森口 沙耶と姫路 凛の物語
Side 森口 沙耶
=森口 沙耶の家=
「話には聞いてたけど本当にこう言う活動してるのね」
「そうよ部長」
沙耶は凛相手に髪の毛のセットを行う。
ご丁寧にコーヒーや菓子も用意していた。
今日のセラピー、メンタルヘルスケアの相手は姫路 凛。
恩人であり、大切な友人の一人だ。
「髪の毛を撫でるのが上手いわね」
「ふふふ、ありがとう」
「キャラ変わってるわね。そっちが素?」
「さあ? それはどうかしらね」
などと誤魔化しながら沙耶は凛の髪の毛を優しくときほぐす。
「何だか気持ちよくて眠くなってきたわね」
「その時は起こしてあげるわ。後はメイクにマッサージ、香水もつけようかしら」
「至れり、尽せりね。通う子も多いわけだ。金取れるんじゃない?」
「ふふふ、ありがとう」
そう言って顔のメイクに入る。
優しく顔の汚れを落として拭き取り、その上から医療式のメイクを行う。
「――将来、美容師かセラピストになったら?」
鏡を見て凛はそう一言。
「考えておこうかしら」
沙耶はそう返した。
「それで今日はどう言うご用件かしら?」
「ごめん、気持ちよすぎて忘れてたわ・・・・・・まあ一つは沙耶の様子見をね。まさかここまで気持ちいいとは思わなかった」
「ふふふ、どういたしまして」
「もう一つは悩み相談かな? まあこれはついでみたいなもんだけど」
「どんな悩み?」
軽く凛の体をマッサージしながら沙耶は尋ねる。
「簡単に言えば周囲の恋愛模様ね」
「ああ」
そう言われて直ぐに合点がいった。
ヒーロー部、悪の組織部ともにカップルが目立つ。
天野 猛と城咲 春歌。
天村 志郎と揚羽 舞。
倉﨑 稜と宮園 恵理。
この三組はどうしても周囲に影響を与えてしまうのだろう。
それに姫路 凛も女の子である。
沙耶も女の子だから気持ちは何となく分かる。
「何だか変な気分になって、その、羨ましいというか――でも相手いなくて」
「そうよね――でも私達まだ中学生だし、あの三組がおかしいのよ」
「分かっちゃいるんだけどね――」
「私も――そう言う相手と巡り会ったりするのかな」
ポツリと沙耶は呟く。
「どうしたの急に?」
「いや、友情をとるか、恋愛をとるか――ちょっと悩んだの」
「そう――」
沙耶の事をよく知る凛は複雑な表情を浮かべた。
「だけどなってみないと分からないわよ。そう言うのって」
「そうなんだけどね――時折どうしても恐く感じるのよ」
「そう――」
「まあだけど、なってみないと分からないって言うのは賛成かな。コーヒー冷めてるけど飲む?」
「構わないわ。お菓子も一緒に頂くわ」
「ええ、どうぞ」
未来の事は分からない。
不安だらけだ。。
どんな相手と出会い、結ばれるのか。
どんな恋の試練が待ち受けているのかなんて分からない。
だが今だけは忘れてこの時を楽しもうと二人は思った。




