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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第一章 七日間の旅編
15/172

14:五日目



「ふあぁ」


 大広間に続く廊下の中、隣を歩くエリア様が欠伸あくびする。

 エリア様の目の下には薄~くだがクマが出来ていた。


「寝不足ですか?」


「ええ、まあ。ちょっとだけ」


 軽くやりとりし、厨房を過ぎて大広間への扉を開く。


「あ、アズサ。おはようニャ~。エリアさんも」


 と、既にテーブルに着いていたレミリアがさっそく挨拶してくる。


「おはよう。レミリア」


「おはようございます」


 エリア様と共に挨拶を返す。

 こっちに来てもう五日目。

 なんだがすごく長かった気がする。


「アズサ、話があるニャ。そっちに着きニャ」


 と、レミリアが自身の正面を指して言う。

 昨日の続きだろうか?

 依頼の件はクレナが決める所だろうからと保留になったが。

 そう思いつつ、レミリアの正面にエリア様と座る。

 今この部屋に居るのは三人だけだ。


「あー、こほん。ニャ」


 と、レミリアは前置きとして一つ咳払いし。


「アズサの処遇が決まったニャ」


 そう本題へと入った。

 つ、ついにか。

 場に緊張が走る。

 僕は居住まいを正し、どんな処置が言い渡されてもいい様心構えし──


「別にここに居ていいって」


「え?」


 あまりに拍子抜けの内容に呆然と返す。


「ここに居て、いい?」


「って事になったニャ。まあ、上の人達は基本的にこっちの事は無関心だからニャ。当然と言っちゃあ当然かも」


 と、当然なのか?

 って言うか本当にいいの? 

 後からハイ、ダメー!何て言われたりしない?

 僕が天界からの処遇に疑惑を向ける中、レミリアは『それに』っと続け。


「いちいち異界人を捕まえてちゃあ、切ないしニャ」


 そう、然も有りなんと言って──


「えぇぇ、居るの!? やっぱ、他にも!」


「ん? まあ、居ない事もないニャ。アズサのは随分稀なケースだけども」


 ほ、本当に……他にも。


「まあ、この話はいいとして、ニャ。どうするんだニャ? 帰るか、残るか」


 と、きっとこれが本題なのだろう。

 レミリアは真面目な表情に戻して訊いてきた。

 帰り……たい。

 でも、僕にはもう帰る場所は──


「ちょっと考えさせて」


 僕の返事にレミリアは一つ頷くと。


「まあ、じっくり考えるといいニャ」


 そう言ってくれるレミリア。

 ここでこうやって取り合ってくれる人がレミリアで本当に良かった。


「もし帰るとなると、依頼は放棄してとんずらする事も出来るだろうけど……。どうするニャ?」


 と、至って真剣に訊いてくるレミリアに、僕は思わず笑みが溢れる。


「いや、やるよ。最近変にやる気出ちゃって」


 僕の返事にレミリアは『そうかニャぁ』と柔らかく微笑み。


「まあ、私としてもいろいろ気になる事もあるし。その人探しに混ぜてくれたら好都合なんだけど……どうかニャ?」


 テーブル越しにそう訊いてくる。

 んー、と言わてもなぁ。


「昨日も言った様に、依頼主は僕じゃないし」


「んじゃ、尚更ニャ」


「え?」


 レミリアの言葉に首を傾げる。


「昨日はアズサの処遇も分かんなかったし、話途中で終わっちゃったけど。アズサも依頼を続行するって言うしニャ~。勝手に入れて欲しいニャ。報酬は要らニャいから」


「そう?」


「そうニャ」


 う~ん、だからといって勝手に入れるのもな~。


「ま、いっか」


 報酬も要らないって言ってるしな。

 人手が増える分にはいいだろう。


「じゃあ取り敢えず、よろしくね」


「よろしくニャ~」


 柔らかく微笑むレミリア。

 何故急に参加する様になった知らないが、人手も増えるし。まあいいか。


「あの~、それで何ですが、私の処遇はどうなるんです?」


 と、ずっと黙っていたエリア様がおずおずと訊く。


「あ~、それはニャ」


 レミリアは少し考え込む様にすると。


「実は言ってないニャ。エリアさんが見つかったって事」


 それを聞き、ぴたっとエリア様は一瞬止まるや。


「ええぇぇッ!? ちょっ、それどうゆう事ですか!」


 バンッとテーブルを叩いてレミリアに詰問しだす。


「い、いやぁ、はっははー。正直アズサの事で頭いっぱいでニャぁ。その……ごめんなさい」


「っん~~もう! 天界に知られてどんな処遇が来るか、ここ最近びくびくしてずっと眠れなかったんですから!」


 そ、そんな理由で寝不足だったの!?

 僕ってばどんだけ邪魔な子扱い?


