第8話「毒島先生」
Side 天野 猛
歓迎会も一段落し、天野 猛は健康状態を医務室でチェックされる事になった。
猛を観る医師は女性医――毒島先生
ホッソリとしたシルエット、黒髪のボブカットで前髪の右側の一部が紫色のメッシュ掛かっており、目つきも鋭い三白眼で肌も不健康そうに色白い。
正直恐い雰囲気が漂っている。
ジーニアス司令とは対照的な女性だ。
「体に異常はないと――最近の中学生と言うのは中々頑丈に出来ているらしいな。つまらん」
「つ、つまらん?」
「少しぐらい異常が出ていた方が可愛げがある」
「は、はあ――」
「まあいい。メンタルカウンセリングだ」
「メンタルカウンセリング?」
「酷い場合は薬を出すが、まあ今の様子だと問題はないだろう――今はな」
「何かそうなる予感をしているみたいですね……」
猛はおそるおそるそんな事を言う。
「今や精神の病気は珍しくもないからな。特に戦闘に関わる職業に付いている人間はそうだ。君の場合は念入りに受けて貰うぞ」
「それは――」
心当たりはあるので言い返せなかった。
「城咲さんにも言ったが最終手段はセッ〇スだからな」
「なんかとんでもない発言を!?」
「精神が壊れるよりかはマシだ。なあに。この部屋をラブ〇代わりにするぐらいは大目に見てやる」
「さっきから何なんですか!?」
猛は顔を真っ赤にして抗議するが――
「なんだ? 城咲じゃ不満か?」
「そ、そう言う問題じゃ――」
「城咲と同じ反応だな――」
「どう顔を合わせればいいんですか……」
「私を悪者にして、あの先生変だったよね? とか、そう言う感じで話題の種にでもしてくれればいいさ――その様子だと精神に問題はなさそうだな」
「ぎゃ、逆になんか疲れたんですけど――」
「真面目にやってもつまらんだろう」
「いや、真面目でお願いします」
「それじゃあ――」
睡眠時間。
食事。
クラスでの会話。
学業。
趣味。
色んな質問について答えた。
「やはり病んでるな」
答えていくウチにそんな結果が出た。
「そう――ですかね」
「加島 直人の死やデザイアメダル絡みの戦いでライフスタイルが劇的に変化している。特に趣味が楽しめなくなったと言う部分は無視できない」
「はい――」
確かに言われた通りだ。
自分でも無視はできないと思った。
「本来なら薬を出すレベルだ。どの道、ここには定期的に通う事は決まったがな」
「それで――どうすれば?」
「本来ならばヒーロー活動など、もっての他だが――そうなりたくなければ、出来るだけ今と言う時間を大切にしろ」
「はい――」
「気晴らしに友達とカラオケでも行って来たらどうだ? ウチの経費で落としても構わん」
「え……」
「それと城咲とデートの回数増やせ。親密になれ。中学時代の恋愛は貴重だ。周りの声は無視しろ」
「どうしてそう言う話になるんですか!?」
顔を真っ赤にして猛は声を挙げた。
「そうだな。まるで盛りが付いたマセガキみたいだな。そう言う奴に限ってあの時、心に正直になって恋愛しとけば良かったと後悔するんだ」
「いや、なんの話ですか?」
突然実感こもった感じの話をされる。
「逆に相手に恵まれ、セッ〇スに目覚めて十代半ばで子供を作った場合は人生苦労する事になる。気をつけろよ」
「なんで、その、えーと、する事前提で話を?」
恥ずかしながらも猛は問いかけた。
「なんだ? 城崎じゃ不満か? それともななにか? 私がいいのか?」
「だからどうしてそう言う話になるんですか!? しかも視線を逸らして顔を赤らめないでください」
「こんな可愛いい中学生と医務室で禁断の行為か……うん、アリだな」
「もう本当になんなんですか!?」
そして唐突に医務室のドアが開かれ、そこから春歌が現れた。
顔を真っ赤にして何故か涙目である。
「猛さん!! 猛さんはどうなんですか!?」
「ちょっと落ち着いて!? てか話を聞いてた!?」
「だだだだ、大丈夫です!! 子供の作り方ぐらいは知ってます!! ラブホに行ってこのまま大人の階段を全速力で――」
「わー!? 誰か助けて!? 春歌ちゃんが壊れた!?」
そんな二人を見て毒島先生は「青春だな」と言ってカルテを書き進める。
「毒島先生も何か言ってください!?」
「コン〇ーム1ボックス分と部屋の鍵を置いていくから――」
「平然と火に油注がないでください!?」
「このままだと次々と新ヒロインが現れて私はなんかこう影が薄い負けヒロインになって惨めな人生が!? それだけはヤです!?」
「春歌ちゃん益々おかしくなってる!?」
結局この騒ぎを落ち着かせるのに数分の時間を要する事になったという。




