った。

 会話が途切れた、微妙な間。

 その間、リリスが真っ直ぐにこちらへ視線を寄越しているのを感じていた。


「アズサ、自棄になってるんですか?」


 と、不意にそう問う。


「そ、そうだったかも」


 僕は心の奥底を見透かされた気になった。


「ごめん。僕の悪い癖でさ」


 僕は俯きながら答える。

 それをリリスは眺め。


「あの時、リシアが止めなければ、私が代わりに貴方を叩くとろこでしたよ」


 そう、昼間の本音を語る。


「ちなみにグーです」


 冗談か、付け加えるリリス。


「それは……痛そうだね」


「私もきっと痛いので、その時は一緒に反省しましょう」


 リリスはこちらを見てそう控えめに微笑んだ。


「片方の膝くらいなら貸してあげてもいいと思っています。今夜だけですが」


 と、窓の方を真っ直ぐに向いて言う。

 両手を大腿の上に置いて、背筋を伸ばした綺麗な姿勢で。


「ありがとう。いつも。本当に感謝してるよ」


 僕は一番にそんな言葉が出た。


「でも、大丈夫! お陰で少し気持ちが晴れたよ! 心配掛けてごめんね?」


 僕は立ち上がると元気良く言う。


「やっぱ相談って大事だね! リリスもいつでも言っていいからね? 悩みでも我が儘でも」


 そう顔を覗いて言うと、リリスも微笑み返した。


「ごめんね。特別、誤魔化そうってつもりじゃなかったんだけど……」


「いえ、少し私も、ずるい訊き方をしました」


 そうリリスも視線を落として言った。


「ふふ。意外と悪い子ちゃんだねぇ。リリスみたいな娘だったら、僕もうっかり付いて行ったかも?」


 落ち込んだ雰囲気を払拭するべく、そう冗談っぽく返した。


「それはないでしょう。マリンを置いていくとは思えません」


「そうだね」


 と、こちらを真っ直ぐ見上げて言うリリスだった。


「リリスの方は? 大丈夫?」


 僕はちょうど二人っきりなのもあって、この際だと問うてみる。

 視線を向け続けると何の事か分からない様にリリスは視線を寄越した。


「いやね。最近、リリスが考え事してる様に見えてさ」

 

 僕が抱いていた思いを言うと、リリスは思い当たる節があった様に微かだが反応する。


「どうかしたの?」


「いえ……ふと、気になりまして」


 リリスは視線を下げてぽつりと零す。


「何が?」


 僕が更に問うと。


「アズサは、リシアの事について何か聞いていますか?」


「リシアについて……? う〜ん、特には」


 そう見上げて問うリリス。


「あ、もしかして、また勝手に話進めちゃったの怒ってる? それは……本当にごめん。もちろんリリスが嫌だって言うなら、リシアには申し訳ないけど話は無かった事にするけど」


「いえ、そう言う訳ではありません」


 と、リリスは思慮する様に視線を逸らした。


「少し、疑問に思う事ができただけです。悩みと言う程の事では無いので、お気にならさらず」


 そう虚空へと視線を定める。

 その様子は何か、思い出そうとしてる様に見えた。


「そっか。まぁ、リリスの事だからちゃんと自分の事も管理できてると思うけど、やっぱ悩みはいつだって相談していいからね? 話すだけで楽になる事だってあるだろうし。僕も力になりたいし」


