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プロローグ:悪魔の子
闇夜の様な暗がりに、少女の泣き声が一つ渡る。
光源の一切が無い部屋の中には、闇以上に空間を黒く塗りつぶす、夥しい量の血が撒き散らされていた。
十を越す数の人々が倒れ伏し、血を流している。
その中心に啜り泣く幼き少女が一人居た。
「こ、これは……!」
その時扉が開き、男性の驚愕する声が渡った。
男性はゆっくりと部屋の中へと入る。
「君が……やったのか?」
少女に恐る恐る問う男性。
少女は変わらず泣き続けていた。
「ふはっ。ふはは!」
唐突に男性は吹き出す様に笑う。
「素晴らしい!」
その表情は歓喜に満ちていた。
「君は唯一にして最高の成功体だ!」
男性は興奮した様子でその少女へ語りかける。
そして、不意に表情と声音を落し。
「──リリス……」
と。男性は言う。
「悪魔の子〝リリス〟。今日からの、君の名だ」
男性はそう少女へ言った。闇でも褪せぬ黒髪の少女へ。
その時少女の泣き声は止み、ゆっくりと顔を上げた。
手の甲に隠れていた少女の瞳が睥睨する。
その瞳は、血にも負けぬ紅色だった。




