森口 沙耶の物語
Side 森口 沙耶
森口 沙耶はヒーロー部のメカニックであり、ハートマテリアルを使って変身する魔法戦士である。
だが男よりも女の子が好きな特殊な嗜好の持ち主でもある。
特に母親絡みの件で姫路 凛に懐いている。
そんな沙耶はヒーロー部やアーカディアの活動の傍ら、ある活動を独自にしていた。
それは――
☆
=森口 沙耶の家=
そこに少女を招いてお茶会をする。
ただそれだけの事。
愚痴を聞いたり、悩み相談を受けたり、時には荒事をこなしたりしている。
それだけでなく、医療向けのメイクや髪のヘアセットなどを行う。
つまり女の子達相手にセラピーを行っているのだ。
髪の毛をブラシで優しく撫でるようにとかし、独自に生成した整髪剤で髪の毛を労わる。
メイクは少女達それぞれが持つ魅力を引き立てるように行う。
それだけに飽き足らず、軽くマッサージも行う。
こうして体だけでなく、心もリフレッシュさせるのだ。
今日招いた少女の悩みはデザイアメダル絡みの相談だった。
偶然入手し、使用してしまい、どうにかなりそうだと言う。
だからデザイアメダルを破壊し、魔法の力も併用して心身となって少女に接した。
抱きしめ、頭を優しく撫でながら心を落ち着かせる簡単な魔法を使う。
森口 沙耶は本物の異世界エンディアの魔法王国ウィールの魔法戦士である。
これぐらいの事は朝飯前だ。
☆
「はぁ――流石に疲れた」
アレから一緒にゲームしたり、カラオケいったり、食事したりと遊び倒した。
デザイアメダルの悩みは解決できたようで何よりだ。
「お帰り」
家に帰ると同居中の少女、林原 ユナが出迎えてくれた。
茶色い髪の毛、優しそうな顔立ち、舞や春歌に負けない体の抜群のスタイル。
同じ魔法戦士であり、森口 沙耶のセラピー業務を手伝ってくれると同時に沙耶の心と体をリフレッシュさせてくれる存在だ。
「ああいたのね」
「うん――私も沙耶ちゃんの力になりたいから」
そして今度は沙耶がセラピーを受ける番だった。
簡単なヘアメイク。
他愛ない雑談。
時には抱きしめてくれる。
「沙耶ちゃん最近楽しそうだね」
「ヒーロー部、意外と悪くないみたい」
「うん――」
「ユナも入ってみる?」
「考えとく」
「そう――」
沙耶は無理強いはしなかった。
「何時もありがとね、ユナ」
「どうしたの突然?」
「私ってその――普通じゃないし、それでユナに迷惑掛けるかどうか心配で」
ユナは沙耶を抱きとめる。
優しく、温かなぬくもりが沙耶を包み込む。
「そんな事ないよ。もしもそうなったら、私は沙耶の味方するから」
「それが辛いのよ。ユナが酷い目に遭うのが心配で――」
「いいんだよ、沙耶」
ユナは抱きしめる力を少しばかり強くする。
沙耶は「あっ」と声を漏らす。
「辛い時も悲しい時も一緒だから」
「私も、ユナが辛い時、悲しい時も一緒にいたい」
「お互い支え合えるような、ステキな関係でいたいね」
「うん――」
そうして二人は暫く抱きしめ合った。
人によってこれは気色悪く見えるかもしれない。
だが二人はそれでもいいと思った。
それが自分達が選択したことなのだから。




