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また来世で会いましょう  作者: あおいあお
第一章 七日間の旅編
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09:依頼



「ニャ、え? ニャ? じょ、冗談ニャ?」


「いえ、マジです」


 レミリアの訳が分からないと言った問いに、エリア様はキッパリと答える。


「え? でも昨日……ニャぁ?」


 ついに素っ頓狂な声を上げて首を傾げたレミリア。

 それでも何とか思考を回転させたか、レミリアは僕に向き直ると。


「ほ、本当かニャ? アズサ」


「本当。やっぱマズイ?」


 やっぱり異世界人は不純物なのかな?


「ま、マズく、は ……。で、でも、なんで赤髪ニャ? そんな綺麗な赤髪、こっちにも天界にもそうそう居ないニャ」


「い、いや。これは僕もよく分かんないと言うか、気付いたらなってたと言うか」


 正直、自分自身の事も分からない事が多い。

 言葉が分かるのもその例だ。


「えーと、髪色は天界に居た時からそうなってましたね」


 と、そこでエリア様が捕捉してくれる。


「て、天界? ま、待つニャ。そもそも何でこの世界に居るニャ?」


「えーとですね。あそこのリリスさんに召喚されちゃいまして、それに預咲さんも巻き込まれちゃったと言いますか」


「ニャ!? き、聞いてないニャよそんなの! 下界の人に召喚!? そんなのいつぶりニャ!」


「ちょっ。れ、レミリア。声大き……!」


 声を荒ぶるレミリアにどうどうと宥める。


「んー、二百年ぶり?」


 エリア様の答えは無視して、レミリアはハッと表情を落とすとクレイの方をちらりと見て声量を落とす。


「だっておかしいニャよ! あの娘が召喚!? 端くれとは言え上位の神を!?」


 身を寄せ合って狭い中、レミリアが手を広げて大袈裟に訳が分からないと表現する。


「端く……。一応言っとくと、かなり大きな魔法陣用いてましたよ! 神ですから。私、神ですから!」


 異界出身の僕からしたら完全に痛い少女にしか見えない台詞を堂々と言うエリア様。


「本当にあの娘が? かなりの手練れだとは思ってだけど。まさか、本当に……?」


「ええ、本当です。流石に私を召喚するのは大変だったんでしょうね。ぜぇぜぇ言ってました」


「……本当ニャ?」


「本当です」


 そうだっけ?

 僕が記憶を辿る中、そこでまた扉の開く音が響く。

 お盆を持つメリアさんが部屋に入って来ていた。メリアさんはお茶をそれぞれ配っていく。

 クレイとリリスもテーブル前にずれ、やがてメリアさんも僕達と反対側に座って落ち着くと。


「取り敢えず、保留……ニャ。この話をするには部外者が多過ぎるニャ」


 そう、いつもの笑顔とは違う、真剣な顔付きでレミリアは言った。

 ついさっきまでどんな会話が行われていたか知らないリリス達は疑問顔だ。


 うーん、僕はどうなるんだろう?

 やっぱこっちの世界じゃ異物なんだろうなうなぁ。

 僕が湯呑みの中で立っている茶柱を見ながら、そう呑気に考えていると。


「ところでレミリア聞いた? ここらで悪魔が出たとか」


「えっ」


 クレイの不意な話題に、虚を衝かれた様に固まるレミリア。

 悪魔とは、どう考えても僕達の遭遇したそれだろう。


「ここらも物騒になったね~。何でも、噂じゃ上位悪魔だとか」


 レミリアの様子には気付かずそう話すクレイ。


「まあ、さすがにそれはデマだろうけどね。走行中の馬車が襲われたとか? しかもそれを返り討ちにしたとか……って、レミリア? どうかした?」


 と、途中でクレイもレミリアの反応に気付いたか、レミリアの様子を伺う。


「え~と、多分……その返り討ちにしたの、私達だから」


 そう、目線を漂わせながら話すレミリア。

 あ、言っちゃうんだ。


「え? 本当に?」


「本当ニャ」


「誰が倒したの? レミリア?」


「いや、皆んなでニャ。それから討伐じゃなくて退治ニャ。途中で逃げられたからニャ」


「それでもすごいなぁ。腕の立つ冒険者でも居たの? それともレミリアって実はすごく強かったり?」


「いや、私はヒーラーと援助に徹してたし、他の人も言う程では無かったニャ。この二人何て、正直クソ程の戦力も無かったニャ」


 あの……。ひどくない?

