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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第一章 七日間の旅編
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13:悪魔教



「そちらはどうでした?」


「いえ、それがまったく」


 僕の質問にエリア様は首を横に振る。

 既に夕陽も沈みかけている頃、クレナとも別れて三人で帰っていた。

 あれからクレナとは更に探し回ったが、僕達も結局見つける事はできなかった。


「本当に居るんですかね?」


「一応目撃情報はあるみたいですよ」


 と、エリア様の言葉に答えている中、通りがかった人の持つ新聞紙が目に入る。

 あ、そういえば。


「今しがた思い出したんですが、エリア様がバレる云々(うんぬん)はどうなったんです?」


「んー、大して反応無いみたいですね」


「え! 無いんですか?」


 絶対騒ぎになると思ったのに!


「まあ、エリア教ですので」


 と、リリスの一言が全て表していた。


「何か神言があったとか新聞に書いてありましたが、まぁそれは風説として……。所詮はエリア教です。長年居ないとされてきた物は変わりません」


「そう」


 リリスの説明に短く返事する。

 エリア教が不味い状況なのは分かってる。

 それによって本物のエリア様が救われたのも分かってはいる。

 それをリリスも分かっているのだろうが。


 何で……

 何でリリスが、寂しそうにするのだろう?









 教会の目の前にミレンさんが居た。

 そしてその周囲には何十羽と言う真っ白な鳩が群がっていた。


「あ、お帰り」


 と、ミレンさんが簡潔に挨拶してくる。

 その手にはパンくずの様な物が持ってあった。


「ただいまです」


「ど、どうも」


 エリア様に続き軽く会釈。

 鳩達は僕らに構う事無く、地面に撒かれた餌を突いている。

 その白い鳩の目は全て黄色い瞳をしていた。


「また何かやったの? レミリアさん怒ってたよ」


「えっ」


 と、少し呆れた様子のミレンさんに言われ、エリア様が軽く狼狽する。


「わ、私、ちょっと用事が〜」


「無いでしょう?」


「うぶッ」


 踵を返して去ろうとするエリア様の後ろ襟を掴み、軽くえずく。


「ああ、すみませ」


「あ、預咲さん! 裏切りましたね!?」


「もともと仲間か何かでしたっけ?」


 大して何も思ってない癖に、オーバーにショックを受けたと胸を抑えるエリア様。


「依頼はどうするんですか。それに、今更逃げるだなんて無理ですよ」


「だ、だってぇ」


 駄々っ子の様に呟き、不満げに唇を尖らせるエリア様。

 そんな顔されてもなぁ。


「あ、そうだ! 妙案です! リリスさんは召喚魔法が使えるんです! それでリリスさんだけ外に出て、後は、ね! ほら、ちゃちゃちゃっと!」


 期待に目を輝かせながら語るエリア様。

 た、確かに、リリスがそれを可能なら行けそうな気もするが……


「ま、まあ。それも依頼を完遂してから」


「レミリアさぁーーーーんッ!」


「「あ!」」


 僕が言い終わる前に、ミレンさんがレミリアを大声で呼び、エリア様と二人して声を漏らした。

 大声に驚いたか鳩達が一斉に羽ばたき、白い羽が宙へ舞った。









「いくらなんでも遅過ぎるニャぁ」


 教会の扉の前に仁王立ちし、少し怒った様子のレミリアが問い掛けてくる。


「ま、ま、待ってよ! 確かに遅くなったのは謝るけどさ! 次からはちゃんと門限守るって事で、ね!」


 なるべく笑顔で話しかけ、レミリアの説得へ掛かるも。


「私の部下が、組合で見かけたって」


「ゔッ」


 まるでぽいっと投げかけた様なその言葉に、僕は受け止めきれず唸りを漏らした。

 最早これ以上は見苦しい。僕は大人しく首を垂れ、判決を待つ格好へと……


「はい、そこ! 逃げない!」


「ひっ、ひえぇ〜。御慈悲を〜!」


 レミリアの厳しい声と共に、後ろの方では情けないエリア様の声。

 次いでジタバタと人の動く音が。

 門で待ち構えてたミレンさんに捕まったのだろう。


「説明、してくれるニャよね?」


 レミリアがずいっと顔を近付けて訊いてくる。

 怖い。









「──まあ、そんな……感じです。はい」