「ははは~、ごめんニャ~。天界では大した問題になってないし、大丈夫だと思うけどニャぁ」


 と、レミリアはいつもの様に笑いながら。


「まあ、帰るにしても、依頼は完遂させるんでしょ?」


 そう確認する様に、念押しする様に訊いてきた。









「えーと、つまり、生き物としての格が上がると、髪色や瞳の色が変化する……と?」


 僕は今まで長々と説明された事を要約し、隣にいるレミリアに確認をする。


「その解釈で間違いないニャ。特に天使の子達は髪色や虹彩が変化しやすいニャ」


 顔を上げてこちらにそう説明するレミリア。

 うんー、こっちじゃそう言うもんなの?


「って言うか、ちょっと狭いニャぁ」


 レミリアがそう独り言ち、身をよじる。

 今、僕とレミリアが居るのは、昨日クレナと逃走劇を繰り広げた廃墟の様な場所の一角だ。

 僕達は瓦礫の合間に身を伏せて隠れていた。

 視線の先には廃墟にぽつんと付いている一つの扉。


 レミリア曰く、ここから昨日僕達を追いかけた金髪紫眼の娘が出て来るかもと。

 正直、完全な私情で金髪紫眼の娘を追いかけてるっぽいレミリアに、金髪碧眼の娘が目的のこちらとしては手伝う義理無いのだが……


「本当に瞳の色が変わる何て事あるの?」


「うんニャ。ちなみに、髪の色より虹彩の方が変化しやすいニャ」


 半信半疑な僕の確認に一つ頷き説明するレミリア。

 何でも、この世界では瞳の色が変わる何て事もあるらしい。

 だから紫眼の娘が探してる娘の可能性もあると、依頼主も否定したと言ってはみたが強引に付き合わされた。


「精神体の影響ニャ。精神体が身体に沿う事があれば、身体が精神体に沿う事だってあるニャ」


 さっきからレミリアの言ってる事の半分以上理解出来ない。

 生き物としての格が上がると、髪や瞳の色が変わる事があると。その説明が先ほどのである。


「精神体? ってのが深く関わってんの?」


「まあ、そうニャ。精神体ってのは魔力の塊で、意思、思考、感情を司ってる部分ニャ。知性ある生物は皆んな精神体を確立してるニャ」


「へ~」


 精神体……

 何か大事そうだ。


「んで。こうなると、魔力ってのは意思、思考、感情そのものって事になるニャ。まあ、事実そうなんだけど」


 レミリアの説明に内心整理する。

 精神体ってのは魔力で出来ていて、その精神体が感情とか何とかを司ってるから、そうなるの?


「でも、それが髪色にどう関係すんのさ」


「そうだニャ~、説明すると長くなるんだけど、感情にも色があるニャ」


「色?」


 僕は聞いたまま訊き返す。


「まあ、結局は魔力なんだけど。とにかく、生き物として格が上がる瞬間ってのは、精神体が不定形なのニャぁ」


「は、はあ」


「だから、その格が上がる瞬間に、強い感情によって、精神体の色が変わる事があるニャ。まあ、要は魔力による魔力の上書きね。その色が変わる場所ってのが、魔力の影響を受けやすい瞳、髪って事ニャ……分かる?」


「分かんない」


「ニャはは~。まあ、異界出身のアズサからしたら、何言ってんだって感じだろうかニャ~」


 即答する僕にこんな場所でもへらへらと笑うレミリア。

 まあ、悪いとは言わないが。


「他にも、格が上がった訳でもないのに髪色や虹彩が変わるって場合もあるニャ。まあ、滅多に無いけど。これも論理は同じで、精神体の情報を感情で上書きする事で起きるニャ。これの他と違う所は、精神体が不定形じゃないにも関わらず上書きしてしまうって事かニャ。そうなると、必然的に前者と比較にならない感情が必要になってくるから、滅多に起きない事なんだけどニャ」


「あ、う……まったく分からない」


「ん~、割と完璧な説明だったんだけどニャ~。どこが分かんないニャ?」


「えーと、何で、感情で精神体? の情報を上書きできるの?」


「両方、元は魔力だからニャ」


 そ、それでいいのか?


「じゃあ、魔力は?」


「魔力は魔力ニャ!」


 自信満々に答えるレミリア。

 こんな風に言われたらもう追求できない。


「えーと。要は、めちゃくちゃ感情的になると、髪色や虹彩が変わるのかな?」


「極論そうなるニャ。あ、ちなみに他人から向けられる感情でも変わるニャ。それに、ただ単に憧れてる色になったりもするニャね。憧れも結局は感情って事になっちゃうんだけど」


 その感情も結局は魔力だと。

 ふむ、魔力もとい感情溢れるこの世界では、あながち『想い』と言う物もバカに出来ないのかも知れないな。


「所で、それぞれの感情に色があるの?」


 と、僕は先程の説明で気になった事を訊いた。


「そうニャけど、どうかしたニャ?」


「どんな色なの? 感情って!」


 狭い空間の中、首を傾げるレミリアに僕は少し興奮気味に訊く。

 これはただの興味本意だ。

 だって、感情と言う物が実在するのだ。感情に色がある何て、何かこう……凄い!


