① 「日本人の生産性が低いから給与が上がらない」は間違い!
筆者:今回はなぜ今の日本人の収入が増えないのか? その構造を解説すると共に、収入が増える方法を検討していこうと思います。
さて、いきなりですが質問者さんは給料が上がって欲しいですか?
質問者:そりゃ、上がって欲しいですよ。出来れば労働時間や仕事内容が変わらずに給料が上がって欲しいですね。
収入がいくら増えても残業ばかりでは体が壊れてしまいますから……。
筆者:そのような考えは皆さん共通のお考えだと思います。
ではどうして日本はこの30年間可処分所得が横ばいかむしろ下降傾向なのか分かりますか?
質問者:一つは税金や社会保障費が上がり続けていることが問題ですよね? これは日本の国債の能力を政府が宣伝しない事が問題だと以前教えて頂きました。
消費税を中心に減税をして社会インフラを整えることが大事でしたよね?
※今回はここについては触れません。他の政治エッセイをご覧ください
あと、よく言われることとしては、「日本は生産性低い」と言うことが言われていると思います。
筆者:「日本は生産性が低い」ことについては経済学者さんの多くがよくおっしゃっていることですよね。
しかし僕は思うんですが、この30年間皆さんは生産性が同じなのでしょうか?
例えば、PCでのワードやエクセルなどのツールを使いこなせる方は30年前はまずゼロだったと思いますが、今では生産年齢人口の多くの方が最低でもパソコンやスマートフォンは使いこなせていると思うんです。
小売業界では商品発注業務における自動発注システムの普及で大幅な時間短縮が
物流業界では人手に頼ることの多かった配送センターの仕分けやピッキングなどもロボットの活用や荷物の移動に自動搬送車を使ったりして、自動化・省人化が進められています。
オフィスでも、反復作業の多い業務を自動化するRPAや、コロナ禍ですっかり市民権を得たオンライン会議などにより、業務効率の改善は日本でも着実に進んでいます。
よく「日本の労働生産性は主要国より低い」といわれていますが、こうした側面でみると、企業レベルの生産性向上は着実に進んでいるといって良いと思うんです。
また、最低賃金の側面でよく世界で比べられるのですが、例えば最低賃金が1200円の日本の東京と、最低賃金が2000円のアメリカとでサービスが2倍近くも違うとは思えないんです。
確かに、グローバルな視点で見れば日本企業の地位は低下しているかもしれませんが、
むしろ日本の方が“おもてなしの精神”からサービスの質は日本の方が上ではないかとすら思えます。
そうなると給与の差ほど日本人の生産性が低いようには思えません。
質問者:よくよく考えてみればそうですね……。何か皆さん誤解があるのでしょうか?
筆者:僕が思うに、ちょっとずつ自動昇給していくし、ちょっとずつ環境が変わっているという感じなのであまり疑問に思わないのではないかと思うんです。
そして、収入が増えない根本要因の一つとしては同じ仕事での大体の“相場”というのはあると思うのですが、それが変わり続けていないのです。
つまり、生産性によって給与が決まっているのではなく、要は市場原理として需要と供給のバランスによって皆さんの給与額が決まっている状態なのです。
ですから、とある社員の方が能力が高く処理能力があるAさんがいたとします。しかし、それを企業が低く見積もり、その価格にAさんも応じてしまえば“能力が高く生産性の低いAさん”が誕生するのです。
質問者:うーん、ちょっとわかりにくいです……。
筆者:つまりAさんの能力に対して正当に評価して報酬を出してくれるかどうかは“働く場所”で決まります。
分かりやすくするために、極端な話をさせて頂くと、このAさんが弁護士の資格を持っていたとしましょう。しかし、トラックの配送業の会社に入社すると弁護士資格は関係なく「トラックを運転できるか?」かが少なくとも普段は問われるので何の意味も無いのです。
ですが、Aさんは弁護士事務所に入ればバイトだとしてトラック運転手より少なくとも労働時間が短く高い報酬が貰えると思います。
これは例えなので、実際のところ弁護士資格を持っている方が突然トラックの運転手にはならないと思うので、かなり極端な話ではあります。
しかしながら、これが形を変えて日本国全体でちょっと分かりにくくした状態で起きているということです。
ですから、逆を言うと「生きていること」を評価してくれる会社が誕生した場合は皆さん「働かずして生産性を高めること」ができます――まぁ、それがベーシックインカムの考えですがね。これについては話が脱線するので今詳しくは触れませんがね。
質問者:なるほど、つまり“働く環境次第“ということですか……。
筆者:そうなります。ですからよく生産性の話の際に、「雇用の流動性が高まれば生産性が上がる」と言うのは半分正解で、半分間違っているという感じですかね。
僕が思うに「雇用の流動性が高まれば、自分を正当に評価してくれる理想の職場に出会える可能性が上がる」というのがちゃんとした答えだと思います。
転職をするまでの間に、自分の相場をキッチリと判断で来ている方や、
より良い条件を見つけることができる可能性が上がるので、転職をすると給与が上がりやすいと言うことです。
ですが、世間ではそうした分析をしてくれている方が少ないので物事の本質を見誤っているという形です。
質問者:しかし思うんですが、どうしてそんなにも日本の企業は社員の断続的なスキル上昇を評価してくれない状態になっているんですか?
海外ではしっかり評価してくれているから給料が上がっていると言うことですよね?
筆者:これについては次の項目で詳しく解説するのでサラリと触れるだけにとどめますが、
バブル経済崩壊の際の大企業の労使交渉で労働組合側が“給料を上げなくていいから首にしないでくれ”というコンセンサスを締結し、それが中小企業まで波及しました。
ここで、雇用の流動性を高めて皆さんが思い思いの理想の職場に就けたほうが逆に良かった気がするのですが、労働者側も「終身雇用の方が将来は安全」と思いベースアップを望まなくなったのです。
最近ようやくロシア・ウクライナ問題が皮切りとなったインフレでの物価高でベースアップが話題になっています。
それでもコストプッシュ型のインフレですから、実質賃金は1年以上下がり続けています。賃金上昇が物価高には追い付いていないのが実情です。
質問者:なるほど……。
筆者:さらに政府が“株主資本主義”な政策を次々と打ち出し、短期的な目標しか企業は立てなくなりました。短期で利益を出すためには従業員の給与をカットするのが一番手っ取り早いです。
本来上げなくても良いにもかかわらず財政規律のための社会保障費の増大などもあり、今の皆さんの収入が上がらないことは政府の政策の必然的とも言えるのです。
質問者:そうなると何だか日本の企業の全体が社員の皆さんの頑張りを評価してくれない構造上の問題が大きいので給与が上がるのが八方塞がりのような気がします……。
筆者:まぁ、何もしなければ残念ながらそうなりますね。
ですが、行動を起こせば、絶対を保証することは出来ませんが、ある程度の収入が増える効果が期待できると思います。
僕が考えた方法としては4つあります。次の項目から収入が増える方法について具体的に見ていきましょう。