プロローグ:再会の感情は?
蒼穹の下、草原と共に揺られ少年は馬の蹄を打つ音を聴いた。
共に居合わせた乗客は物静かで、穏やかに心落ち着く空間であった。
乗降口から覗くのは後列に連なる馬車である。
(不思議な少年だったな……)
少年は風に靡く草原を見ながらそう思った。
つい先程まで共に居た、赤髪の少年を思って。
あの町の窮地に合わせる様に居た神や天使達。
きっと、あの町を救う為にその御姿を現しになったのだろう、と。
そんな中で妙に首を突っ込んでいたあの少年。
天使なのか、違うのか。
(あの少年は否定してたが、果たして──)
と、そう思う少年だった。
その時、ゆっくりと馬車が速度を落として停まった。
休憩の時間である。
皆思い思いに馬車を降り、背伸びしたりしている中、少年も馬車を降りた。
と、その時。不意に気付く。
別の馬車に一人座ったままで居る、ある少女に。
その少女は物憂つげな表情で俯き、靡く金髪は少年のと相違なく美しい。
一瞬だけ。ほんの一瞬だけ天使かとも思う少年。
だがすぐに違うと悟る。
震えそうになる手足を抑え、その少女の居る馬車へと向かう少年。
その金髪の少女は右の目に白い眼帯をしていた。
間違いなどない。忘れる筈などない。
胸の奥から沸き立つ様な、この感情。
少年が馬車へと近付くにつれ、少女も少年へと気付いた。
少年のより深い、この蒼穹の様な碧眼が少年へと向く。
それに更なる胸の鼓動とそれに渦巻くものを感じた。
遂に少女の目の前へと来る少年。こちらへ見開かれる碧眼。
溢れ出る激情に手を上げそうになるのを必死の思いで堪えて、少年は言った。
「マリン?」
その、妹の名を。