「んー、そうだニャぁ。例えば、この緑だと高貴?尊敬的な? ほら、やっぱ私ってば部下から慕われてるから?」


 なるほど、なるほど。周りの感情からでも変わるって言ってたしな。

 話によると天使は生物としての階級が数多あり、その分格が登り易く、髪色も変わり易いらしい。

 そして、レミリアは既に一つ登っていると。


「他には?」


「他に……そうニャぁ。ミレンの橙髪とか? 結構な自信家だからニャ~。傲慢の色に染まってるんじゃないかニャ? なんて」


 へぇ~、かっこいいな!


「あと、メリアは~、あの子も意外と怠け者だからニャぁ。言うならば怠惰、とかかニャ? 同じ色でも色んな感情があるからニャ」


「なるほど」


「まあ、注意しなきゃいけないのが、必ずしも感情どうりって訳じゃない事ニャ。ただ単に好きな色の髪になる子も居たりすれば、生まれつきその髪の人だっている訳だし」


 あ、そっか、そっか。

 でもいいな。なんか占いみたいで。

 と、不意に僕はある事が気になった。


「ねぇ、レミリア。赤色は、どんなの感情なの?」


 僕はほんの参考程度に訊いたつもりだった。

 レミリアの表情が、少し難しい物を考える様に険しくなる。

 いずれレミリアは、キュッと結んだ口を解くと。


「それは──」









 コツコツと足音を響かせ、扉から一人の人物が出る。

 その人は暗がりでもなお輝く金髪で、険しく辺りを見渡す双方は紫色。


「間違いないよ、あの人だ」


 僕はレミリアに告げる。

 到頭待ち伏せしていた娘が現れたのだ。

 それも扉に入るのでは無く、逆に出てきた。

 と、レミリアからの返事が無い。


「レミリア?」


「あ、ああ……ニャ」


 声を掛けるも、レミリアは気の無い返事をするのみ。


「どうかした?」


「い、いや」


 レミリアは一度頭を振り、金髪紫眼の娘をじっと見つめている。


「とりあえず、追いかけよっか」


「待った」


 と、前へ這いずる僕の上着を後ろから掴んでくるレミリア。


「どうかしたの? 体調悪い?」


「いや、体調は……大丈夫。アズサには、私がこの依頼に参加した理由言っとくニャ」


「悪魔教が絡んでるからじゃないの?」


 僕の問いにレミリアは緑髪を揺らして小さく頭を振ると。


「まあ、実際それもあるニャ。けど、私自身がこの件に絡んだ理由は、明確には二つ」


 そこまで言うとレミリアは這いずって立ち上がり、紫眼の娘を気にしながら移動を開始する。

 僕も柱から出てレミリアに追い付いた。


「一つは、信じられなかった事。昨日少し話したけど、悪魔教は結構ヤバめニャ。だから、こんな平和な街に居るとはとても信じられないかったニャ」


 レミリアの一歩後ろを付いて行くと、レミリアは紫眼の娘を尾行しつつ、今日付いてきた理由を話しだした。


「アズサが見た訳でもないし、依頼主のクレナ?って少年が、冗談で言った可能性もある。だから、わざわざ天界に報告する訳にもいかなかったニャ」


 レミリアはこちらを振り返らず、独り言の様にも聞こえる言様でそう続ける。


「もう一つは」


 と、そこで一旦立ち止まり、崩れた壁から金髪紫眼の娘を確認すると。


「あの娘、私の部下ニャ」


 そう、目線は険しいまま言った。

 ……へ?


「え。ちょっ、えぇ!? どゆこと!?」


「ちょ、うるさい。聴こえたらどうするニャ」


「あ、ごめん」


 え? だって、レミリアの部下? が、ヤバめな宗教に?


「この街は私達が来る前から、天使達が調査してた場所でニャー」


 と、僕の様子も他所にレミリアは話し出す。


「そこに神エリア紛失に合わせて私達がここに派遣された訳なんだけど。まあ、もちろん元々居た天使達を牛耳ってた天使が居る訳で……。その娘とはウマが合わなくてニャー。まあ、向こうからしたらぽっと出の私が上司に着く訳だから、気に食わないのは分かるけど」


「ふぅん。で、その娘があの人なの?」


「まーニャ。アズサから特徴を聞いた時、まさかと思ってニャぁ。金髪の娘の時点で、限られて来るしニャ」


 なるほど、それで確かめに来たのか。


「でも本当にニャぁ……まあ、まだミリナが悪魔教と決まった訳でもないしニャ」


「ミリナって言うの?」


 レミリアは僕の問いに一つ頷く。


「とにかく、今はあの娘をつけるしかないかニャぁ」


 金髪紫眼の娘改めミリナさんを眺めつつ、レミリアはそう呟くと尾行を再開した。



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