 ぐうの音も出ないけど。


「ぐう」


 あ、エリア様は『ぐう』が出てる。


「ただリリスちゃんは凄かったニャ~。その歳で一体どんな生活送ったらそんな強くなるのか」


 僕とエリア様の評価から一転、リリスを褒めだすレミリア。

 それを機にリリスへ視線が集まる。


「……すー」


 って、寝てるし。

 リリスは座ったまま小さな寝息を立てていた。


「リリス、そんな強かったの?」


 クレイが声量に注意しつつ、レミリアへ問う。


「もうめっちゃ強かったニャ。まさか二重で魔法使うと思わなかったニャ」


「な、二重!?」


 レミリアの説明に驚倒するクレイ。

 話は分かんないけど、やっぱリリスって凄いんだなー。


「リリス、いつのまにそんなに強く……」


 クレイが寝ているリリスを見つめ、感慨っぽく呟く。


「そう言えば、リリスちゃんとは知り合いニャ?」


 と、僕もちょっと気になっていた事をレミリアが訊いた。

 クレイは一度リリスが寝てるか確認し。


「まーね。リリスは昔、身寄りの無い子でね。ウルヘス付近を彷徨ってたのを保護された子なんだ」


 え、そうなのか……?

 クレイはあくまで軽く言うが、この場にいる全員を黙らせるには事足りた。


「その保護した人が僕の父親。つまりこの教会の司祭で、その後は一緒にここで暮らしてたんだ」


 リリス、捨て子?

 今時捨て子何て……ああ、そうか。

 ここは僕が居た国で無ければ、世界も違うのか。


「当時のリリスは、ずっと何かに怯えてる様だったなぁ……。幼少期はずっと一緒に過ごして、いつか自律する頃にはこの教会からも出て行ってね。もちろん止めたんだけど、半ば勝手に出て行ったって言うか」


