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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第二章 ロビア騒動編
43/172

39:不安な事の九割は起こらないらしい



「くっそ、放送がないから忘れてた!」


 街中を駆け走る中、グレンが悔しそうに悪態吐いた。

 グレンの言う通り今から向かう場所に関する放送は無かった。

 もしクレナの受けた依頼の場所で魔物が召喚されてると言うのなら、きっとあそこにも何か居るんだろう。

 おじいちゃんが店番をしていたあの店の付近にも。


「多分、俺らしか気づいてねぇ。援軍は期待できなそうだな」


 と、グレンが忌々しそうに呟いた。

 魔物がどの程度居るか分からないが、なかなかに不味い状況だ。


「ひ、人呼んだ方がいいんじゃない!?」


「もしかしたら今も襲われてるかもしれねぇだろ! それを早く助けたい!」


「じ、じゃあ僕だけでも呼んでこようか!? 僕居ても差なくない!?」


「お前道分かるのか!?」


 僕はつい押し黙る。

 無論、分からないからだ。


 ええぇぇい! もう行くしかない!









「そっちは?」


「い、いや。こっちも」


 裏路地の一角にて、そうグレンとやり取りする。

 ここら辺は破壊もされておらず、人気は無いが一応注意喚起もしながら魔物を探したが、その魔物も見つかっていない。

 まるでここは手つかずの様である。

 ともかく二人で裏路地を走り回る。


「あ! クレナ!」


 と、見慣れた金髪の少年の後ろ姿を見つける。

 そうだよ! クレナだって場所を理解できた者の一人なんだ! そして彼ならそれに至る!


「魔物見なかった!?」


「いや、隈なく探したつもりだが、居ないみたいだぞ?」


「そ、そっか。いや、良い事なんだけど」


 非常に話が早いクレナである。

 無駄な部分が殆どなく、それだけで話は落ち着いた。

 あ、そうだ!

 クレナと一緒に街を出ないと!


「少し、訊きたい事があったんだが」


「あ?」


 と、僕が言うより先に、クレナがグレンに話し掛ける。


「君は一体何を知ってるんだ?」


「何をって言われても、別に何もないんだがな。そこのガキにでも聞けよ」


 と、りに僕を顎で指すグレン。


「え、えーとね。今回の魔物が召喚されてる場所が、実はクレナが依頼を受けた場所と被ってたんだよ!」


 衝撃の事実! と僕はクレナに話した。


「それは察した。じゃなきゃここに来ない」


「そ、そっか」


 さっきその帰結に至ったばっかだった。


「さすがに察したのは途中だがな。だがもしこの騒動に俺が噛んでいるなら、一人で行動した方が巻き込まないと思ってな。さっき逃した少年も、もし俺を狙ってくるなら返り討ちにしたいと思って」


 か、返り討ち。

 あ、ああ。マイペースかと思ったらそういう事か。

 って、それってまた危険な立ち回り一人で熟そうとしてたって事じゃん。クレナにはマリンも居るのに!

 今はいいけど! 後で言いたい事あります!


「で、俺が聞きたいのはその続き。何か知ってるのか? 黒幕的な人を」


「だから知らねーって」


 と、クレナに応じるグレン。


「他にも訊きたい事があった。この街の、よくない噂について」


「ああ、それか。つっても、大したもんじゃねぇぞ? 貴族が他国から奴隷買っただとか、魔族と繋がって国家転覆図ってるとか。まぁそんな、なんら根拠もねぇ噂さ。あとはまあ、酒の事とかか」