 客間に全員上がり、奥側のテーブル前にレミリアが正座、僕達はその正面に正座している。

 空気は張り詰め、完全に説教されている絵面だ。


「はぁ~~、まったく。目を離せば面倒くさそうな事に首突っ込んで」


 僕が組合での事の流れを説明すると、レミリアは長い溜め息を吐いて文句を垂れた。


「面倒な事してくれたねぇ~」


 と、後ろからも追撃。

 今のミレンさんは廊下に足を出して座ると、ただ僕達の話を後ろで聞いていた。


「あれニャよ? 一応これでも、観光ぐらいはさせてよろうって思って、融通を利かせてる方ニャんだよ?」


 そんな思いがあったとは。

 善意を利用する形となってしまい、さすがの僕らも俯いて言い返せなかった。

 いずれレミリアが『はぁ』と溜め息をくと。


「まあ、いいニャ。上は君の処遇を決めあぐねてるみたいだし。どっちにしろ今日一日、長くて数日は下界で待たされるだろうしニャ」


 レミリアは少々疲れた様な口調でそう話した。

 数日か。それくらいあれば、この町から人っ子一人見つけるくらい間に合うかな?


「あー、あと、一応言っとくけどあれニャよ? 組合等の主要施設には私の部下が居るし、この街から出ようなんて事も思わない事ニャね。当然、出入り門には監視員を置いてるし、変装してもダメニャよ? 魂見れば神さんなんて一発で分かるニャ」


 と、僕の思慮に何か勘違いしたか、そう注意してくるレミリア。

 それを聞いてエリア様は悔しげに頬を膨らませていた。


 これあれだな。

 詰みってやつだな。

 エリア様、逃げるのは無理そうですね。


「そ・れ・よ・り、何で知らない所で依頼を受けてるのか」


 レミリアは呆れた様に言うと。


「その金髪碧眼の、多分うちの天使達の事ニャよ?」


「……へ?」


 その言葉に僕は気の抜けた声で返えした。


「だから、私んとこの達の事ニャよ、きっと。最下級の天使ってのは、大概皆んな金髪碧眼ニャ。目撃証言が多いのはそのせいじゃないかニャ?」


 レミリアはそう説明すると、湯呑みからお茶を啜りだす。

 え? 目撃情報が、全員天使?

 じゃあ、今日の苦労は?

 と言うか、依頼自体……もしかして、妹さんも本当はこの町には──


「まあ、あれニャ。冒険者ごっこするのが悪いとは言わないけど」


 そこでレミリアは湯呑みを置き、至って真剣な顔付きで。


「見限るなら、早い方がいいニャ」


 その返事は、誰もできないでいた。

 レミリアはだんまりしてしまった僕達を暫し見つめると。


「ま、数日ニャ。それまでに、何とかするんだニャ~」


 そう言って立ち上がり、靴を履きだすレミリア。

 と、僕はふとある事を思い出す。


「ねぇ、レミリア。悪魔教って知ってる?」


 ぴたっ……と、ドアに手を掛けていたレミリアが止まる。

 そしてそのままゆっくり振り返ると。


「それが、どうかしたニャ?」


 そう、いつもより幾分低い声音で訊き返す。

 僕はレミリアの変化に少々たじろぎしつつも。


「ええっと……僕は分かんなかったんだけど、さっき話した依頼主が紋章を付けた人を見たって」


「どこで?」


「どこで……? う、裏路地?」


 語調を少し強めにして聞いてくるレミリアに答える。


「特徴は?」


「えっと、金髪で紫眼の女の子……。男の人も居たけど、確か黒髪赤眼だった気がする」


 レミリアは僕の言った特徴に暫し黙り込むと、再び元の位置に座る。


「あー、こほん……ニャ」


 一つ咳払いをし、レミリアは話す。


「悪魔教ってのはニャ。まあ、簡単に言うと、教義を信仰する人達の事ニャ」


 教義を? 信仰?


「ただ、その教義がちょ~とマズいと言うかニャ~」


 やっぱ怖めな教義なのかな?


「世界各国で指名手配されている」


「せ、世界各国!?」


 世界中から!?

 手を突いてぷらぷら脚を動かすミレンさんから齎され、心底驚き慄く。


「ま、大体の国でニャ。ちなみに言うと、天界も指名手配をしてるニャ」


 て、天界も……

 と言われてもぴんと来ないが。


「まあ、かなり危険な人達ってのは分かったと思うニャ」


 レミリアの言葉にコクコク頷く。


「で、だニャ」


 そこでレミリアは、ここからが本題だと前のめりになると。


「その人探し、私も混ぜてはくれないかニャ?」


 そう、訊いてきた。



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