 リリスにそんな事が。

 僕は未だ眠ってしまっているリリスを見つめる。

 リリスはエリア様を召喚した理由を教えてはくれなかったが、何か関係あるのかな……


「悪いね。何か重くしちゃって。ところで、組合には報告したの?」


「あー、そう言えばしてないニャ。ま、商会の人がしてくれるニャよ」


 と、雰囲気を変えたクレイの質問にレミリアが応える。


「でも行った方がいいんじゃない? 逃した訳だし、特徴とか聞かれるかも」


「そうだニャ~」


 クレイの言葉にレミリアは『う~ん』と唸ると。


「んじゃ、今から行こうかニャ」


 そう呟くと立ち上がり。


「え? 行くの?」


 と、ちょっと驚いた様子のメリアさんに止められる。


「え? 行けない理由でもあったかニャ?」


「いや、だって。目立つじゃん」


「ああ! そ、そうだった……!」


 途端、その場で膝を付くレミリア。

 狭いからあまり暴れないでほしい。


「あー。誰か、代わりに行ってくれないかニャー」


 レミリアは割と大きめな独り言を言うと、チラリとエリア様の方を見る。

 エリア様はと言うと、湯呑みを持って気にせずお茶を飲んでいた。


「ニャぁー。もうお家に帰るぐらいしかする事ない人居ないかニャー」


 そう言うなり、無言で返事を待つレミリア。

 暫しの間、エリア様がお茶を啜る音だけが部屋に響く。

 やがて流石のエリア様も苦になったか、若干眉を顰めて湯呑みを離すと。


「居ないんじゃないっすか?」


「ここに居るニャろ!」


 舐めてるとしか思えない発言をし、すかさずレミリアに突っ込まれる。


「私、神なんで」


 (笑)が付いてそうな言様でそれを返すエリア様。

 さっきの根に持ってそうだ。


「ニャ、ニャあ。頼むニャ。代わりに行ってよニャぁ。エリアさんしか居ないんだニャぁ。暇人は」


 多分こっちも。

 レミリアはエリア様が梃子てこでも行く気が無いと分かると、諦めた様に立ち上がった。


「分かったニャ。んじゃ、天界に」


「よし、組合に行きましょう!」


「変わり身早や! まだ全部言ってないニャ!」









 花がある。

 小さな部屋の中、壁際に備えられた物入れの上、壁に張られた大きな鏡の前に飾られた花。

 花瓶に挿されて綺麗に咲いている。

 でも同時に、枯れた花も挿してあった。


 教会で一悶着あった後、リリスを起こしてこの町の組合?へ来ていた。

 三人でソファに座る。左からエリア様、リリス、僕の順だ。

 目の前には低いテーブルがあり、各自の紅茶が用意されている。

 僕が一人花に見入っていると、ドアが叩かれ一人の男性が入ってくる。


 少々茶っ気のある肌に白い短髪。瞳の色は濃いめの緑。

 目尻に皺ができた程度の中年の男性である。

 服装は和服っぽく袖が分かれ、その上に白い羽織を羽織り帯で結んでいる。

 そして、手には花を持っていた。


 その人は無言で壁際にある花瓶の前まで来ると、枯れた花と持っている花を交換する。


「花は好きかい?」


「え?」


 と、その人はこちらを向かずに誰ともなく訊いてくる。


「花は美しい。その生涯を持って、美しさのみを磨く。特に、その宿命を背負った時……」


 意味が分からず首を傾げていると、その人は振り返り。


「やあ。私がこの組合の支部長をしている、グレーと言う者だ。以後よろしく」


 そう言うと、その人は薄く微笑んだ。









 各自軽く自己紹介し、僕達は上位悪魔の遭遇とその対処の結果を報告した。


「上位悪魔か。また何でそんなものが」


 今回の事を話し終えるなり、対面のソファで思案顔になるグレーさん。

 悪魔が襲いに来た理由だが、これは分からず終いである。

 ただエリア様によると、場に神聖な魂が密集していたから、それに吊られて来たのでは? と。

 知性の低い悪魔などは本能的に神聖な魂を持つ者を襲う事もあるらしい。


「ここらも妙に物騒になったものだね。十年前は魔物一匹居ない土地だったってのに」


 と、グレーさんが言う。


「道中で見放された様な村があっただろう? あれは元々平和だったここらの地に、魔物が移動した影響なのさ」


 へぇ〜。


「それも突如にね」


 そう、グレーさんは僕を真っ直ぐに見て言う。

 深い緑眼がこちらを覗く様に向けられた。


「その悪魔がなぜ襲って来たか、心当たりはあるかい?」


「い、いえ」


 一瞬も目を逸らさずに問われて気圧されてしまう。


「ふむ。何か、言ってなかったかい?」


 重ねて僕に問われる。

 僕に訊かれてもぉ……

 そんな余裕無かったから。


「あ、そういえば。眩しい? みたいな事言ってた気が」


 よく覚えてないが、僕は思い出した事をそのまま言った。


「ふふふっ。そうかい」


 よく分からなかったがグレーさんは納得した様に、何か満足気に頷いていた。

 その視線は、僕の顔より少し下がっていって──

 と、その時部屋の扉が叩かれる。


「どうぞ」


 グレーさんの返事の後、入って来たのはここの職員だった。

 制服姿のその人は二枚のカードが乗ったトレーをテーブルに置き、一礼すると出ていった。

 あ、これって。


「新しいギルドカードだ。今日をもって、君はCランク冒険者に、君はE−ランクの冒険者に昇級する事をここに認めよう」


 そうだ。ギルドカードとか言ったやつだ。

 僕がこの世界に来て初日に作った身分証。


「おおっ。Eランク!」


 僕はトレーのギルドカード取りそれを眺める。

 ところでランクって何の事?


「一応言っときますと、ランクとは冒険者としての階級です。アズサはついさっきまでF−でした。それから、そっちは私のです」


 そう言うなりひょいっと僕の持つカードを摘むリリス。

 なるほど。階級か。

 それもそうだが、リリスもそろそろ僕の世間知らずを分かってくれてる。


「あ、あの~、私のは」


 と、おずおずと声を掛けるエリア様。

 グレーさんはそれに対し心底疑問そうな顔を作ると。


「君は何もしてないじゃないか」


「ぐはぁっ!」


 核心を突いた事を言われ、似非吐血するエリア様。

 案外気にしてたのだろうか?


「所で話は変わるんだが、一つ依頼を受けてはくれないかい?」


 と、不意にグレーさんがリリスに訊いた。


「いえ、我々には用事が」


「受けましょう!」


「んむっ」


 リリスが断ろうとした所で、エリア様が物理的にもそれに乗っかって言う。

 こうやって身長差を見るとやはりリリスも子供である。


「えーと、何でです?」


 あまり碌な事考えてなさそうだが一応訊く。


「だって、ここで依頼を受けたら天界に帰れないじゃないですか!」


 それ多分帰りたい人の台詞です。


「ちょっと落ち着いて下さい」


 そう言いリリスは伸し掛かるエリア様を退ける。


「何にせよ、内容次第ですよ」


「あ、そっか」


 リリスに言われて大人しくなるエリア様。

 そしてグレーさんに向き直ると。


「えーと。とりあえず、話だけでも」


「そうかい。ありがとう。と言っても正規の依頼ではないんだ。ちょうど依頼主も来てる。話だけでも聞いてやってくれ」


 そう言うとグレーさんは依頼主とやらを呼びに席を立った。

 部屋で大人しく待っているといずれか扉が叩かれる。


「え、ええと。どうぞ!」


 代表してエリア様が返事をすると、一人の少年が入って来た。

 入って来るなり一番に目へと飛び込んで来た、輝く様な金髪。瞳の色は快晴の空の様に透き通る青色。同性としても思わず息を呑む、神秘的で美しい少年だった。

 年は僕と同じくらいだろうか?

 身長も僕より少し高い程度で……って。


「あー! この前助けてくれた人じゃん!」


 僕は思わず立ち上がって声を上げた。

 そう、目の前に居たのは僕がこの世界に来て早々絡まれて居たのを助けてくれた少年だった。

 少年はそんな僕を一瞥すると。


「あ、君か」


 そう一言呟くのみ。

 と、横のエリア様が疑問顔で。


「えーと、二人はどういった関係で?」


「あぁ、そのぉ~。少し前、彼に助けられたりしたもので」


 そう軽く説明する。


「あの時はありがとう!」


「ああ」


 僕の礼に短く応じる少年。

 って言うか、何でここに?

 と、その疑問は直ぐ解消された。


「今日は一つ、頼みがあって来た」


 なぜなら彼が、依頼主とやらだったから。



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