 そう適当に述べるグレン。


「他に話してねー事つっても……あ、あれか。お前の事探ってるって言う奴の事、そういやまだ言ってなかったな」


「え?」


 不意な方向転換に、それも僕の方に話題が向き、呆けて返した。

 た、確かに。

 そういえばそんな話もあったな。


「つっても、お前もう察してんだろ?」


 と、グレンはクレナの方を向いて、その真理を覗く様に言った。


「く、クレナ?」


 僕も彼の能面の様に表情の無い顔を見る。


「思いたくはない。思いたくはないが、腑に落ちてしまう」


 そうクレナは前置きにしては不穏な事を言う。


「アズサ。俺達が昼間襲われた、武器庫へ向かう様な依頼をしたのは誰だ?」


「え? それは教会の人か誰かが依頼主だとは思うけど……」


「違う。その依頼を勧めた人自体だ」


 僕の言葉を否定し、答えに導くクレナ。

 僕の中で段々とある人物が浮かび上がる。


「それに、俺達が魔狼の群れに囲まれた時の。あの依頼を俺に頼んだのも」


 クレナは目を逸らさずに言う。

 点と点が繋がり、その答えは導かれる──

 まさか。


「ちなみに、あんたがせっせと各地に運んだ荷物が特大の魔晶石だとは知ってたか? 今回の魔物召喚を行える程度の」


「ま、ましょ、なんて?」


「魔晶石だ。召喚の触媒によく使われる」


 と、口を挟んだ僕にグレンは答えた。


「いや、中身は知らなかったな。だが重みからして合点がいく」


 クレナは平然とグレンの問いに答えたが、僕はそれにますます余裕が無くなった。


「ま、ま、待ってよ! どうして!? 意っ味分かんない! ただの賊じゃないって事!?」


「アズサ、建物が魔法陣になってる話はしたろ? これは組織ぐるみなんだよ」


 と、僕に言い聞かせる様に言うグレン。


「それになアズサ。そもそもこの少年の受けた荷物を届ける依頼も、依頼主はそいつなんだよ」


 そいつ、とは僕の中でも行き着いた黒幕の事であろう。


「いや、そんな筈は」


「いいや。不正があった。そもそも立場上、いくらでもできるだろ?」


 言い掛けたクレナをグレンは被せる様に否定する。

 待ってくれ。あの最初のクレナの依頼も、その黒幕が仕組んでたって?

 でもこの話の流れで行くと、僕を調べてたって人と、クレナを狙ってるって人と、この町をこんなにした人は一緒って事になる。

 いや、まさかそれが正しって事になるのか?

 確かにいろいろと線になって繋がる。

 クレナやグレンを利用したと言うのなら、黒幕が一人の方が簡単に話が済みそうだ。

 そちらの方がその黒幕にとっても都合が良いだろう。

 ん? そうなると、これってもしかして……


「ね、ねぇ。じゃあさ、ここが魔物の召喚候補なのも、相手は知ってる訳だよね?」


「あ? 当たり前だろ。召喚してる本人なんだから」


 何言ってんだ? と返すグレン。

 僕はそれに続ける。


「先ずさ。クレナに依頼を出して、更に僕を調べて、僕らを狙ってるその黒幕が居る訳でしょ? そして放送も無くここに魔物が居るかもって思ったのは、その依頼の事を知ってる僕らだけって事だよね?」


「それが?」


 言いながら、クレナの方は言わんとしてる事が伝わったか、段々と目を見開き、驚愕と焦燥に駆られた様になる。

 それに気付かないグレンは、だから何だと言いたげにこちらを見返した。そんな彼に言う。



「──つまりさ、僕らってここに誘導されて来たんじゃ……って、え?」



 その時。

 周囲全体が青白く光り、僕は言葉半ばで区切らせた。


「くそッ! 悪い予感とは当たるものだなアズサ! 俺達はまんまと罠に嵌った様だ!」


 と、クレナが焦燥し切った表情で言う。


「おい……おいおいおい! マジかよ! 最悪だ!」


 それにグレンも今までにない様子で悪態吐き表情を歪ませる。

 そして僕自身もこの光景には見覚えがあった。


「こ、これって、まさか」


「ああ、そのまさかだろうよ! これはきっと転移の魔法だ! つまり、俺達は今からどこかに──」


 その言葉を最後に、僕の意識は一度途絶えた。



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