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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第四章 魔王領アルヘイム編
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94:女神の考察②



「あ、そうだ。とても大事な事を訊き忘れていました」


 お互いに落ち着きを取り戻した頃、私は口を開く。


「あの、預咲さんの祝福の件なんですが、本人に言ったりしてます?」


「いえ、態々言ってません。それを理由に何かに巻き込まれてほしくないので」


 その返事を聞いて、私はほっと胸を撫で下ろす。


「良かった。私も同じ考えです」


 と言って、あれを生涯で隠し続けるのは無理だろうが。

 だとしても、彼はきっと何かに巻き込まれてこの世界へと呼ばれた身。

 ただでさえ普通の少年だった子が過酷な世界へと断りもなく移動させられた。

 そんな無垢な少年に余計な情報を与えて背負って欲しくはない。

 だからせめて、今だけは。彼が自分で何かに気付く時までは、ただの少年で過ごしてほしい。

 そんな私の精一杯で我が儘な願いだった。









「ふぅ」


 と、一つ気持ちを入れ替える様に息を吐いた。

 今しがたリリスさんとの話は終わり、後ろ手に扉を閉めた所だった。


 正直、私としても預咲さんをこの世界に呼んだのが何者なのかは知りたい。

 流石に六人もの祝福が掛かった人が、偶々転移に巻き込まれるなど出来過ぎている。

 天界の住民の大概がそう思っている様に、私もそうだった。


 まぁ、一先ずはいい。

 今分かる事はリシアさんが無自覚だろうとは言え、天界上層部の間者であろう事だ。

 いろいろと話を訊きたい。

 となれば、次はリシアさんだ。

 あの人と二人っきりで会うのは少し緊張するけど、今後の為にも確認はしておかないと。


 そう思いコンコンッとリシアさんの部屋の扉を叩くと『はーい。開けていいわよー』とすぐに緩い返事が来る。

 どうしたものかと軽い逡巡の後、結局私は扉を開いた。


「あら、あらあら。これは女神様。失礼しまいましたわ」


 と、ブラシで髪を梳かしていたらしいリシアさんはそう言って、悠然とベットから立ち上がり寄って来た。


 うわっ。えっち!


 リシアさんの格好は絹の様に滑らかなネグリジェとショートパンツの姿だった。桃紫色のそれは布地の艶やかさ相まって、妖艶さに磨きが掛かっていた。

 何より目立つ白い四肢と緩い格好から強調された抜群の体付き(スタイル)の良さである。

 着る者を選ぶだろう服に着られず着こなす容姿。


 や、や、やばい! エロい!

 な、何なのこの色気。


 リリスさんやマリンさんには絶対に無いこの大人の色香。

 それは一人の女性としても尊敬してる先輩にも一線画す物。そもそもそこら辺の事情は圧倒的に下界の人の子の方が優位性がある物ではあるが。


「どうかされました?」


 と、入ってきただけで何も喋らない私へ、リシアさんは余裕の笑みで問いかけた。

 か、髪を下ろしてるのも珍しい! リシアさんはポニーテールの印象があったから、何だかギャップも凄まじい。

 って、今はそうじゃなくて!


「あ、話があって。いいかな? じゃなくて、いいですか?」


「ふふっ。砕けた口調で大丈夫ですよ?」


「は、はいぃ」


 動揺か宿での癖か、エリィでの口調が出てしまった私へリシアさんは優しく微笑んでいた。

 今の敬語は癖とかじゃなく先輩とかに(以下略)。

 私達は一人分空けてベットに腰掛けた。

 石鹸の良い香りが鼻に届く。


「それで、どう言った御用向きで?」


 問われ、私の視線はリシアさんの胸に向く。

 顔を近づけよく観察する。

 ふんふん。これが『寵愛の祝福』かぁ。

 預咲さんの方には無いなぁ。

 相も変わらず視界には入っていたが、覚える為にもよく見ておきたかった。


「あの……どうかしました?」


 と、困惑した様子の声に私は顔を上げる。

 そこには当惑した様に眉を下げたリシアさんが居た。

 そういえば、この娘一瞬で預咲さんに取り入ってた人だ。

 胸か? 胸がでかいからか?

