④ 転職だけでなく人生の羅針盤「自己分析」
筆者:この項目では転職や新しく就職される方のためのポイントについて見ていこうと思います。
とにかく転職や新しく就職するためには自己分析が大事になります。
質問者:自分の市場価値をちゃんと理解することでしょうか?
筆者:勿論それも大事なのですが、特に転職の際には色々と世間が分かってくると同時に、自分のライフスタイルも変わって来ると思うんです。
そうした内心や環境の変化も踏まえた自己分析が大事になってきます。
特に自分がどういう価値観を大切にしているのか? を真剣に考えるべきです。
今の収入や待遇に不満を持っているのでしたら尚更です。
そう言った人生のターニングポイントでは、他人から押し付けられた価値観では無く「自分軸」での価値判断基準が大事になります。
質問者:具体的にはどういうことなのでしょうか?
筆者:まずはどのような会社が理想なのか? そして自分が志望している会社がそれぞれ何点ぐらいなのかを考えてみます。
まずは、労働待遇面です。これは時給や月給の金額、やりがいのある仕事、自分にとってのやりやすさ、上に意見が言える風通しのよさ、研修制度の充実、転勤はどれぐらいの頻度で存在するか など これらを総合して判断していきます。
2つ目は福利厚生面です。休みが多い、残業が少ない、子育てがしやすいか、労働時間帯(何日も拘束される。ことも含む)立地条件
こういったところの優先順位をつけていきます。そして“どうしても譲れない条件”での合計得点をつけていきます。
そして次に今会社に所属しているのでしたら今の会社の採点もしてみます。そしてそのギャップを考えてみるのです。
質問者:なるほど、皆さんの価値観次第で理想的な就職先は異なると言うことですね。
筆者:そうなります。次に会社にとっての自分を採点・分析します。
特に新卒で就職しようとしている方々に関しては重要です。
初めてこの分析をされる方は世間での相場が分からないと思うので、就職関係の専門家に頼んでみるのも良いのかもしれません。
他者視点での感覚も大事で自分では思いもしなかった得意なことが見つかる可能性もあります。お友達に聞いてみるのも一つの手かもしれません。
取得している資格、自分の得意としていること、苦痛を感じずにできること。逆に「絶対にやりたくない事」ここら辺をブラッシュアップしていきます。
このように自分の仕事先に対する分析と自分の能力に対する分析の大きく2つを分析することが大事になります。
孫氏の兵法に「敵を知り己を知れば100戦危うからず」と言う言葉がありますが、まさしくこれを行うことになります。
ちなみにこの後に続く言葉として、
「敵情を知らないで味方のことだけを知っているのでは、勝ったり負けたりして勝負がつかず、敵のことも味方のことも知らなければ必ず負ける」
とあります。自分と相手両方を知って初めて勝つことができるのです。
面接などを受ける際でも、やはりこの自己分析をどれだけできているかによって志望動機も軸のぶれない納得できる回答が出来るようになります。
まさに、“内定のための天王山”とも言えると思います。
質問者:確かに私も就職する際には自己分析のシートを頑張って埋めたのを思い出しました。アレを再びやると言うことですね?
筆者:そうですね。新入社員の時代とその後のライフスタイルの変化があると思いますので、転職の際やまだ転職をしようか迷っている時点においてでも再びやってみることは必須だと思いますね。
そして、あまりにも今の職場と自分の分析との間に乖離があったりする際には転職について本格的に考えた方が良いでしょう。
転職希望先の会社などがスキルが必要だと分かったりもするので、
前回も挙げたリスキリングの目標がまた定まってくると思います。
質問者:なるほど、自己分析は収入が上がる話の全体として繋がってくる話になるんですね。
①では転職をすると「雇用の流動性が高まれば、自分を正当に評価してくれる理想の職場に出会える可能性が上がる」
と言う風におっしゃっていましたが、自己分析を深めるとこの理想の職場に出会える確率が上がると言うことでしょうか?
筆者:そうですね。自分の理想を知っているのは自分だけですからね。
基本的には賃金が高い方が良いと思うわけですが、
例えば、時給が低くても休みが多い方が良いと思われる方もおられると思います。働くのに疲れてしまった方などはこれに当たると思います。
逆に時給が高くても、“他の人がやりたがらないから時給が高い”職業と言うのも存在します。
例えば「特殊清掃」と呼ばれる職業に関しては時給は非常に高いですが仏さんの状態が深刻だったりするために、かなり過酷な労働環境を強いられてすぐに精神的に参ってしまう方も多いようです。
まぁ、理想は時給が高くて、やりやすい仕事で休みも多い職場でしょうけど――実際はそんな夢のような職場は無いと思うので、優先順位についてとにかく自分の心の中で聞いていき、追求していくことが大事になりますね。
何を優先したいか分からない場合は“何が無くなっても大丈夫か?”という視点で見ることも大事かなと思います。
質問者:確かに、時給が高くてもパワハラが凄かったりしたら嫌ですからね……。
筆者:ただ、会社を分析したとしても、「本音と建前」と言うこともありますから、入社する前のイメージと現実とのギャップと言うこともあると思いますので、あまりにもギャップがあり過ぎることがあるなら、再度転職をすることも良いと思います。
質問者:最近は退職金について20年以上勤めた人の控除金優遇が無くなるかもしれないという話もありますが、これについては転職の促進に繋がるのでしょうか?
筆者:転職の促進に繋がるかもしれませんが、本来はあまりやってはいけない方法です。
というのも、「あとちょっとで20年」と言う人のライフプランが崩壊するわけです。
そう言う人たちはリスキリングをする意欲とかもあまり無い訳ですから事実上の退職金カット=増税に繋がります。
ここは、転職をしやすくするための補助金を増やすべきであり、実質的な増税をして国民の負担を増やすのはどうかと思います。
自由と言いながら実質的な強制と言うのがマイナンバーカードの一件の時もそうですが、この国の好きなやり方なんだなと言う風に思いますね。
このようにライフプランの選択肢を減らしたり、実質的な増税で貧困者を増やしたいのかな? と邪推したくなってしまいます。
質問者:なるほど……あとは、転職について根本的な話として思ったんですけど、結局のところ日本の中の狭い中での転職と言うことを考えるとかなり苦しく無いですか?
構造的な問題で収入が増えていないと言うことが①で紹介されていましたよね。
筆者:そうですね。労働組合が極端に弱い事と、株主資本主義であることが日本人の給料が上がりにくい要因となっています。
最近では給料は上昇傾向にあるとは思いますが人材の流出を防ぐための“防衛的賃上げ”と呼ばれており、景気状態が良いわけでは無いので、実質賃金は1年以上マイナスで物価高を上回るだけの賃上げにはなっていないというのが悲しい現実ですね。
※中小企業では防衛的賃上げを除いた実質的な賃上げの伸び幅は1%ほどだと言われています)
質問者:そうなると、待遇が良い人気の会社と言うのは転職をする際にも倍率が上がってきますよね?
筆者:そうですね。結局のところ雇われている立場と言うのは現実として雇用主や給与決定権限者に依存していますから。
次の項目では会社員として働くのではなく、個人事業主として働くことについて考えてみていきたいと思います。