「ええ。もちろんそのつもりです」


 リリスはこちらを見上げて軽く微笑んだ。

 僕の言葉に配慮した形ではあるだろうが、無理した様子は無かった。

 リリスが特別話す事でないと判断したのならそれを一先ず信じよう。


「適当に体拭いてくるよ」


 積もる考え事もありそうだったので、ちょうど話が一段落したところで僕は身を清めに行くべく背を向けた。

 流れでポケットに仕舞っていた鍵の()()を分かり易い物入れの上に置き、扉を開ける。


「あひゃっ!」


 と、途中で目の前に居たらしき少女の頭と打つかり、可愛らしい悲鳴が響いた。


「え? マリン? ご、ごめん。どうかした?」


 そこに居たのはマリンだった。


「い、いえ! あ、あの。鍵、貰ってないな〜、なんて」


「鍵……? あ、ごめん! 渡し忘れてたね」


「い、いえ」


 僕は一緒にポケットへ入れてしまっていたらしいマリンの部屋の鍵を慌てて出した。

 控えめに微笑み差し出した小さな両手にそっと鍵を置く。


「え? じゃあずっとここに居たの?」


「ち、ち、違いますよ! ……違いますよ!」


「う、うん」


 勢いに気圧されつつ頷く。


「も、もう寝ます。寝ますから」


「は、はい。おやすみ」


 わざわざ念を押す様に宣言したマリンへ戸惑いつつも応じる。

 なんだかいつもよりしっかりして見える足取りで去って行くマリンだった。


「あ、頭ごめんね」


 と、そう言うとマリンは振り返ってぺこりとお辞儀した。











「遅いわよ! 待ちくたびれちゃったわ!」


「ごめん、ごめん」


 翌日。

 次の町の組合ギルドにて、両手を腰に憤るリシアへ僕は苦笑い気味に謝った。

 後ろには当然リリスと完全装備のマリンも付いてきている。

 昼間の日の光差す組合ギルドのバーカウンターに二人は居た。


「話は大体聞いている。大変だったみたいだな」


 と、クレナが座ったまま僕へと労う。


「まーね」


 僕はいろいろと含めた澄まし顔で応じた。


「ま! そう言う事だから、あなたからは説明しなくも大丈夫よ!」


「う、うん」


 リシアに勢い良く言われて頷く。


「無事来れたって事は、ちゃんと乗れたって事よね?」


「まぁ、一応は」


 馬車の事を指してだろうリシアの問いには歯切り悪くも肯定する。


「やるじゃない! じゃあ早速乗り行きましょう!」


「え? ああ、うん。送ってくれるって話だっけ」


 僕は昨日の話を思い出す。

 まぁ、送ってくれるっていうか、馬車を貸してくれるって事だろう。


「ああ、そういや言ってなかったわね」


 と、リシアは呟き、踏み出していた体制からこちらへと向き直ると。


「決めたわ! 私も付いていく! 私も仲間に加えて!」


 そう堂々と胸を張って言った。


「い、いいの? 自分から誘っといて何なんだけど。結構厳しい旅路になると思うよ?」


 僕は正直正気を疑う思いで訊いた。


「まぁ、私もそれなりに考えたわ」


 それにリシアは腕を組んで言う。


「でもね、きっとこれも何かの縁なのよ。名も知らぬ私の主神が授けてくださった、使命か試練。それか定めってやつね」


 そう瞳を閉じるとうんうんと語るリシア。


「きっとね」


 そして白い歯を見せて笑った。


「あなたの言ってる事、本当なんでしょう?」


 と、リシアはマリンへと向いて問う。

 マリンはマスクの上の瞳で見上げ、こくりと頷いた。

 それに微笑みリシアは優しくマリンへと抱き付く。

 腕の中で目を見開くマリン。


「私もまた、クレナからいろいろ聞いたわ。あなたの呪いを、解いてあげたいと思った」


 そう、抱いたまま言うリシア。

 フードの上からぽんと手を置く。


「きっと、それが私に与えられた試練なのよ」


 半ば自分に言い聞かせる様に呟き、リシアはマリンから離れた。


「以上が、私があなた達に協力する理由よ」


 と、リシアはこちらを向いて言う。


「ありがとう。歓迎するよ」


「ふふんっ。じゃあ、さっそく次の町に行くわよ!」


 リシアは機嫌良さげに鼻を鳴らすと、気分を上げる様に言い歩を進めた。

 これで正式にリシアが仲間に加わった。

 六人目の仲間だ。


「うん、行こっか。特に用事もないよね?」


「もちろん大丈夫だが……」


 と、クレナは僕の視線に応じながら椅子を降り、少し顔を寄せると。


「アズサ。次の街で、いよいよ決めなきゃだぞ?」


 透き通る様な空色の碧眼を向けて、そう確認する様に言った。



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