 私の方が大きいけど……(今の状態なら)

 私はじっとその下にカーテンを張るでけー胸を見た。


「サイズはいくつですか?」


 気付くと私は問うていた。


「え? む、胸の? えっと、今の下着はアンダーが65だから、Fくらいかしら?」


「F……」


 一応、私の方が大きい。

 ちなみに胸のサイズの基準だが、預咲さんの居た世界とほぼ同じ寸法となっている。

 あまりに似通ってる為に集合意識がどうとか、度々阿保な議論を男神達は繰り広げてたりする。

 所謂本当男って、てやつである。


「でも最近ちょっとキツくて……。旅の間にまた大きくなったみたいだから、落ち着いたら買い替えないと」


「なっ」


 私は続いた言葉に絶句する。

 何故山脈で食べられる様な貧相な食事で胸が成長するんだ。ズル過ぎる。


「な、何でしょう?」


「べ、別に? 別に別にィ〜?」


 くぅ〜! あの体ではただでさえ寂しい胸なのに!









 案の定か、思った様な情報はリシアさんから聞けなかった。

 預咲さんに何故声を掛けたのかと訊かれても、やはり本人は何となくと答えるしかないだろう。

 これが本人も気付かぬ程高度な思考誘導の魔法なら、それで合っているんだけど。

 今更それは確認しようがない。


 とにかく次だ。

 次はマリンさんである。

 正直、これが一番気になっていた。

 魂とは神にとって勝手に目に入ってくる物なので、ちらちらと目の端に映ってはいた。

 が、見慣れた天使の子らとの魂とは少しだけ違って見えていたのだ。

 やはり見直しておきたかった。


 コンコンッと扉をノックすると、『あ、は、はい!』と言う可愛らしい返事が聞こえ、軽い足音の後すぐに扉が開いた。


「あ、女神エリア様! ここ、こんばんわ!」


「こんばんわ」


 勢いよく頭を下げるマリンさん。

 可愛い。

 手を離して勝手に閉まろうとする扉を私が止めようとしたのだが、それを失礼と思ったのか慌てて抑えていた。

 可愛い。


 ちなみに恰好は宿で見慣れたダボダボのネグリジェ姿だ。

 腕や膝下まで覆ったオーバーサイズのそれ。薄いピンク色で、謎のひらひらが可愛い。

 多分子供用だと思う。まぁ、実際子供か。

 あと眼帯はつけていない。


「ほんのちょっと、お話しいいですか?」


「も、もちろんです!」


 マリンさんに招かれ部屋へと入る。

 と、ベットには手の平くらいの巾着袋が無造作に置いてあった。


「あ、やばっ!」


 と、マリンさんから今まで聞いた事も無い様な雑な言葉使いが溢れて、慌ててベットに駆け寄ると、何か白くて清潔な布類を巾着袋へと仕舞っていた。


「すす、すみません。何でもないです」


 それをどこにやろうかと迷わせ、結局リュックの中に仕舞っていた。

 大事な物も仕舞えた所で、私達はベットに一人分空けて腰掛けて落ち着く。


「そそ、それで。え、えーと。なんでしょか!」


 と、ぴんっと背を伸ばして声を張った割には、視線は明後日の方だった。

 ふむ。やはり。この子私と同じポンコツ臭がする。

 実際にポンコツかどうかはさて置き雰囲気の話だ。ええ、もちろん私も雰囲気だけですけど何か?


