第7話「秘密組織アーカディア」
Side 天野 猛
翌日。
志郎や舞と模擬戦を行った天村財閥の施設の地下。
そこで秘密組織の自己紹介を行うとの事だった。
「どんな人達なんですかね?」
「さ、さあ?」
春歌も首を捻りながらも恐る恐る地下奥深くに繋がるエレベーターに乗る。
そして待ち受けていたのは――
「ようこそ、秘密組織アーカディアへ!!」
歓迎会と言う横断幕と一緒に志郎や舞。
そして大勢の大人達が出迎えてくれた。
先頭に立っていたのは絵画に描かれていそうな綺麗な長い黒髪の大人の女性だった。
どういう性格なのか分からないが彼女が先頭に立って笑顔で駆け寄ってくれる。
「私はこの組織の代表を務めているジーニアスさ。色々と積もるところがあるけどゆっくりしていってくれたまえ」
「は、はあ……」
☆
それから呆気に取られながら歓迎会が始まった。
年齢はバラバラ。
広い地下のホールの中で猛と春歌はキョロキョロしながら落ち着かない様子だった。
「驚いたかい? まあ無理もないだろうね? あ、これ君達の歓迎会でもあるけど組織の正式稼働を祝う発足会でもあるんだ」
「正式稼働って……」
つまり今迄稼働していなかったと言うことだ。
「ジェネシスの件で裏切り者の目を掻い潜りながらの人員集めだったからね。それも敵の懐でもある天照学園内部でだ。いや~苦労したよ」
「なら外部は?」
当然の疑問をジーニアス司令に投げかける。
「外部は外部で色々と面倒事が多いんだよ。今度は日本政府が厄介になってくる。それを考えると学園内部でレジスタンス活動を強いりながら頑張って、こうして今日に漕ぎつけられたんだ」
と言う事らしい。
どうやら想像だに出来ないような苦労や政治的なあれこれがあったようだ。
「大人の戦闘要員はいるんですか?」
猛はそう質問した。
「いるっちゃいるけど、今の状況は子供の手でも借りたい状況なんだ。それに君達の覚悟は見させてもらったし」
「は、はあ……」
「それに敵は学園島に無数に存在する学校内部に入り込んでメダルをばら撒いている。つまり学生を使っているんだ。そこ迄の内部情報を探るには大人では限界がある。どうしても子供の力が必要だった」
「そう言う理由もあったんですね」
春歌が言った。
「だからと言って君達を適当に選んだワケじゃない。例えば君達の各変身アイテムの適正値もそうだ」
「適正値?」
「その通りだ。例えば城咲ちゃんの場合は揚羽ちゃんと同じぐらいの適正値だった。天野君、君に変身ベルトを送られたのも偶然じゃない――」
「僕も適正値が高かったんですか?」
「そうだ。君のお父さんはレヴァイザーのスーツの研究者だね。まあ平たく言えば開発者の一人だ」
それを聞いて春歌は「そうだったんですか?」と猛に尋ねる。
猛は「うん。科学者なのは知ってた」と返された。
「レヴァイザーと君との適正値はとんでもなく高かった。だからと言って息子を実験台にするような真似はしなかった。まあこれは親として当然だね」
「だけどジェネシスの一件でそうも言ってられなくなった」
「そうさ。だから託すだけにして姿を消した」
「お父さんとは話したことはあるんですか?」
ジーニアス司令は顔色を真剣に変えてこう言った。
「――今でも悩んでいる。自分の選択が間違いなのか正解だったのか。少なくとも親としては間違いだろう――そう言ってたよ」
「そう――」
「今も彼は激しく後悔しているよ。僕も明るく振る舞ってはいるけど、この場にいる人間、この場にいない支援者はなにかしら後悔はしているよ」
続けてジーニアス司令はこう言った。
「本当は変身アイテムを取り上げたり、揚羽 舞の復帰を認めない――何て言う意見はあったんだ。まあ当然だよね。自分達が蒔いた種を平穏に暮らしていた学生達にやらせんのかって言う意見がね」
「だけど僕達はここにいる」
「そうだ。いや、そうなってしまったと言うべきか――正直に言えば僕達もハッキリと結論は出していない。今でも間違っていると思う。だが同時に天村君や揚羽ちゃん、城咲ちゃん、天野君たちの様な子がいるのなら――大人である自分達が全力で支えよう。そう思ったのさ」
そしてジーニアス司令はこう続ける。
「色々と好き放題に暴れた事について本当は怒らなきゃいけないんだけどね。だけど僕達も今の今迄手助けを出来なかった――だから何も言えないよ」
「その、ジーニアス司令はそれでいいんですか?」
恐る恐る猛は尋ねる。
「もう決めたことさ。だけどこれから僕達の指示に従ってもらうよ?」
「は、はい」
返事をする猛。
「最後に一つだけ約束してくれ――何があっても死なないこと。君達が死ぬこと、家族にお悔やみを申し上げるのは心を抉られるほど辛いことなんだからね」
それを言われて猛と春歌の二人は何も言えなかった。