「そんな緊張なさらなくても大丈夫ですよ。ちょっとじっとしてもらえればそれでいいので」


 私は余裕と色気のある大人の女性として、悠然と微笑み言った。目指すはリシアさんだ。

 それにほっと肩の力を抜くマリンさん。


 私はほんの少し膨らみのあるマリンさんの胸を覗く。

 今まで見てきた魂よりもひと回り大きな魂を見る。

 この魂は……天使? か。

 魂の見え方と言うのは説明しずらいので何とも言えないが、私は一瞬迷ってしまう。

 いや、うん。でもやっぱり、天使だと思う。

 天使とは神聖力により魂が歪んでできた存在。その歪みには個人差があるから、単純にそれが小さく見えるだけだろう。大きくても問題あるし。

 つか歪みがある時点で天使なのは確定か。

 この子が天使の魂である事は間違いない。


「ふぅ。もう良いですよ」


「え? も、もういいんですか?」


 と、流石に拍子抜けだったのだろう。マリンさんは若干戸惑っていた。

 私も折角来た以上今しかできない話は無いかと思い、ちょうど眼帯を着けていない事から思い出した。


「あと、あの、ずっと気になってたんですけど、目大丈夫ですか?」


「え? あ、はは、はい。大丈夫です」


 急な話題だったか、マリンさんは少し慌てて答えた。


「一応、一回会っては居るんですけど、さすがに覚えては無いですよね? 話てはいないですし」


「え、えっとぉ……すみません」


「い、いえ! いいんです、いいんです。あの時はバタバタしてましたし、ね?」


 申し訳なさ気に眉を下げるマリンさんに慌てて言った。

 お互い気を遣って謎の間が空いた。

 なんか気まず。


「そ、そう言えば、エリア様は本日はお風呂に入られましたか?」


「お風呂?」


 ああ、そう言えば大きな浴場があるとか預咲さんが嬉しそうに話してたっけ。


「私達天上の者は神聖力により一定の清潔さが保たれるんですよねぇ。なのであまり湯に浸かる文化が無いんです。今日もぶっちゃけ入っていませんね」


「それは入った方がいいですよ! あ、別に不潔とかって意味じゃなく! あ、あのぉ、ほら! き、気持ちいので! 湯に浸かるって!」


 と、あまり風呂へ熱量の無い私へマリンさんは熱弁していた。


「寝衣も貰っちゃいましたし。それに下着も自由に取っていいんです。新品ですけど」


「へ、へぇ〜」


 珍しくぐいぐい来るマリンさん。


「じゃ、じゃあ明日時間が残ってれば入ってみようかなぁ」


「それはもう是非!」


 適当に頷いてみせた私へ、マリンさんは勢いよく頷いていた。









 な、なんだったのだろう。

 私はマリンさんの部屋を出た後も少し気になった。

 あの風呂への謎の熱量。よっぽど好きなのだろう。


 ま、そんな事はさて置き、最後の訪問と行きますか。

 私はルンルン気分で預咲さんの部屋へと向かう。

 実は二人っきりで話したい事があるからと、預咲さんの方から部屋へとお招きがあったのだ。

 其々用事も済ませてこれで準備万端! 具体的にはこれからどれだけ長引こうとOKです!


 一体何の話なのか。しかも部屋で二人っきり。男女が部屋に二人っきりとなればそれはもうそうなっても致し方ないと言うか、吝かでもないと言うか、満更でもないと言うか。

 ふへ、ふへへへへ。


 妄想を膨らませながらコンコンと扉を叩くと、『はーい』と言う安心する程平凡な返事の後、これまた平凡な間を置いて扉が開いた。


「ど、どうぞ」


「ど、どうも」


 若干緊張した面持ちで私を招いた預咲さん。そして私も思ってたより緊張していた。

 私達は椅子にもベットにも座る事なく、部屋の微妙な位置で向かい合う。


「先ずは来てくださってありがとうございます。そしてエリア様、あなたに話しておかなければいけない事があります」


 と、そう預咲さんは真っ直ぐに私を見て言った。

 ま、まさか、告白!? 告白ですか!?

 男子からの急な告白が許されるのは創作フィクションの中だけだけど、預咲君なら大歓迎です!!


 そして言った言葉は、告白ではあったのだろう。


「僕は人を殺しました」



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